保護
ルティリアさん達を護送していたら、目的地の聖堂院がゴブリンの集団に襲撃されていた。
なので、殲滅した。
途中から、砦の兵士達も出てきて、連携はしなかったが、共同で殲滅した。
なお、最後は砦の兵士達が、とどめを刺した。
包囲ができていたので、一匹残らず殲滅できたが、最後の方は距離が近かったので、こちらが手を引いた形になる。
無傷ではあったが、ツヴァイが門を守りに行ったときに攻撃を受けているので、一応の警戒になる。
メイドも一緒ではあったが、ゴーレムが一直線に門を目指してきたら、そりゃ攻撃をしますよね。
まぁ、仕方がないと思っておく。
ルティリアさん達も、ゴブリンが再集結して、こちらに来ないことが分かったので、殲滅前に外に出てきている。
さて、これからどうしようか……。
ルティリアさん達を送り届け、受け入れてもらえるなら、そのままに帰還になるが、交渉も有るだろう。
正直面倒で、億劫だ。
そういえば、女性しか居ないんだよな……。
となると、あの兵士達も皆女性か。
オシホ様にお任せにしたいが、聖堂院を見ておきたいのだ。
そのために、ここまで来た。
アリストラさんの話では、崖をくり貫いた施設になっているはずだが、木製の防壁で確認できない。
モンスターへの対処で、防壁を建てて守りを固めるのは当然の処置なのだから、予想できたはずだ。
俺の創造力が足りず、先入観もあったんだろう。石窟寺院みたいなのが、先行イメージとしてあったからな。
なんにしても、誰かがルティリアさん達の事を伝えに行かなければならない。
俺は、4mのゴーレムに乗っているので、威圧感がまずい。降りての交渉は、是とも遠慮したい。
まぁ、やれと言われたら、やるしかないが……。
オシホ様がどうするつもりか考えるが、なるようにしかならないな。
突撃した精霊トリオと、その指揮下のゴーレム達が戻ってきた。
ダメージを確認するが、アインのゴーレムに二ヶ所傷があるぐらいで、あとは無傷だ。
結局、オシホ様の判断で、俺とツヴァイが交渉役に選ばれた。
基本的にツヴァイが交渉をして、不測の判断は俺に任された。
ツヴァイが選ばれるのは分かっていた。アインやドライに比べれば、交渉には向いていると思う。
ただ、俺も選ばれるとは思わなかった。一応俺も護衛対象ですよね?
ま、まぁ、信頼してくれてると思おう。
武器は置いていった方が良いか。
俺のゴーレム自体が武器と言えるが、剣と盾を置いていく、という行為に、こちらの意思を汲んでもらえると思う。
こちらの準備が終える頃には、外に出てきていた兵士達も砦へ戻っていた。
砦の周りは、雪でぬかるみ、泥だらけで、矢が刺さり、ゴブリンの魔石が散乱している。
その中を砦へ、ツヴァイと共に向かっている。
心なしか、ツヴァイの機嫌が良さそうに見える。
ゆっくりと砦へ近付き、砦から50mほど離れた場所で止まる。
正面の防壁上に人影が見える。50人以上は居るみたいだ。
砦を観察していると、ツヴァイが俺に話しかけてくる。
「広坪様、お声かけをお願いいたします」
「……わかりました」
何故俺が?とも思わなくもないが、俺のゴーレムの外部スピーカー的な物には音量調節機能がある。
こっそり話すときに便利だからね。
とにかく、砦に呼び掛ける。
「我々は、聖堂院へ向かう途中の女性を五名保護している!彼女達は聖堂院への保護を希望している!ここがアリストラ聖堂院なら、返答が欲しい!」
音量を最大の8割ぐらいで、声をかけた。
「これで良かったですかね?」
「相手方の反応を待ちましょう」
少し待っていると、門が開き、三人が馬に乗って近付いてくる。
何故馬に?逃げる用かな?
三人は10mほど離れたところで止まる。
出てきたのは、話に聞いていた通り、女性のみで、年齢は先頭から30、25、20といったところだろう。
ただ、ルティリアさんの件もある。俺の目では、女性の年齢を見抜くのは不可能に近いだろう。
顔は、先頭の人は凛々しい美人で、武の人って感じだ。次の人は真面目系だ。最後の三人目は、可愛い系なのだが、……なんだか怖い感じがする。
三人の格好は、灰色の外套を着ていて、よくわからないが、白い鎧下に金属の防具と剣を装備している。
先頭の女性は金属部分が多目で、後ろの二人は逆に少な目にな見える。
先頭の女性が、騎乗したままツヴァイに話しかけてくる。
「騎乗したまま失礼する。まずは、助太刀に感謝する。それから、門の守りに来たゴーレムに攻撃をしてしまった事を、代表して謝罪したい。すまなかった」
先頭の女性が、騎乗したまま、頭を軽く下げる。
「いえ、私が一緒に居たとは言え、ゴーレムが突撃してくれば、攻撃してしまうのは仕方がなかったと思っています。こちらも配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
ツヴァイが綺麗なお辞儀をした。
「貴女が門に居たのか!それは、すまなかった。改めて謝罪を」
「私には矢は一本も飛んできませんでしたから、本当に気にしておりません。それで、ここがアリストラ聖堂院でよろしいのでしょうか?」
「感謝する。ここがアリストラ聖堂院で間違いない。それで、そちらが保護している者達に会いたいのだが、大丈夫だろうか?」
「はい、大丈夫です。ご案内します。広坪様」
「分かりました」
ツヴァイに言われ、オシホ様達の所に戻ろうとしたら、慌てて先頭の女性が声をかてくる。
「待って欲しい!その大きいゴーレムは完全自立型のゴーレムなのか?」
ツヴァイが答える。
「いいえ、中に人が乗っています」
「そ、そうか、珍しいゴーレムなのだな。失礼した。案内を頼む」
「はい」
やはり完全自立型ゴーレムは珍しいのだろう。強力な戦力にもなるのだから、確認は当然か。
砦の三人を連れて、オシホ様達の所に戻った。
三人は下馬し、待っていたオシホ様達の前へ進む。
「オシホ様、アリストラ聖堂院の三名をご案内いたしました」
「うむ。ご苦労。アリストラ聖堂院の方々よく来てくれた。ワシが指揮を執っているオシホじゃ。それから、こちらが保護した者達じゃ」
「ルティリア・アストラーデです。よろしくお願いいたします」
「お初にお目にかかる。私はアリストラ聖騎士団第二小隊隊長のミリシア・エーゲルトだ。後ろの二人は私の部下になる。改めて、今回の助太刀感謝する」
「うむ。この者達の護送のついでじゃったから気にすることは無い。それに、今回の襲撃は我々が一因じゃしの」
オシホ様の言葉にミリシアさんの表情が硬くなる。
「それは、どういう意味ですか?」
「なに、今回護送してきた者達が、ブラックベアーに襲われていたところを助けてな、それを助けた時に、ブラックベアーを倒したのじゃが。そのブラックベアーが、北上しようとしていたゴブリンを阻止していた可能性が高くての。つまりじゃ、ワシらがブラックベアーを倒したのが原因で、ゴブリンの北上を許す形になってしまったのじゃ。すまぬな」
今回のゴブリン襲撃について、経緯を話した。
すると、ミリシアさんの硬くなった表情が戻る。
「あの熊を倒したのですか。我々もあの熊には手を焼かされていてのです。来春に援軍と共に撃破する予定てしたが、手間が省けました。それに、その様な事情があったなら、問題はありません。幸いこちらには死者は出ませんでした。むしろ、ブラックベアーの撃破に、ゴブリン掃討の援護は非常に助かりました。それに、ここを目指した者達の保護と護送にも感謝します。ありがとうございました」
ミリシアさんが頭を下げる。
問題になるかとも思ったが、良い人達そうだ。
「それなら、良かった。それで、この者達の受け入れは出来るか?」
「その件ですが、かなり厳しいです。今年は不作のせいか、保護を求める者も多く、食糧が不足気味でして、食事量が制限されています。それでもよろしければ、てすが」
やはり、不作の影響が出てたのか。
「それで、聖堂院には何人ぐらい居るのじゃ?」
「約六百人ほどになります」
「そうか、思ってたより少ないの。まぁ、それなら大丈夫じゃろう。我々が保護したこの者達は、自前ので食糧を買い集めてここまで来ておる」
「それならば、受け入れに問題はありませんが、こちらで保護する以上、食糧は一度回収され、皆に再分配される事になります。それでもよろしいですか?」
「ルティリア、どうじゃ」
オシホ様がルティリアさん達に確認する。
「はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします」
「だ、そうじゃ、それから、我々も食糧をいくらか持ってきておる。多少願い事を聞いてくれたら、提供する用意があるが、どうする?」
「それは、ありがたいですが、多少の願い事によります」
「なに、少し聖堂院を見学させてもらいたいのじゃ、ワシともう一名でじゃ。どうじゃ?」
「もう一名は、女ですか?男ですか?」
「男じゃ」
「一度お会いしたいのですが?」
「うむ。広坪!降りて来るのじゃ!」
オシホ様が、俺に降りる様に呼び掛ける。
ミリシアさんが不思議そうに俺のゴーレムを見ている。
はぁ、見学するなら、降りないといけないよね。少し気が重いが仕方がない。
ゴーレムを座らせ、背中の搭乗口を開き、降りて、ミリシアさん達の前に出る。
ミリシアさん達はゴーレムから人が出てきた事に驚いていた。
とりあえず、自己紹介だ。
「はじめまして、俺は広坪 土倉です。熊を倒したのは、俺です。今回の事は大変申し訳なく思っています」
そう言って頭を下げた。
「いや、ブラックベアーの件はもう良いのです。それより、ゴーレムの中でゴーレムを操っていたのですか?」
「はぁ、まぁ、そうなります。それで、俺は見学できますかね?」
「恐らく、大丈夫だと思いますが、一応確認をとります。他に何かありますか?」
ミリシアさんが、オシホ様に確認をする。
「無い」
「分かりました。エリス!団長に状況報告!それと、食糧提供と見学の件を聞いてこい!」
「わかりました!」
ミリシアさんは、一番若い部下、エリスさんを伝令に走らせた。
「戻るまで少し時間があるので、食糧の一部を確認をしたいのですが、大丈夫ですか?」
「うむ。それがよかろう。ついてくるのじゃ」
それから、物資の確認をしていた。
食糧の多さに喜びをみせ、その他の物資にも喜んでもらえたみたいだ。特に香料入りの液体石鹸は喜んでくれた。
さらに、魔石でも使えるようにした魔具も見せたが、クリーンや、調理用熱源などの魔具には驚いていた。
確認をしていると、ドライが気付いた。
「オシホ様」
「ん?あぁ、伝令が戻ってきたみたいじゃの」
砦の方を見ると、伝令に出た人がこちらに駆けてくる。
俺達の近くまで来て、下馬してミリシアさんに報告する。
「受け入れも、見学も問題なし!馬車を砦内へ案内せよとの事です」
「分かった、ご苦労だった。皆様聞いての通りです。砦内へご案内します」
「承知したのじゃ。ワシと広坪、ルティリア達のみで行く。他は待機じゃ。広坪はこの馬車の御者席に乗るのじゃぞ」
「了解です」
無事に受け入れが決まったので、手早く準備する。
ルティリアさん達も馬車に乗り、確認していた荷物も馬車へ積みなおされ、俺も簡易シェルターを回収して馬車の御者席へと座る。
オシホ様も、もう一台の馬車の御者席に座り、騎乗した三人を先頭に、オシホ様、ルティリアさん達、俺の順で馬車を進める。
進めると言っても、オシホ様が作業用ゴーレムを操作して移動してるので、ただ座っているだけになる。
砦の近くまで来た。
砦の防壁は、丸太を縦に刺した物が並んでいて、隙間が無いようになっている。
高さは6mといったところだろう。
門は木製の内開きになっていて、傷だらけだが、ゴブリン程度には壊される様には見えない頑丈そうな門だ。
俺達が近付くと、門が開く。
中には案内役の三人と似たような格好の人達と、革鎧を着た軽装の人達が見え、その後ろには、高さ3mほどの壁と門があり、門を突破されても、ある程度は対応できる様になっているみたいだ。
そのまま、門をくぐり、砦内へ入る。
内部では、一際立派な鎧を着た人に出迎えられた。
騎士団の団長さんだった。
これで、一応目標達成になる。
あとは、多少の交渉と見学をして帰還だ。




