情報収集と護送準備
俺は、欠伸を噛み殺しながら、食堂で夕食を食べている。
休むように言われ、部屋に戻ったが、暇なので、趣味である魔具を作っていた。
そんなこんなで、趣味に没頭していたら、いつの間にか寝ていて、先程たたき起こされた。
休めと言われたのに、魔具を作っていたから、軽く説教もされた。
夕食には熊が出た。
俺が倒した熊を解体して、焼肉になった。
熊の肉をを初めて食べたが、ほのかに甘くて美味しかった。
ルティリアさん達も喜んでる様に見えた。
そして、俺から没収されたプリンがルティリアさん達に提供され、非常に喜ばれた。
おかわりも提供され、俺のプリンが今週分プラスアルファーが消費された!
俺は耐えた。涙は零れなかったはずだ。
夕食後にルティリアさん達に話を聞いた。
義弟により、領主へ売られそうになり、女性保護をしていて、ルティリアさんが住んでいた国とは別の国の支配下にある、聖堂院に向かっていたそうだ。
ルティリアさんが住んでいたのは、トールデン王国と呼ばれる国で、彼女達が居たのはトールデン王国の最も東にある地域になり、魔境と隣接する地域だったそうだ。
魔境と隣接と言っても、前線からはかなり離れていたみたいだ。
トールデン王国は領主制を採用していて、ルティリアさん達が居た地域は子爵が領主をしており、かなり好き勝手にしていたみたいだ。
爵位は子爵だが、先代が公爵の息子で、その公爵は、王国でも二番目に大きな派閥の党首なんだそうだ。
両方が代替わりをしているが、二人は伯父と甥の関係になる。
なんと言うか、悪いイメージの貴族って感じだ。
それが、一番近い人が支配する地域だって言うんだから、困ったものだ。
まぁ、行かないと思うから、大した問題にはならないと思いたい。
さらに、ルティリアさん達が目指していた場所だが、アリストラ聖堂院と呼ばれていて、由来は、恐らく、アリストラさんそのものだろう。これは、偶然で押し通すしかない。
聖堂院は、トールデン王国と別の国の支配下にあると言ったが、国同士の話し合いで分割されてるだけで、コアエリアを支配していると言う意味では無い。
そして、分割したのは、バレミア聖堂教国という国らしい。
バレミア聖堂教国は、トールデン王国の北西に位置し、現子爵領攻略するにあたり、資財、人員の面で多大な支援があったそうだ。
実質的に半分近くを援助し、派遣した戦力は最精鋭で、攻略の主力を勤めたそうだ。だが、要求したのは、アリストラ聖堂院のみだったそうだ。
それ故に、聖堂院の独立性は絶対なんだそうだ。
俺はここまでの話を聞いて、非常に不安になった。
ヤバイ領主に、宗教勢力、そして、人の協定による分割地。
悪い予感がする。いや、俺がこれらの事にあまり、良い印象を持ってないだけか……。
宗教勢力は個人的に好きになれないだけだが、話を聞く限り、まともそうに聞こえる。だが、聖地奪還のためにかなりの力を使っていたみたいだし、下手なことになると、バレミア聖堂教会の全てが突っ込んで来そうだ。
狂信的な勢力じゃない事を祈ろう。
……何に祈れば良いんだ?
バレミア聖堂教国は、名前の通り、バレミア神を信仰した国だ。
バレミア神は女神で、慈悲と守護を司り、守護は特に女性の事を指す。
アリストラさんの話ではとても良い国との事だが、正直宗教国とはお近づきになりたくないなぁ……。
あぁ、ルティリアさん達を送る先が宗教国の支部だった。
狂信的でも、腐敗してるとかじゃないと良いけど、一定以上は居そうだよね。まぁ、気を付けよう。
……アリストラさんの事は口止めしとこう。
幸いアリストラさんは遠征メンバーには含まれていない。
暗号化とか、コードネーム的なのを採用しても良いかも?
まぁ、ルティリアさんもバレミア聖堂教国を直接知ってる訳では無いので、飛び地ではあるが、聖堂院を見て確かめよう。
何が分かるか、分からないが……。
トールデン王国、魔境に接する地域に女好きで、黒い噂のある男を置く国。
ヤバイな。それだけ見ると、王国内が腐敗してる気がするよ。派閥争いとか凄いのたろう。
それよりも、子爵だ。献上予定の女が逃げ出し、自分の領地の端に居る他国の勢力下に行かれたと知った場合だが、軍隊を派遣したり……流石にそんな馬鹿ではないと思いたい。
だか、日本に居たとき、お隣で、国内にある他国の大使館が襲撃されたのに、大変でしたね。なんて、言っちゃう国もある。これを聞いたときは、歴史って繰り返すんだなぁと改めて思った。
公爵の息子の息子。
駄目かも知れない。
対人戦を真面目に考慮しよう。
俺が話を聞いて、急に黙り、反応しなくなったので、皆が注目していた。
ルティリアさん達は何かやってしまったのかと、目に怯えが見えた。
俺は、慌てて、考え事をしていたと説明した。
それからは、我々や施設で感じだ事を聞いた。
凄いと思った事、劣っている事、不思議に思った事等を聞いた。
千年の時間が流れているんだ。
技術格差があってもおかしくない。
それに、ここは千年前と大して変わってない。つまり、方舟的な役割を果たしている可能性がある。
話を聞いた結果、それなりに違うことがわかった。
夕食前にお風呂に入ったそうなのだが、液体石鹸が凄かったさしく、そして、何より、花の香りがしてのが素晴らしいと、非常に熱く語られた。
さらに、クリーンの魔具による乾燥も非常に喜ばれた。
液体石鹸についてはかなりの在庫があるので、追加物資に入れよう。
女性のみの場所に行くのだから、喜ばれるだろう。
それから、足りなそうな生活物資を聞き、渡せる物については、渡すことにした。
次はゴーレムだった。俺の搭乗ゴーレムを初め、遠回しにだが、ゴーレムの性能と数がおかしいと言われた。
性能は作業用ゴーレムを見て言われた。あんなに細かい作業をできるなんて凄いらしい。
そして、一度にあれほどの数のゴーレムが起動しているなんて、聞いたことが無いと言われた。
戦闘用ゴーレムの戦闘は見られてないから、比べようが無いのが残念だが、作業用でかなりの差があることから、ゴーレム単独での技術力に差があると思われる。
数もそれほど多くないと言われた。
……ただ、これは、ルティリアさん達の認識のみなので、実際はどうか分からない。
嘘をついてるとは思わないが、辺境の一般人認識だ。国全体としたらかなり違うかも知れない。
調子に乗りすぎない様に注意が必要だ。
ついでに、魔法について聞いた。
アリストラさんが知らない魔法もあり、魔法については、外の方が進んでいるみたいた。
ただ、土魔法については、精霊様方から学んでいるので、そこは負けていないつもりだ。
ルティリアさんが水魔法を得意にしていたので、教えてもった。特に治癒系の魔法について詳しく聞いた。
次にポーションの事を言われた。
ポーションは基本的に高価な物で、一般的に使われているのは、下級ポーションぐらいだそうだ。中級もかなり貴重で、上級ともなると、貴族でも一握りの人間しか使えない物だそうだ。
中級や上級の製法はある国が独占していて、数が少ないらしい。
そして、俺が渡して、ルティリアさん達が使った中級ポーションだが、かなり効能が高かったとの事だ。
この話から、千年の時と、大氾濫による影響の大きさが伺える。
技術的欠損、どこかで技術が途絶えたのか?
独占技術にちょっかいを出すと大変な事になりそうだが、人命に関わるし、悩ましい所だ。
他には、魔具の数が異常に多いと言われたが、これは、まぁ、仕方がない。
あと、この施設自体がおかしいととも言われたが、これも仕方がない。
アリストラさんが他にもいくつか聞いていたが、ある程度分かったので、情報収集は終わりにした。
ルティリアさん達に休んでもらう前に、馬車の修理が終わっていたのて、確認してもらってから、休んでもらった。
それから、再び研究所のメンバーのみで、ルティリアさんから聞いた話についての話し合いが行われた。
ゴーレムについてだが、辺境の一般人の認識なので、鵜呑みにし過ぎない事で一致した。
ただ、辺境には、そんなにゴーレムがいない事が分かっただけ良かっただろう。
それから、アリストラさんや精霊様方が、ゴーレムであることにルティリアさん達が気付いていないのでは無いかという意見が出た。
え?まさか……。と思ったのだが、確かに人として普通に接していた。
俺も触ることで実感したのだから、十分にあり得るのかと思った。
まぁ、特に問題には無いので、そのままにしておくことにした。
魔法については流石に時間と共に進歩が見られた。
ただ、驚いた事に、ルティリアさん達は皆魔法使い以上の魔力の持ち主達で、ルティリアさんは大魔法使い以上だそうだ。
水魔法について学べたのは運が良かった。
アリストラさんは火が得意で、水については詳しくなく、精霊様方は土のみだ。
ポーションは多目に渡すことが決まった。
ポーションの作成方法は、問題が無ければ、バレミア聖堂教国に流す事が決まったが、まずは様子見からとなった。
その他の液体石鹸などの生活物資も、生産可能な物については多目に渡す事を提案したが、アリストラさんに反対された。
ある程度の渡すのは良いが、一度に渡しすぎるのは良くないと言われ、さらに、冬の間に訓練を兼ねて、物資を運ぶ事を提案された。
俺は、そちらの方が色々対応しやすいかもと思い、アリストラさんの提案を採用する事にした。
ただ、液体石鹸や食料は最初っから多目に持っていく事にした。
魔具については、面白い事が分かった。
恐らくだが、魔力の消費量が多いと思われるらしい。
魔石の消費量が確実に多いとの事だ。
これは、単純に精度の問題の可能性が高いそうだ。
なので、魔具もいくつか提供する事にしたのだが、ほとんどが魔核仕様なので、今回大量に手に入った魔石を使い、簡単な物を渡すことにした。
もちろん、クリーンの魔具も含まれる。
最後に地形についてなのだが、面白い事が分かった。
地域の境目が変化していると言うのだ。
アリストラ聖堂院は、元は物資集積所だったものだ。
その物資集積所は、地域の境目ではなく、もっと現子爵領の内側にあったらしい。
つまり、俺達の施設の前にある地域が、現子爵側に浸食しているとの事だ。
そんなことは千年前にも無く、ルティリアさん達も認識していないとの事だった。
理由が不明なので、不安だったが、大精霊様が知っていた。
単に、地域ごとに拡大していて、魔境が強いので、押し負けてるだけだそうだ。
ただ、その変化は極めて小さく、ほとんど分からないそうだ。
なので、特に問題にはならなかった。
そして、周辺の状況だが、もう少し詳報が欲しいが、あまりよろしく無さそうと言うことで一致したので、俺の意見が通り、対人戦の準備が優先的に決まった。
ただ、周辺の環境を鑑みるに、雪解けしてからになるだろうから、春までにある程度の開発を完了する運びとなった。
認識のすり合わせは終わったので、解散となった。
魔具の製作も加わったので、少し忙しくなった。
俺の作った魔具もいくつか提供されることになり、いくつか運んだ。
そして、今度こそ休むように、部屋に戻され、魔具の製作道具も一時没収された。
こうなっては仕方がないので、眠る事にした。
情報は聞けたが、他の人からも情報が欲しい。
聖堂院の人達にも話を聞ければ良いのだが……。
まぁ、行ってみるまで分からないか……。
明日は全力を尽くそう。
そう思いながら、眠った。
翌朝、目が覚め、報告を受けた。
護送の順暇が終わったそうだ。
俺の搭乗型ゴーレムの修理も完了したので、朝食後に起動テストをする事になった。
朝食を終え、ルティリアさん達の荷物をゴーレムに運ばせながら、ルティリアさん達と共に整備場に来た。
ルティリアさんの馬車は修理され、整備場に置いてあった。
その後ろには、さらに幌馬車が二台置いてあり、こちらは追加物資が積載されている。
ルティリアさん達は馬車の確認と荷物の積載をしに馬車へ、俺はゴーレムのチェックをしにそれぞれ分かれた。
搭乗型ゴーレムに異常は無く、以前と同じ様に使える。
盾と剣も準備され、非常用のマジックバックに、シェルター魔具も準備されていた。
ルティリアさん達も馬車の確認を終えて、荷物を積み終えていた。
その他の準備もアリストラさん達が終わらせてくれている。
全員で集まって最終確認をする事になった。
アリストラさんが護送の陣容を説明する。
護送の対象は、ルティリアさん達が乗る馬車と追加物資が載せてある馬車二台の合計三台になる。
馬車を曳く馬が居ないので、作業用ゴーレムで曳くことになっている。
護衛戦力は、俺のゴーレム、オシホ様のゴーレム、精霊トリオのゴーレムの三体、戦闘用ゴーレムが八体の合計十三体になる。
そらに、馬車を曳く用の作業用ゴーレムが六体が追加さる。
当初は、現在使える魔核で、戦闘用ゴーレムを12時間可動させる様にした場合、二十体分しか用意できないとの事だった。
内訳は……。
俺の搭乗型ゴーレムに一体分。
燃費はかなり良いので、これで二日は使える。半分でも良いのでは?と思ったが、安全対策だそうだ。俺だけでも帰還できる様に……。
オシホ様のゴーレムに三体分。精霊トリオのゴーレムは二体分ずつ。消費が多いからだ。計九体分
戦闘用ゴーレムは一体分ずつ。計八体分
作業用ゴーレムは、他と比べても消費が少ないので、三分の一分ずつ。計二体分
の、合計二十体分になった。
それぞれの装備は……。
俺のゴーレムが、この施設にある一番大きなタワーシールドと大剣のクレイモアだ。
4mクラスになると、これでも少し小さいが、これしか無い。
オシホ様と精霊トリオは、メイド型戦闘用ゴーレムで、メイドゴーレムより少し大きい170cmほどで、オシホ様は剣のみで、精霊トリオは剣と盾に、ロックバレット用の魔具を装備している。
オシホ様が剣のみなのは、消費が大き過ぎるのもあるが、護衛を抜けてきた敵だけを相手にするだけだからだ。
戦闘用ゴーレムは、縦横2mあり、武器は手足のみだ。固さと質量だけで十分な威力がある。
作業用ゴーレムに武装は無く、戦闘力もほとんど無い。
ゴブリン一体と良い勝負かも?
雪上装備をだが、結局足にかんじきの様な物を装備するだけになった。
以上が護衛の戦力になる。
陣形や指揮は……。
全体の指揮はオシホ様が執りつつ、ルティリアさん達を護衛する。
戦闘用ゴーレム二体と馬車を曳く作業用ゴーレム六体もオシホ様の指揮下になる。
馬車は三台だが、ルティリアさん達を先頭に進むことになっている。
精霊トリオは、ドライが前方、アインが左側面、ツヴァイが右側面警戒になる。
そして、それぞれに二体の戦闘用ゴーレムが付く。
俺は一応オシホ様の指揮下に入っている事になっていて、後方警戒の役割になる。
……のだが、実際は俺も護衛の対象になり、後方警戒は側面のアインとツヴァイが兼任する。
以上を確認後に、遠征しないゴーレム達によって、熊と戦闘した平原まで運ばれた。
外は吹雪いていなかったが、地面は雪に覆われていた。
無事に送り届けられると良いのだが……。
多少不安に思いながら、まずは、街道へ向けて出発した。




