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ビストラ市防衛準備

 



 聖堂院 ビストラ市へ向かう街道



「今日はこの村で休みます」


 俺達は、馬の速度に合わせて街道を移動し、ガレストさん達が今日出発した村、昨夜宿泊した村に到着した。

 時間も頃合いなので、今日はヤハナリ村の更に一つ西の村で休むことにした。

 今日ここまで来れば、明日の日没前には街へ到着する事ができるだろう。


 俺達が街道を移動するときは、ガレストさんとガレストさんを護衛する騎馬隊を中心にして、ゴーレムが護衛しながら進んだ。

 俺は、馬車や荷馬車と共に移動し、ガレストさん達の後方を少し離れてついていく形で移動してきた。



 ガレストさん達は、村の家を勝手に使わせてもらうそうなので、俺は自分の簡易シェルターを使って寝床を確保する。

 そして、持ってきていた保温魔具によって温かいままの食事をガレストさん一行にも提供した。

 今は10月中旬に入り、寒くなってきているので、温かい食事は喜ばれた。


 しばらくして、ガレストさんが俺の簡易シェルターにやって来た。


「広坪様、温かい食事、ありがとうございました」


 ガレストさんが食事のお礼を言ってきた。

 簡易シェルターに来たのは、ガレストさんだけでは無く、隊長さんともう一人が護衛として来ていた。

 俺の側はオシホ様が居るだけだ。


「いえ、あまり日持ちはしないので、気にしないで下さい」


「と言う事は、やはり俺達用に用意された物だったのですね。それに、今回の迅速な動き、事前に私達の動きを察知していたか、この事態を想定して準備なさっていて下さったのですね?」


「まぁ、そうですね。ある程度の事態は想定していました。この辺りにオークが集団で出たのは、王国軍が侵攻に失敗した事はまちがいありません。なら、どの程度の敗北か。ジルト市で踏み留まったか、領都まで押し込まれたか。結果はジルト市で踏み留まった様ですね。だから街を放棄せずに防御しようとしている。南は壊滅しているなら、俺達に救援を求めるのは、ビストラ市のみ。条件次第では救援に向かうつもりだったので、迅速に動ける様に準備していたのです」


「条件とはなんだったのですか?我々はあまり良い態度とは言えませんでしたが……」


「我々に敵対しない事、それだけです。我々に敵意を向けてきましたが、殺意は向けなかった。だから協力ました。それに、もう逃げられないのでしょう?」


 俺の言葉にガレストさんを始め、護衛の二人も顔をひきつらせる。


「良くそこまでわかりましたね。私は王国軍の侵攻と、侵攻が順調としかお伝えしていませんてしたのに」


「普通でしょう。領都まで攻め込まれたら逃げる。逃げないのはまだ大丈夫。ジルト市があるから。そして、勝てない数のオークが来てるのに逃げないのは、逃げられないから。西が先に潰されましたかね?」


「その通りです。ビストラ市の南は壊滅し、領都との連絡は不能。そして、西からオークが出現しこちらに向かってきています」


「村人を助ける時にオークとも戦闘しましたが、来たのはオーク2,000とオークリーダーのみ、オークリーダーにしては戦力を持ちすぎです。なので、本隊は少なく見ても20,000以上。とは思っていましたが、西から50,000ですか。多いですね。こうなると、侵入したのは、100,000以上の可能性がありますね。となると、オークは全体で最低でも500,000、下手をすると1,000,000以上か……」


 西からオークが来ているという情報を得て、考えを巡らし、口から考えが漏れる。


「流石にそこまでは無いのでは?どうしてその様な考えになったのですか?」


「え?ああ、そうですね。俺は、オークを人並みの知恵があるものの指揮下にあると考えて居ます」


「魔物が、ですか?」


「そうです。何度か戦いましたが、それなりに知恵があると思います。なので、人を相手にしていると仮定して、この別動隊の行動の理由を考えました。この地域は、東からオークに攻められ、南は既に壊滅しています。後は、北と西のみ。北は領都とビストラ市の間が壊滅し、トドメを刺す部隊が向かってきています。残りの西を潰せば、この地域を封鎖する事が出来て、援軍を待っている王国軍に多大な影響が出ます。かなり良いと思います」


「確かにその通りですが、流石に考えすぎでは?」


 ガレストさんは、俺の話を聞いても、魔物にそんな知恵があるとは思いたくない様だ。


「そうかもしれません。ただ、オークが南か我々の側から襲ったなら、まだそう思わなくも無かったのですが、オークは西から来ているのでしょう?なら、俺は包囲を狙った行動だと考えます」


「かもしれません。ですが、オーク1,000,000は流石に多いのでは?そんなに居ては、王国でも危ないですよ?」


 今度は、オークの総数の話になった。

 俺の漏らした言葉を一つでも否定できれば、全体の信憑性が薄れ、希望的観測が可能になる。


「確かに1,000,000は言い過ぎましたかも知れません。魔境は、最低でも三ヶ所の人が支配する地域に繋がっています。東と南に100,000ずつ配置して、侵攻してきた王国に対応。王国軍を押し返して、ジルト市に押し留めるのに200,000として、こちらにも100,000来ているというなると、500,000程度だと思います」


 500,000という数字に、兵士の二人は顔を暗くする。

 ガレストさんは、何かを真剣に考えて居る。


「まぁ、これも多いかも知れません。東と南に50,000、ジルト市に100,000、こちらに50,000で250,000という可能性もありますから、あまりここで考えても仕方がないでしょう。先ずは、ビストラ市の救援をしてから、ですね」


「そうですね」


 ガレストさんも兵士の二人も、目の前に迫っている危機に集中する事にした様だ。

 俺も下手な事は言わない様に気を付けなければ。



 だが、もし仮に王国軍に200,000、こちらに100,000来ており、王国と同じだけの兵力が東と南にも向かわせていて、コアがある場所にも予備戦力があったら、1,000,000居てももおかしくないとは思う。


 過小に見積もるよりは良いかも知れないが、過大に評価するのもいけないな。

 注意はしておこう。



 その後は、明日の行動予定と、今夜の夜警の話をした。

 夜警はこちらで引き受けると言ったが、兵士達は兵士達で夜警を立てるそうだ。

 まぁ、無理に辞めさせる理由も無いので、好きにしてもらう事になった。

 こちらを警戒しているし、仕方がないだろう。



 明日は、早朝に出発し、日没までに街に到着する予定となった。

 ただ、俺達は街には入らず、街の外で夜営すると伝えた。

 街の外での夜営の件は、多少揉めたが、俺達に引く気がない事が分かると、あっさりと引いてくれた。


 まぁ、俺も街の人間を信用できないので、これも仕方がないと思ってもらおう。





 翌朝、日の出と共に出発し、五つ目の村を通って街へ到着した。

 徒歩で半日間隔で村があったが、街に一番近い村から街までは、倍の一日掛かるほどの距離があった。

 これは、街の側の用地を確保するためのもので、街から一定の距離には村を作ってはならないそうだ。



 日没前には街に到着したので、街道から外れ、夜営しても大丈夫な所を紹介してもらい、夜営地を確保した。

 そして、ガレストさん達と別れた。


 俺達の夜営地は、街の南側になる。

 東側でも良かったが、夜営地として使うなら、そのまま拠点にした方が効率的なので、西からのオークに対応できる様に、簡易的な砦を作る。


 砦は、防壁を直径50m程の円の形にしたもので、東側にのみ出入り口を一つ作ったものだ。


 ゴーレムを全て収容は出来ないので、遠征用のゴーレムと通常の作業用ゴーレムのみ収容し、戦闘用ゴーレムは、半数を防壁沿いに配置し、残りの半数は東側にある出入り口周辺に配置した。

 これは、警戒や警護のためでもある。

 まだ、オークの姿を確認できて居らず、罠の可能性を捨てきれないからだ。

 自分でも、慎重過ぎるとか、信用しなさ過ぎとか、人間不振だとか思わなくも無いが、これくらいはしておいて問題は無いだろう。


 見張り櫓等も作った。

 これは、警戒のため、というよりは警戒をしているアピールのためだ。

 見張り櫓があちこちにあれは、侵入を試みようとはせず、余計な問題の発生を防げる。



 砦の構築は終わり、俺の寝床の簡易シェルターも設置したので、俺は早々に休むことにした。

 馬に合わせてゆっくり走りながら、長時間ゴーレムを操作していたので、とても疲れた。

 ガレストさん達にも、今日は疲れたので、早々に休むと伝えてあるので、今日のライホウシャハ無いだろうから、安心して寝ることにする。





 ビストラ市外 南



 ビストラ市の外で一夜を過ごし、朝が来た。

 今日の昼には、オークが来る予定だ。


 朝食を済ませた俺は、報告を受ける。

 報告は、ドライ達による夜中の偵察結果だ。


「報告じゃが、オーク50,000を西で確認した。他では確認できなかったそうじゃ」


 よかった。これで、罠の可能性はぐんと下がった。

 西だけでは無く、南北を確認してもらったが、西のオーク以外は、敵となる存在は居なかった様だ。


「オークの詳細じゃが、オークは四つの集団に分かれており、10,000匹程の群れが三つあったそうじゃ。前衛なんじゃろう。その後ろに20,000匹程の群れがあり、こちらが本隊じゃな」


 規模は違うが、聖堂院を襲ったオークと同じ編成の様だ。


「ただ、一つ気になる点があったのじゃ。本隊の中にハイオークのみの群れが存在する様じゃな。ドライも気になったらしく、できるだけ詳しく調べたようじゃ。数は5,000、ハイオークリーダーと思われる存在を確認したそうじゃ」


 ハイオークは、オークジェネラルの護衛として何度が戦った事がある。

 ハイオークは、オークに比べて格段に強かった。

 その精鋭のだけの部隊で、ハイオークの指揮個体、ハイオークリーダーか。

 使われ方次第では、厄介な事になりそうだ。


「注意だけはしておきます。それで、周辺地形は分かりましたか?」


「うむ。これが地図になる」


 オシホ様が差し出したのは、机と同じ大きさの紙で、縦1m、横2mの大きさだった。

 俺が寝ている間に作成してもらった物になる。

 朝食の為に、一時的に片付けられていた様だ。


「ここがビストラ市になる」


 オシホ様が示したのは、地図の右の方になる。

 オークが来る西側を広く調査したので、ビストラ市が右に寄ったのだ。


「これが街道じゃな。そして、オークの最終確認位置がここじゃ」


「了解です。この辺りでも作戦行動は可能ですか?」


 俺が指した場所は、森。

 俺達は遠征用のゴーレムを連れてきているが、戦力の主力は魔力の供給が無ければ戦えない。

 なので、魔力供給ラインがあるかの確認だ。


「作戦行動は可能じゃ。既にオークの位置まで設置済みじゃ」


 流石に仕事が早い。

 ここに来るまでも、移動中に魔力供給用の魔具を地下に設置しながら来ただけの事はある。


「でしたら、先制攻撃を仕掛けましょう。数が多いので、いきなりここでの戦闘になれば、街に被害が出かねません」


「そうじゃな。あの防壁ではどのぐらいオークの攻撃に耐えられるか分からぬでな」


 ビストラ市の防壁は、高さが10m程はあり、一見すると現在の聖堂院の防壁と同じくらいはある。

 だが、防御障壁も無く、状態もあまりよろしくない。

 なので、防御力に不安がある。


「被害を少なくする為にも、戦力を削りに行きます。出来ればオークジェネラルかハイオークを倒したい所です」


「まぁ、そうじゃな。ん?門から誰かこちらに向かってくるようじゃ。数は100近く居るな」



 確認をすると、ガレストさんが居た。

 ガレストさん以外は、兵士の方々がほとんどだったが、身形がキレイな人も居るので、この街を治める人達の関係者だろう。


 共に戦うことになるし、挨拶くらいはしておいた方が良いだろう。

 あちらから出向いてきているのだし。




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