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自己紹介


辰巳たつみ君、私と付き合ってください!」


 恋星高校入学初日、しかも最初の自己紹介で初対面の女子から告白を受けるという同校史上初の出来事を経験した俺は完全に混乱していた。


「石川さくらです。特技は――」


 教壇の前ではクラスメート達の自己紹介が着々と進んでいるが、動揺しているせいか全く耳に入ってこない。

 あの公開告白の後、担任の大井先生は生徒達が騒ぎ出して収拾がつかなくなった教室を、


「テメェら、ギャーギャーうるせぇぞ! そんなに私を怒らせたいのか!? あ!?」


 と、ドスの利いた声で一喝して収め、とりあえずこの件は自己紹介の時間が終了するまで後回しということに。

 その後、先生によって適当に選ばれた生徒がランダムな順番で自己紹介を行っている。

 ちなみに、俺は習志野の次に指名されたわけなのだが……正直、動揺していたせいか、名前や趣味などありふれた自己紹介をするので精一杯。噛みまくり、詰まりまくり、焦りまくりで、おそらく俺史上最低の自己紹介だったことだろう。

 だが、幸か不幸か、『出会って3秒での告白事件』のせいでみんな俺の自己紹介なんかそっちのけ。多分俺が噛んだり、詰まったりしていたことなんて誰も覚えてなんていないだろう。

 ていうかあの女、一体何を考えてんだよ!?

 俺は悩みの種である少女、習志野栞の方へと視線を向ける。


「!!」

「!!」


……ばっちり目が合ってしまった。満面の笑みで思いっきりこちらに手を振る習志野。ていうか、何呑気に手なんか振ってんだよ! こっちはお前のせいで――


「あ」


心の中で不満を爆発させていると、彼女の後ろに人影が。多分こちらに手を振るのに夢中になっているからだろう。鬼教師・大井が近づいているのに気づく様子などまるでなく、


「あうっ!!」

「いい加減にしとかねぇと殴るぞ」


 大井による出席簿での攻撃を後頭部に受け、習志野栞は頭を押さえてうずくまった。

 いや、もう殴ってるし! ていうか、先生、いくら軽くでも出席簿の角は止めてやれよ。

 と、思わず悩みの種に同情しかけるが、俺はすぐに気を持ち直した。

 そもそもあいつは何を考えてやがるんだ!?

 入学初日、しかも自己紹介のトップバッターでクラス全員が注目する中での公開告白。正直それだけでも驚きなのに、あいつがやったことはそれを遥かに凌駕している。

 何せここは恋星高校恋愛学科。ついさっき説明があった通り、告白して、フラれたら退学という独自のルールも持つ学校なのだ。それを習志野栞ならしのしおりという少女は、この学校全員が告白に慎重にならざるを得ない『フラれたら退学』というルールを理解した上で、初対面の俺に告白してきたのだ。マジで意味が分からない……。

 まぁ、考えられるとすれば……


①俺に一目惚れして、何も考えずに本気で告白している。

②俺に近づき、首席卒業のために利用しようとしている。

③この学校に入学したものの、説明を聞いたら辞めたくなったので手っ取り早く告白してみた。


……せいぜいこんなところだろう。

①は…まずない。確かに俺はそこそこイケメンで通っているが、一目惚れする程の顔ではない。……自分で言うと悲しくなるな。

②は可能性アリだ。ただ、なぜ俺を選んだかは謎だが……

③も大いに可能性アリだろう。いきなりほぼ卒業不可能なルールを言い渡され、卒業したらしたで好きでもない相手と結婚させられる可能性が高い。辞めたくなるのも当然だ。

 ただ、これも②と同様俺を選んだ理由が謎。

 と、そんなことを考えている間に教壇には最後に自己紹介する生徒が立っていた。


智歩作(ちほさ)中学校出身の市川凛です」


 最後の一人は、後ろの席に座る、俺と同じく大井に好かれた者、もとい大井チルドレンが一翼、市川凛いちかわりんだった。

 その我儘ボディはやはり男子生徒の注目の的。改めて見るとマジでデカイな……。自然と目が吸い寄せられる。なるほど。これが引力という奴か。くそっ! あの二つの膨らみからまったく目が離せ……今、完全に市川と目が合った。

 すみません。つい引力に負けて……。やっぱり人間である以上自然の摂理には敵いません――


「ひっ!」


一人心の中で寂しい言い訳をしていると、市川のツリ目がちな目が一層鋭くなったため、俺は咄嗟に目を反らした。


「私は主席で卒業することにしか興味ありません。他の人がどう思っているか知りませんが、私は敵には一切容赦しませんのでそのつもりで。――以上です」


 強い口調でそう言い残すと、市川はそそくさと教壇を降りて自分の席へと戻っていく。

 が、俺の横で一瞬立ち止まると……再びキッと鋭い目付きでこちらを睨みつけてきた。……俺、完全に敵視されてんじゃん。おっぱい凝視してたのは悪かったけど……なぜに俺だけ!? 他の男も結構見てたよ? これ、不公平じゃね?――と思っていたのだが、


「告白されたくらいで調子に乗らないで。主席で卒業するのはこの私よ」


 どうやら彼女が俺を敵視している理由はおっぱいが原因ではないらしかった。

 なんとなく安堵する俺。だけど、何もしないうちに入学早々学年トップを敵に回すことになってしまったという事実が変わることはなく……。

 一難……去ってないのにまた一難。俺の高校生活はさらに波乱の色を濃くしていった。



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