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男の強さ~戦闘力VS知力 5

「それじゃあ、ルールの確認をするぞ。」


 翌日。あっという間に授業が終わり、既に勝負の時を迎えていた。

 目の前には気合十分といった表情の行徳と、少し離れたところで船橋が余裕たっぷりの表情を浮かべて立っている。

 そして、船橋の隣には我がパートナーの習志野が心配そうな表情で見守っている。


「まず確認だが、事前に伝えた通り、ちゃんと二人だけで来ただろうな?」

「当たり前だろ。『第三者の介入厳禁。もし、第三者からの協力を得たことが分かった時点で即負けとする』なんてルール作られたんじゃ呼びたくても呼べねぇよ。」


 今現在、この裏庭には俺、習志野、行徳、船橋の4人しかいない。

 それも、こいつらが提示してきたルールの一つが原因なのだが……


「あら。別に呼んでも呼ばなくても同じだったんじゃない?どうせ勝敗なんて目に見えてるんだし。」


 俺が嫌味ったらしく答えると、行徳に代わり、船橋が挑発で返してきた。


「確かに。逃げずに来たことだけは認めてやるが、船橋の言うとおり勝敗は目に見えてる。さっさと習志野さんを渡して大人しく自主退学でもしとけよ。」


 自らのパートナーに便乗する形で、行徳も俺を挑発してくるが……


「あなたみたいな乱暴な人とペアを組むくらいなら自主退学した方が100倍マシです!」


 そんな行徳に対し、目を細め、敵意のこもった目で睨みつける習志野。


「い、いや…べ、別に俺は乱暴なわけじゃ……ただ、この学校で生き残るために……」


 そして、自らの好きな女に敵意を向けられてオロオロする行徳……。

 ――なんか、こんな奴に喧嘩で完敗したと思うとむなしさが増すな……。


「お、おい!氷室!!てめぇ、自分が俺に勝てねぇからって習志野さんのこと利用して報復してんじゃねぇぞ!!」


 ――八つ当たりもいいところである……

 チラリと習志野に目を向けると、ジト目で行徳を睨んでいた……。

 こんなに好戦的な習志野もなかなかお目にはかかれない。


「ふ、フン、まぁいい。こ、この勝負が終わるころには習志野さんも俺の強さに魅了されているだろうからな。――とりあえずルール説明の続きだ。」


 習志野の決して有効的とは思えない視線に動揺し、少し引きつった表情で話しを勝負のルールに戻す。


 行徳から告げられたルール内容は次の通りだ。


①勝負は行徳と俺の喧嘩タイマン勝負。

②相手を戦闘不能にする、または相手にギブアップと言わせた方の勝利。

③パートナーはアドバイス等を行い、自分のペアをサポートすることはできるが、喧嘩に直接介入することは禁止。(違反した場合は即敗北。)

④第三者の介入厳禁。もし、第三者からの協力を得たことが分かった時点で即負けとする


「このルールで問題ないな?」


 一通り説明を終えた行徳は、形式ばかりではあるが一応俺にルールの可否を確認してくる。


「ああ。問題ないぞ。」


 俺はルールをもう一度確認し、すぐに了承した。


 いろいろと付帯ルールはついているが、基本的にはただの喧嘩だ。普通に考えればこの戦闘力だけは以上に高い目の前の男が勝つだろう。

 だが、この勝負だけは負けたくない。

 ――まぁ、まともにやってたら価値目はない。ここはやはり、付帯ルールを上手く活用するしかなさそうだ。


 そう思い、三度ルールの内容が書かれた用紙に目を通す。

 ――っていうか、いくら勝負内容を決めていいって言ったからって、こいつらホントに容赦なさ過ぎだろ……。こりゃ、考えたのはこの脳筋じゃないな……。


 そんなことを考えながら、この手加減なしのルールを考えたと思われる女子生徒に対し、舌打ち交じりに恨みのたっぷり詰まった視線を向ける。

が、視線に気付いた船橋は嫌味たっぷりの笑みを返すだけ。


 …なんてイラつく奴だ!俺の中の『世界で二人きりになっても絶対に友達になりたくない奴ランキング』で第2位にランクインされるレベルだ!!(勿論、第1位は今は不在の葛西寛人である。)……まぁ、そんなこと言ってても仕方ない。とりあえずできることをやるしかなさそうだ。俺の場合、ここで少しでも勝率上げとかねぇと……。


「おい、ちょっといいか?」

「なんだ?今さら勝負内容変更してくださいってか?」


 行徳の挑発的な口調に若干イラっとしたが今はこいつに構ってる暇はない。


「別に。ただ、ちょっと確認しておきたいことがあるだけだ。」

「何かしら?どんなことでも聞いてくれていいわよ。後でごねられても困るしね。」


 やはりルールのこととなると、行徳を差し置いて船橋が口を挟んできたか…。


「まずギブアップについてだが、これはパートナーが代わりに宣言してもいいのか?」

「一体何を企んでいるのかしら?戦闘不能にした時点で勝敗が決まる以上、そんなこと確認する必要ないと思うんだけど?」

「別に何も考えてねぇよ。ただ、こっちのパートナーは心配症でな。もしパートナーのギブアップ宣言が有効なら先に忠告しとかないといけないと思っただけだよ。」

「なるほどね。まぁ、どっちでもいいけど…せっかくペアで参加しているわけだしパートナーのギブアップも『有効』にしておきましょう。」

「了解。」


 とりあえず、この件については後で習志野と打ち合わせしとかくとして……


「もう一つ。フィールドの範囲はどこまでだ?こちらとしては校舎全域くらい使わしてほしいんだが。」

「ええ。別にいいわよ。」


 船橋の返事に俺は心の中でガッツポーズを作るが……


「ただ、条件付きでね。――ルール④は覚えてるかしら?」

「ああ。第三者の介入厳禁ってやつだろ。」

「ええ。でもフィールドを校舎全域にすると助けを求めなくても偶然遭遇した第三者が勝手に助けに入ってくる可能性もあるでしょ?――もし、そうなった時は無条件であなた達の負けでいいなら校舎全域をフィールドにしてもいいわよ。」


 船橋は不敵に笑いながら返答する。

 さすがにこいつもクラストップのペアなだけあるな……。

 恐らく船橋は俺が『偶然を装って助太刀してもらう』っていう策を見抜いている……。

 しかも、見抜くだけじゃなく俺達の策を逆に利用できるような条件を提示してきやがった…。

 もし、俺がこの条件を飲めば、こいつは俺が考えていたことをそのまま使ってくるだろう。

『誰かがこの勝負に介入する』という状況に陥った時点で俺達の負けが決定するのだ。

 つまり、俺達にとってこの条件を飲んでまでフィールドを広げることは自分達の首を絞めることと同義になってしまう…。


「いや、それなら別に全校舎をフィールドにしてもらわなくていいよ。」

「なるほど。さすがにこんなことで自滅するほどバカじゃないみたいね。――じゃあ、フィールドはこの裏庭全部ってことでいいかしら?もちろん、万が一見つかっても介入すれば無条件であなた達の負けって条件はなしよ。」


 船橋は教室二つ分くらいのこの裏庭を見渡しながら確認してきた。


「ああ、それなら別にいいぜ。」


 あわよくばこのルール確認の中で有利な条件が引き出せれば良かったんだが……さすがにそこまで甘くはないか……。

 だが、あと一つ…


「最後にもう一つ。この勝負にはお互いのペアの全生徒ポイントがかかってるんだよな?」

「ええ、そうよ。」

「なんだ?今さらビビってんのか?」


 行徳が挑発混じりに口を挟んでくるが、ここはスル―だ。


「その時支払われるポイントは、俺が勝った場合は船橋と行徳の保有している全ポイントってことでいいんだよな?」

「ええ。逆に私達が勝った場合あなたと習志野さんの持っている全ポイントってことになるわ。ちなみに勝負が終わった時に例えペアを解消していても無駄よ。該当者の個人ポイントは全部徴収だから。」

「分かってるよ。」


 できることなら今船橋が口走った方法で逃れたかったが、そんなに甘くないことは既に身にしみている。

 だが……


「とりあえず、俺からの確認事項は以上だ。習志野は何か確認しておくことあるか?」


 船橋のすぐ隣に立っている習志野に確認すると


「い、いえ…私は別に……。」


 習志野は俯いたまま、何か思いつめた様子で口ごもる。

 先程まで行徳を責め立てていた時とは明らかに様子が違う。

 負けた時のことを想像してしまっているのか…それとも俺の身を案じて不安になっているのか……。いや、違う……

――恐らくここまでのやり取りと今朝俺が話したことが原因だろうな……。まぁ、時間があんまり取れなくて俺の説明が足りなかったのが原因だと思うんだが……


「あら、大事な勝負を前にパートナーがこんな調子で、あなた達大丈夫なの?」


 船橋がこれみよがしに挑発し、


「てめぇ…習志野さんに心配かけやがって!!やっぱり習志野さんには俺が必要みたいだな。」


 行徳の方は俺に怒りを向けつつ、相変わらずおめでたい思考回路を披露していた。


「習志野!とりあえず今朝のことは後で説明する!!だから、とりあえず今はこの勝負に集中しろ!!」


 俺は未だ俯いている習志野に声をかけるが……


「は、はい……」


 その返事には全く元気がない……。


「ふふ、何ならこの子が元気になるまで、少しくらいなら待っててあげましょうか?」

「おいおい、あんまり他人のことばっかり気にしてると足元すくわれるぞ?――まぁ、無期限で待っててくれるならお言葉に甘えさせてもらうんだが。」


 船橋の挑発に余裕の表情でさらに挑発で返す。

 しかし、心の中では習志野に対する不安を排除することはできていなかった…。なぜなら…

 ――おいおい、頼むぜ…。この勝負の切り札はお前なんだぞ、習志野!


「おい、もういいだろ?さっさとはじめようぜ。」

「そうね。それじゃあ準備はいいかしら?」


 しびれを切らした行徳の言葉を受け、船橋が俺に最後の確認を取ってくる。

 習志野の方に一瞬目を向け、そして、確認してきた船橋の方を鋭く睨みつける。


「ああ、いいぜ。」


 ――まぁ、あとは出たとこ勝負。俺はあいつを信じて、やるべきことをやるだけだ。

 俺は目の前の敵・行徳拳をまっすぐ見据え、静かに戦闘態勢を取る。


「それじゃあ、行徳VS氷室の喧嘩タイマン勝負、開始!!」



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