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男の強さ~戦闘力VS知力 2

「じゃあ、また明日。」


 次々とクラスメート達が下校していく。

 行徳達が教室を出て行ってから少しして、クラスメイト達はすっかりいつも通り落ち着きを取り戻し、一人二人と下校していき、教室に残る者はどんどん少なくなっていく。

 気付けば、教室に残るのは俺を含めて数人にまでなっていた。


「どうするんだい?行徳君達のこと?」


 ふと、残っていた生徒の一人、葛西寛人が俺に問いかけてくる。


「あ?そんなの放置に決まってんだろ?」


 俺は自分の席に座り、肩肘着きながらその問いをあしらう。


「は!?あなた何言ってんのよ!?あなた学年主席を目指してんでしょ!?それなら今がチャンスじゃない!?だって、行徳は今――」

「そんなのは分かってるよ。」


 捲し立ててくる市川の意見を遮る。

 葛西や市川の言いたいことは分かってる。

 行徳の狙いが“ポイント”ではなく、習志野である以上、今勝負を避けられたところでいずれ勝負せざるを得ない時が来るに違いない。

 そして、今現在、俺達はかなり有利な立場にあるのだ。

 向こうから勝負を仕掛けてきているおかげで、その勝負に乗ればこちらが勝負内容やルールを優先的に決定することができる。

 その上、先程の習志野に対する行徳の告白により、行徳のポイントは半減しているのだ。

 どう考えても、どうせ勝負するならこの機会を逃す手などない。

 しかし……


「あいつらだって、クラストップのペアだ。後先考えずにこの状況を作ったとは考えづらい。」


 行徳とそのパートナーの女……。最大の武器は行徳の腕力なんだろうが、それだけでこの学園の中のクラストップになれるとは思えない。


「俺達が有利な立場にいるのは重々承知してる。だが、この状況自体があいつらの罠だっていう可能性も十分ある。今は放置が無難だろう。」


 別に無理してリスクを犯す必要なんてない。それに、放っておけば誰かがあいつらを退学に追い込んでくれるかもしれんしな。


「え~、つまんないなぁ~」


 俺の考えを聞いた葛西が駄々をこねるように拗ねる。


「別にお前らを楽しませるためにやってんじゃねぇよ。」

「ふーん。でも、栞ちゃんはそれでいいの?」


 不意に葛西がもう一人の当事者に話しを振る。


「えっ?わ、私ですか?」


 いきなり話しを振られ、あたふたする習志野。


「おいおい、何を他人ごとみたいに言ってるんだい?どっちかと言うと、今回は君が一番の当事者だと思うんだけど。」

「そうよ!あの行徳って奴だって、目的はあなだって言ってるんだし!!――まぁ、私にとってはあなたが行徳とくっついてくれた方が嬉しいんだけど。」


 市川は最後に小さく呟き、俺に視線を向けて微かに頬を赤らめている。


「いやぁ、モテる男はつらいねぇ。」


 そんな市川を見て葛西が俺を冷やかしてくる。


「誰がモテる男だ。」

「またまたぁ、分かってるくせに~。」


 葛西が肘で『このこの~』と言いながら小突いてくる。……正直マジでウザい。

 別に俺は鈍感なわけじゃない。

 このクラスの女子の数人からペアになりたいと好意をいだかれていることは知っている。

 だが、勘違いしてはいけないのは、その好意はあくまで“卒業するためのパートナーとして”なのである。

 つまり、利益目的ってわけで、俺が“恋愛対象”としてモテているわけではないのだ。

 ――まぁ、この学校にいる以上、それが普通だしな。俺自身もペアを組んでる一番の理由は“主席で卒業するため”だしな。

そして、再度、市川相手に頬を膨らまして睨みを利かせる(全く怖さがない…。)現ペアの習志野を見やる。

 ――まぁ、こいつみたいな変わり者もいるみたいだが…。

 こいつはこの学校では珍しく…その…俺のことが“異性”として好きらしい……。

 ……まぁ、正直悪い気はしない…。

 だが…俺はこいつに恋愛感情はない。

 だから、もし、この先こいつとペアでいることで自分の身が危なければ、俺はこいつを見捨てるのだろう。

 自己中で人間不信、他人のことより自分のことを第一に考え、自分を守るためなら誰でも簡単に切り捨てる……。

 俺はそんな人間だ。

 ――少なくとも、この時の俺は、自分を評していた。


「とにかく、今は放置だ。習志野もそれでいいか?」


 大分脱線した話題を、俺は強引に引き戻し、かつ終息に向かわせる。


「は、はい。たっくんがそれでいいなら、私はそれで問題ありません!……。」


 またもや、いきなり話しを振られた習志野は慌てて答える。


「どうした、習志野?」

「い、いえ!何でもないですよ!?」


 一瞬、習志野が複雑そうな表情を浮かべたようにも見えたが……気のせいだろうか……。


「まぁ、本人達がそれでいいなら、部外者の僕達がとやかく言うことじゃないしね。」

「ま、それもそうね。」

「でも、面白そうなことをやる時は絶対知らせてよね。――それじゃあ、僕達もそろそろ帰ろうか、市川さん?」

「ちょっと、何どさくさに紛れて一緒に帰る感じにしてんのよ。」

「やれやれ、ツレナイなぁ…。仕方い。僕は寂しく一人で帰ることにするよ。」


 そんなペア同士のやり取りを終えて、葛西は帰宅するため立ち上がる。


「そうそう、辰巳君。もし、面白くなりそうな時は僕にも教えておくれよ?――まぁ、あまりにも退屈だと、僕が自分で面白くしちゃうかもしれないけどね。」


 葛西は教室のドアの直前で立ち止まると、振り返り、俺に告げる。何を考えているか分からない不気味な笑顔を湛えながら……。


「はいはい。いいからさっさと帰れよ。」

「全く、相変わらずツレナイなぁ。」


 俺はいつも通り、葛西を軽くあしらいながらも警戒心を抱きながら彼の背中を見送った。


 ――相変わらず不気味な奴だ。敵なのか味方なのか分からん……いや、多分敵なんだろうが……。

 心の中で苦笑を浮かべながら、そんなことを考えていた。


 ――でも、まぁ、行徳の件はこのまま嵐が過ぎ去るのを待てば問題ないだろ。あいつらが自分達の得意分野で勝負するつもりでいる以上、俺達を挑発し続けることくらいしか出来ないわけだしな。オール無視で問題ないはずだ。


 ……この時の俺は気付いていなかった……。自分が間違った選択肢を選んでいることに……。






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