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氷室・習志野組VS東海・浮島組

 放課後。廊下から下校していく他クラスの生徒達の話声が聞こえる中、教室にはほとんどのクラスメート達が揃っており、少しざわつきながらも静かな緊張感に包まれていた。


「やあ、よく負けるって分かっててこれたね。」


 そして、そんなクラスメート達の輪の中心で、この事態の元凶とも言える男――東海誠一郎が分かりやすく俺と習志野を挑発してくる。


「そりゃあ、来るさ。ここに来るだけで簡単に生徒ポイントが稼げるっっていうボーナスゲームだぜ?参加しない奴なんていねぇだろ。」


 そんな分かりやすい挑発に、こちらも分かりやすく挑発で返す。


「……相変わらず口だけは達者な奴だ。」

「そりゃどうも。」


 東海は目を鋭くさせて俺を睨みつけてくる。

 しかし、ふと俺の隣に視線を移すと再び余裕を取り戻したらしい。


「君のペアの方はやっぱり素直だね。君もいつまでも強がってないで彼女みたいに素直になりなよ。」


 チラッと隣にいる習志野の方に目を向けると、不安な顔で黙って俯いていた。


「……たっくん…。」


 俺の視線に気付き、習志野は不安な顔をしたままこちらを見上げる。

 習志野が不安な顔をしているのは、恐らく自分のテストの点数が思っていたよりも低かったから、だけじゃない。


「やっぱり、俺の言った作戦じゃ不安か?」

「いえ…そういうことではなくて…」


 俺の言葉に習志野が目を反らす。

 俺はここに来る直前に、習志野に今回の作戦を伝えたばっかりだ。

 そして、その作戦は一か八かのギャンブル性をかなり含んでおり、勝率は五分五分だろう。

 退学がかかった重要な勝負で、そんな作戦を聞かされれば不安にもなるだろう。


「別に無理して不安を押しこめなくてもいい。お前は自然体でいろ。――すぐに俺がお前を安心させてやる。俺が負けるわけねぇだろ?」


 俺は自信に満ちた表情で習志野に言い聞かせる。

 すると、習志野も…


「――すみません。私、緊張のあまり初心を忘れていたみたいです。――私、どんなことがあっても、最後までたっくんを信じます!!」


 不安の気持ちをぐっと堪え、覚悟を決めたように力強く頷いた。


「…フン、まぁいい。どうせ最後に勝つのは僕達だからね。――さっさと始めるよ。」


 元気を取り戻した習志野を見て、面白くなさそうな顔になる東海。

 そして、そんな彼を、隣で見つめる浮島恵。その表情は無表情ながら、なんとなく心配しているように見えた。


「氷室君に習志野さん。ルールは覚えてるよね?」


 東海は俺達に確認をしつつ、念のため再度ルールを説明し始めた。


~中間テスト勝負ルール~

①テスト返却後、各ペア5教科×二人分、10枚のテストの中から好きなテストを5枚選択する。※基本的に誰のどのテストを選択してもいいが、氷室・習志野組は氷室のテストを最大2枚までしか選択できないものとする。

②選んだテストは相手ペアには見せず自分達の手札とする。

③互いに自分達の手札から一枚ずつ好きなテストを選択し点数を争う。

④点数が高かった方の勝利。

⑤③~④を最大5回繰り返し、先に3勝した方の勝ちとする。


「一応、公平を期すために、審判は他の誰かに頼みたいんだけど…。」


 ルールの確認を終えた東海は、そう言って周りにいる生徒達を見渡す。

すると…


「そういうことなら、僕が審判をやってあげるよ。」

「ちょっと!そういうことなら、私だって…!」


 人だかりの後の方から聞きなれた男女の声が聞こえてきた。


「…どういう風の吹きまわしだ、葛西…それに市川?」


 俺はその声の主―――葛西と市川に警戒心を強めながら問いかける。

 ――正直、こいつらの相手をしながらじゃ、この勝負かなり厳しいぞ……。

 内心、そんなことを考えていると…


「そんなに怖い顔しないでくれよ。ただ、君達の勝負を間近で見たくなっただけだよ。―――言っただろ?『今回は一視聴者として楽しませてもらう』って。ここならしっかり見られそうだからね。」


 そう言って、腹黒い笑み向けてきた。


「チッ…邪魔だけはするなよ。」

「邪魔なんてしないよ。勿論、味方もしないけどね。」


 ――まぁ、嘘は吐いてなさそうだし…邪魔しないのならよしとするか。


「ちょっと!なんで私をスル―してんのよ!」


 すると、今度は市川が詰め寄ってきて、腰に手を当てながら覗き込んでくる。……覗き込む姿勢が少し前屈みになっていたせいで、ただでさえ大きな胸が強調されている。――自然と目が引き寄せられていく……。ごくり……。


「い、いや、この勝負、別に副審とか要らないと思うんだが…?」


 俺はさり気なく目を反らしつつ、少し声を上ずらせながらもクールに切り返した。……と思ったら隣の習志野さんには全てお見通しだったらしく、ジトっとした目で睨んでいた……。


「……たっくんのエッチ。」


 習志野がぼそっと呟く…。


「す、すまん、習志野。なんだって?」


 とりあえず、俺は奥の手『聞こえないフリ』で誤魔化しておいた…。――どうやら効果は今一つのようだ……。


「別に副審なんてやらないわよ!私も近くで見たくなっただけ!――か、勝手に退学になったら許さないからっ!」


 真っ赤な顔で、目をキョロキョロさせ、手をモジモジさせながら最後に上目遣い。

 そして言い終えると、すぐに顔を背け、真っ赤な顔を隠そうと俯きながら早足で葛西の隣に戻っていった。

――市川がツンデレキャラ…だと…!?……まぁ、ぶっちゃけ嫌いじゃない!!

 俺が市川の新たな一面に、内心若干テンションを上げていると……


「かなり手強い相手です……。これは負けられません!」


 そんな市川を見て、ライバル心を燃やしている人物が約一名……。

 ――習志野、気合十分なところ悪いが、今回のお前の相手は市川じゃない…。

 しかし、そんな緊張感のないやり取りはすぐに終わった。


「まぁ、誰が審判でもいいけど…あくまで公平に頼むよ?」

「当然さ。そうじゃなきゃ面白くないからね。」


 東海は鋭い目付きで葛西達を睨みつけ、先程までの冗談半分の空気から一転、再び教室を緊張感が支配する。

 しかし、そこは葛西寛人。威圧されても全くブレない。いつもの軽い調子で適当に流しつつ、審判らしく進行役に戻る。


「それじゃあ、お待ちかねの人もいるみたいだし、リクエストに応えてそろそろはじめようか。」


 いよいよ、互いの退学を懸けた戦いの幕が切って落とされた……。

 

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