「泣ける」なら、大丈夫だと思った。
何も考えたくなくて、
ただふらり家を出た。
車に乗って、でも、目的地なんて特になくて。
ただ街の喧騒とか、人の流れとか、そういうものを呆然と見つめる。
意識したわけじゃない。
何を考えていたわけじゃないのに、
知らず溢れる涙。
そこでやっと気づく。
「ああ、私無理してたんだ…」
日々色んなことがありすぎて、
そういえば落ち込む暇さえなかった。
仕事をしてれば気が紛れるけれど、
それでもどこか上の空で、
気持ちはそこに居ない。
誰かと話していても、
一緒に笑っていても、
それでも心はいつも違うところにある。
「そっか、落ち込んでも良いんだ」
化粧が落ちるとか、
目が腫れるとか、
頭では冷静に思う自分が居るのに、
それでも涙は止まらなくて、
少し微笑った。
涙が心の浄化作用だって、
そう言っていたのは自分。
目的地が無いんじゃなくて、
このドライブの目的は一つだった。
独りになること。
独りで泣くこと。
誰に気を使われるわけでもなく、
誰に心配されることもなく、
自分が心を浄化するためのドライブ。
そう思ったら、心はスッと軽くなった。
大丈夫。
きっと、また頑張れる。
まだ前に進める。
「泣ける」なら、大丈夫だと思った。