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サブカル裁判  作者: 無相
8/9

第七条、エロアニメのエロ抜きを許すな。

エロアニメ、それは本来ならお金を払って見るもの。

あなたはビデオで?配信で? 

こっそりと見て満足するのがエチケットの筈のコンテンツが、

テレビ放送や一般の配信サイトに紛れ込む現代社会の欠陥に今回は切り込みます。

第七条。アダルトアニメのエロシーン抜きという不毛極まりない映像作品を公共の電波で流す業者、及びそれに関してゴーサインを出した者は両足に縄を打ち、体が擦り切れるまで市中引き回しの刑とする


大法廷はこれまでになく激しい怒りに満ちていた。

観客席のファンたちは拳を握りしめ、歯ぎしりをする音が響いていた。

ファン達の他にも一般のアニメファンやアニメに興味のなさそうな民衆も少なくはない。

罪人席に鎖で繋がれ、土下座の姿勢で震えているのは、大手テレビ局のプロデューサー・G氏。五十代前半、かつては数々の人気アニメを地上波で放送し、高視聴率を叩き出した業界の重鎮だ。だが今はスーツが泥と汗で汚れ、顔を恐怖で歪め、鎖を鳴らしながら必死に頭を下げている。


裁判官は氷よりも冷たい視線を投げ、その横に立つ検察官が、怒りを抑えた声で告げた。

「サブカル法 第七条を読み上げる。」

「アダルトアニメのエロシーン抜きという不毛極まりない映像作品を公共の電波で流す業者、及びそれに関してゴーサインを出した者は両足に縄を打ち、体が擦り切れるまで市中引き回しの刑とする。」G氏は鎖を引きずり、這いながら絶叫した。

「待ってください! あれは規制の問題です! 地上波では仕方ないんです! エロを抜いてもストーリーの本質は伝わるはずで……視聴率も取れましたし、スポンサーも満足して……!」


裁判官が静かに、しかし雷鳴のように断罪する。

「ふざけるな!アダルトアニメを公共の電波に流すなど言語道断!テレビ放送された深夜アニメは一般向けのコンテンツとして巡り巡って動画サイトの配信ラインナップに陳列される。この意味がわかるか?性にまだ分別のつかない頃合いの子供達が誤って見てしまったらお前達は責任をどうやって取るつもりだ?お前達のやっていることはただの迷惑で無責任な押し売りと無自覚な児童虐待だ。」裁判官はさらに続ける。


「ストーリーの本質? 貴様は、アダルトアニメというジャンルの魂そのものを抜き取った。エロシーンこそが作品の核心、キャラクターの関係性や感情の爆発を表現する最重要部分だ。それを『家族向け』という名目で全カットし、ただの薄味日常アニメの残骸を公共の電波で流した。視聴者の期待を裏切り、数年来のファン心理を踏みにじった貴様の罪は、許されざる背信と冒涜である。」


G氏の罪状は、業界史上最悪級の裏切りだった。

彼が担当したのは、人気アダルトOVAシリーズ『夜這いの女王たち』。

元は過激なエロ描写でファンを魅了し、濃厚な性行為シーンがストーリーと密接に絡み合うことで評価されていた。特にヒロイン・エレナの「夜這いによる支配と愛の確立」は、エロなしでは成立しない核心だった。


しかしG氏は地上波放送版で、エロシーンをすべてカット。

キスすらぼかし、ベッドシーンは「翌朝の日常」に飛ばし、エレナの夜這い行為は「部屋を訪れただけ」で処理。

結果、ストーリーがスカスカになり、視聴者からは「何を見せられたんだ」、

「魂抜きの抜け殻」、「エロアニメを殺した」と総攻撃。


付け加えて小中学生のキッズ達が動画サイトに流れてきた問題の作品を事情をよく知らずに誤って再生した結果、「画面が真っ黒で映らないんだけど、PC壊れてないよね?」と親に相談したことでPTAにG氏の暴挙が発覚、更に手酷いクレームがTV局や配信会社、果てはアニメ制作会社に拡大した。

サブカルに対する規制の締め付けを強化するように打診した頭でっかちなPTAの重役の爺婆(じじばば)や、アニメの知識に疎く理解のない保護者たちの抗議が連日のように続き、映像業界全般が萎縮し経済的な被害が拡大した。


原作の人気と(くだん)の一件で良くも悪くも作品の知名度が上がり、視聴率は最初だけ高かったが、即座に急落し、最終的に数百万件の苦情と ボイコット運動が発生。ついにサブカル裁判所へ告発されたのだ!


検察官が最後の宣告を下す。

「貴様の罪は、無責任な営業でアダルトアニメファンの信頼を永遠に失墜させただけに留まらず、杜撰なリスク管理で社会に未曾有の大混乱をもたらしたことだ。判決、確定。」


執行人たちがG氏を掴み、法廷外の広大な市中引き回し広場へと引きずり出す。

そこには堅牢な装甲車両が待機し、G氏の両足に太い縄が巻き付けられる。

G氏は土下座し、土を掴みながら絶叫する。

「お願いです! 次からはちゃんと有料チャンネルのサブスクで無修正放送します!  あ、そうだ!裁判官さん達が見たい作品やOVAの完全版を言ってくれれば何でも地上波で流します!アダルトアニメだってもっと凄い奴を!本来なら有料のものが無料で見れるんですよ?嬉しいでしょ?  スポンサーには俺が土下座してでも……だから、命だけは……!」


だが、その声は無視された。

アダルトアニメを地上波で流したことが発端で起こった未曾有の大混乱がきっかけで捕らえられたにも関わらず、堂々と再犯を仄めかし、反省すらしていないどころか買収の話まで堂々と持ちかける。どこまでも身勝手で愚かなG氏の振る舞いに法廷に居た全ての人間が言葉を失い、呆れ返ってため息を吐く。


無線で合図を送り、装甲車両が発車される。

執行人がゆっくりとアクセルを踏み込み速度計の針がじわじわと最高速度を更新していく。最初は低速だった。G氏の体が地面を引きずられ、スーツが裂け、皮膚が擦り剥ける。「痛いっ! やめて……!」と悲鳴が上がる。

速度が上がり、時折体が宙に浮き飛び跳ねて地面に叩きつけられる。

肉が削れ、骨が露出。血痕が長く尾を引き、市中の道を赤く染める。

観客たちは道端に並び、口々に罵声を浴びせる。

「エロ抜き野郎!」

「お前の所為で商売上がったりなんだよ!」

「子供達に変なもの見せんな!」

「お前みたいなクソ営業マンの所為でアニメがつまんねぇんだよ!」

民衆の憎悪の声は大きく中にはG氏を狙って石を投げつける者も少なからず居た。


装甲車両は市中を一周、また一周。

皮膚は完全に剥がれ、筋肉が千切れ、骨が砕ける。

数時間にわたる引き回しの末、G氏の体は赤黒いボロ雑巾と化し、肉片の隙間から出鱈目に変形した骨片が見え隠れしていた。

検視官が立ち会い死亡を確認すると、擦り切れて肉片となった遺体はロープを着けたまま処刑場の一画にあるハンガーに吊るされ、サブカル界最大の動画配信サイトのトップページに「デジタル市中引き回し標本」として永遠に公開される。

タイトルは「エロ抜きプロデューサーの末路」。

血まみれの骨と肉片、剥がれた皮膚が無修正で晒される。


公開と同時に、反応が爆発した。

「これでエレナの夜這いが守られた……ありがとう裁判所」

「エロカット勢の肉片キター!」

「次はゾーニングをしっかりやって完全版だけ放送しろよ、テレビ局共」

「引き回しループGIF永久保存」

G氏の名前は業界ブラックリストに登録。

G氏の処刑が済んだ後には共犯者も芋づる式に逮捕され、次々と断頭台で粛清された。

全プロジェクトは中止され、テレビ局は巨額賠償と停波解体の2択を迫られる。


実名が特定され、家族は「魂抜き親族」としてマスコミに囲まれ、妻は離婚、

子供は不登校、親族一同が転居を繰り返すが、どこでも落書きと脅迫。

スポンサー企業までボイコットされ、株価暴落。

デジタル遺体は日々晒され続ける。


血生臭いボロ雑巾のような肉片とそれに共謀した関係者の首級と共にゆっくりと朽ち果てるまで、そして死体が風化した後もアダルトアニメファンたちの憎悪の象徴として、アーカイブ化された写真や記録映像が永遠に残る。


かつて「エロ抜きでも本質は伝わる」と豪語した男とその共犯者達は、ただの擦り切れた肉と骨の標本と化した。

法廷の観客席から、アダルトアニメファンたちの静かな安堵と拍手が響く。

「これで夜這いの女王たちは、永遠に魂を抜かれない……」

「悪は去った、これで安心してアニメが見れる…」

裁判官と検察官は無言で頷き合い、次の罪人を呼び入れる準備を始めた。

アダルトアニメの魂は、血と肉片で弔われたのだ。




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