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19  第三章 強盗とグラタン(1)/警察からの依頼

(前回から)社長の依頼をこなした二人に、今度は警察から依頼……ということで新章開始です。

 土曜日の営業終了後、店内は異様な緊張感に包まれていた。

 すらりとしたスーツ姿の女性と、もう一人は肩幅が俺の二倍ほどある男性。差し出された名刺の肩書きは「警視庁刑事部捜査第二課」、女性は「警部 牧島洋子」と、男性は「警部補 田島 要」と書かれている。

 

 「……警視庁の警部さんが、何のご用ですか?」

 

 完全にびびってしまった杏奈は、俺の影に隠れるようにして様子をうかがっている。

 先ほど「お前何かした?」と聞いた時には、激しく首を振っていた。いや、確かに、今女将さんが入院してるから、杏奈が夜に働くのは若干グレーと言えばグレーだが……別に俺が雇い主じゃないし……。

 

 「突然すみません、藤川さんの紹介で来ました」

 「あ、社長さんのですか?」

 

 急に顔を明るくして杏奈が身を乗り出した。

 「はい、今捜査が行き詰まっている事件がありまして……それで、お二人に料理を作っていただけないかと」


 ……。


 意味が分からない。

 深夜の「三河」にしばし沈黙が流れた。


 「警部、それでは意味が分からないのでは?」 

 「ん? ああ、そうか」

 「申し訳ありません、警部は少々頭が良くてですね、しばしば、説明が飛びますのでご容赦ください。何せ東大卒のキャリアでして……本当はこういう部署に配属されることはないのですが……かなりごねて、もとい、ご希望を強く出されて、異例ではありますが、2年間を期限に出向されているんです」

 「あはは、頭が良いなんて、人前で褒めちぎるのはよしてください、田島警部補」

 

 褒めてるんじゃなくて、皮肉じゃないか?

 頭が良すぎると、何とかと紙一重みたいな、そういうタイプか……。

 

 「私から情報に配慮して補足しますと、今、うちで捜査している強盗致傷事件がありまして、容疑者は逮捕したのですが……動機と、当日の行動の一部を完全に黙秘してましてね。その部分の供述がなくても、カメラ映像や指紋その他客観的証拠で、犯罪事実の認定に影響はでないものの、どうにも気持ちが悪い。

 それで検察官から指示を受けて、調べは続けてるんですが、本人はもちろん話す気はないと。もう起訴はされているので、後は裁判を受けるだけではあるのですが」

 田島警部補の言葉を引き取るように牧島警部がずいと前に出てくる。

 

 「その内容が分からなくても、裁判は進むでしょう。そして、強盗致傷で被害者には結構な怪我を負わせてるので、恐らく実刑になると思うのですが……しかし、正しく、この事件を理解しないまま公判まで放置することはできないというわけです」

 「難しいことは分かりませんが……あの、うち、料理屋なんですけど」


 社長の時もこんなんだったな。

 田島警部補が、パンと手を叩いた。


 「そうなんです、で、その容疑者、ああもう被告人ですが、そいつがですね「もし俺が食べたい料理を食わせてくれたら話しても良い」と言ってまして」

 

 おお……やっと料理につながった。だが、ということは……。

 「その料理を作って欲しいってことですか」

 「はい、そうです、お願いできますか」

 

 ……いや……。

 これ、警察の捜査でしょ?

 荒唐無稽過ぎる、さすがに断って……。

 

 「どんな料理なんですか?」

 メイド姿で目をキラキラさせた雇い主Aに強く反論する力など、真夜中で疲れ切った俺には残されていなかった。

 

 ***


 「基本的にはポテト……グラタンかなぁ……どう思う?」

 俺は警察の説明を見直しながらつぶやいた。


 「四角い深めの皿に、白いソースと焦げたチーズ、その下の層に肉とかジャガイモと、後何か野菜と柔らかいものがあった。香ばしさと甘みがあって、こくも強め。ただ、何となく懐かしい優しいまろやかさがあった。」


 これだけですもんねぇ……と警察から聞き取ったメモを杏奈がぼやくようにつぶやく。


 「味のイメージは何となく浮かびます、今橋本さんがイメージしてるのは、普通のポテトグラタンですか」

 「うん、そう、こういうやつ」


 俺は料理の基本レシピ本を取り出し、杏奈にポテトグラタンのページを見せる。ベーコン、ジャガイモ、タマネギ、ホワイトソース、チーズ、塩胡椒、バターといったごく基本的なものだ。


 「それだと……なんか、薄くて、甘みやこく味も大分足りないイメージなんですよね……」

 「えー、なんだろなぁ……」

 ここで考えてても分からないか……。

 とすると、また例によって……。

 

「橋本さん、明日、日曜日のご予定はありますか?」 

 

 ね、もう完全に期待してるだろ。俺が朝ごはん作るの。

 ま、予定ないけどね。


 「じゃ、明日の朝ご飯はポテトグラタンになります……」

 「やったー!」

 「お前、それが目的じゃないだろうな?」

 「いえ、違います。でも、朝から調査計画を立てた方が、早く進みますよね」


 あー、調査ね。

 もうほとんど探偵だよな。

 俺、料理人なんだけどなぁ。

 「ポテトグラタン……橋本さんのポテトグラタン……朝から……」

 いや、こいつ、絶対朝飯作って欲しいだけだ。


読んでいただいてありがとうございます!

なるべく毎週数回の更新をしています、もしよければ評価・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!

 (すみません、今回から人称を少し修正しています。おってここまでのエピソードも今後大幅に改稿予定です、ここまで読んでいただいている方がいたらすみません……(0923付け記載)

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