屋敷に乗り込んできた古代竜は私と目を合わせるなり降伏してきました。
「天使な息子のシャルルちゃん。今日もかわいいでちゅね」
私はシャルルを抱き締めた。
きゃっきゃっシャルルは喜んでいた。
「ちゅっ」
とそのほっぺにキスをする。
シャルルはなんかキスは嫌みたいで
「うーうー」
言って首を振るんだけど。
「まあ、シャルルちゃんたらキスは嫌なの?」
私が驚いて頬ずりすると
「そらあお前のキスは嫌だろう」
何処からか声がする。が、私は無視した。
頬ずりは好きだったみたいで、きゃっきゃっシャルルは喜んでくれた。
「そう、シャルルちゃんは頬ずりは好きなのね」
「そんな訳無いだろう。喜ばないとお前が怒るから喜んでいるだけだ」
「ちょっとエド、いつまでいるつもりよ」
私はそう文句を言う、エドを睨みつけた。
今日も送り迎えはエドがやってくれたんだけど、いい加減に帰って欲しい。
「いや、まだ、用が残っていて……」
「何が残っているのよ」
エドの答えにムッとして私が言うと
「いや、そのだな」
なんかエドが奥歯に物が挟まったような言い方するんだけど。
「何よその言い方。さっさと言いなさいよ!」
私がムッとして大声を出した時だ。
「オギャーーーーオギャーーーー」
いきなり天使な息子のシャルルちゃんが泣き出したのだ。
「ああ、ごめんごめん」
私が慌ててあやすが、中々泣き止んでくれない。
「ちょっと、エド、あんたのせいよ」
私が文句を言うと
「お前の顔が余程怖かったんだろう」
エドがとんでもないことを言ってくれた。
「なんですって」
私が叫んだ時だ。
ギャオーーーー
大きな咆哮がしたのだ。
窓ガラスがビリビリ大きく揺れる。
「な、何事だ!」
エドが驚いて立ち上がった。
バシーーーン
次に大きな音がする。
グオングオン
嫌な音がした。
「キャーーーー」
「出たー」
「助けて」
大声が外からする。
私達は慌てて外に出た。
そこには腰を抜かして倒れているダクラスら一行10名がいたのだ。
そして、その先には巨大な古代竜が侯爵家の張られた障壁を壊そうとしていた。
館の壁には私が障壁をぐるりと一周張り巡らせているのだが、その一角に古代竜が取り付いて、突き破ろうと暴れていたのだ。
「ゲッ、古代竜だぞ」
エドが叫んだ。
騎士たちも抜剣して正対しているが、もう完全にへっぴり腰になっていた。
「いいわ、皆下がりなさい」
私は叫んでいた。
でも、ダグラス等は腰を抜かして動けないみたいだ。
「手がやけるわね」
私は泣いているシャルルにキスすると
「天使な息子のシャルルちゃん。こんな古代龍なんて、お母様が一瞬で退治してあげますからね。ここで見ているのですよ」
私はそう言うとメリーにシャルルを預ける。
私が前に進み出た時だ。
バリンッ
さすがの障壁も壊れて、怒り狂った古代竜が屋敷のフェンスを壊して入ってきたのだ。
「ギャーーー」
その前にはダグラス等が居た。
悲鳴をあげるなんて情けない。もう少し考えられないものかと私はむっとする。
突っ込もうとする古代竜の前に私が障壁を展開した。
ガシンッ
古代竜の動きが止まる。
「早く、こちらに来なさい」
私が叫ぶと、慌てて、騎士たちがこちらにかけてきた。
腰を抜かしたダグラスは別の騎士たちが助けてくれた。
ギャオーーーー
目標がいなくなった古代龍が私に向かって咆哮してくれたのだ。
「ふんっ、私に敵対するなんてなんていい度胸ね。今ここで成敗してあげるわ」
私はそう言うと、やる気満々になった。
久しぶりに全力が出せるのだ。私は殴り倒す気満々だった。
そして、私と古代竜が目があった。
その瞬間だ。
古代竜の動きが止まったのだ。
何故か目をギョッと見開いて固まってしまったんだけど。
「えっ?」
私はせっかく殴り倒そうと思ったのに、古代竜が止まってしまってやる気を削がれてしまった。
というか、突っ込んでくれないとさすがの私も手が届かない。
こうなったら爆裂魔術で燃やすか!
方針を転換しようとした時だ。
古代竜がいきなりひっくり返ったのだ。
ドシーーーーン
凄まじい大音響と振動で地面が揺れた。
「「「えっ」」」
皆唖然としていた。
いきなり古代竜が腹を見せて寝転んだんだけど……
手足をブンブン振っていやがるんだが、何故?
「えっ、これ攻撃しろってこと?」
私が言うと
「違うだろう。どう見てもお前に服従しているだろうが」
エドが言ってくれた。
「なんでよ。まだ戦っていないわよ」
私が文句を言うと
「昔お前にこてんぱんにされた龍の一匹じゃないか」
エドの言葉に古代竜はどう見ても必死に頷いているんだけど。
「ええええ! 久しぶりに全力で出来ると思ったのに!」
「全力ってよく言うな。弟に聞いたぞ。この前山を一つふっとばしただろうが」
私の声にエドが突っ込んでくれたが、
「あんなの手加減しているに決まっているでしょ」
私がムッとして言ったのだ。
でも、さすがの私も必死に手足を振る古代流を攻撃することは出来なかった……
やはりジャンヌの前に古代竜は手も足も出ませんでした。
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