推してやろうと思ったのに、辺境伯の女が喧嘩を売ってきたので買いました
取り敢えず、私はとてつもない見本を見せて、ダグラスには魔術はイメージが大切だと教えたのだ。
「そう、祈りなんてしなくても魔術はできるのよ。全ては魔術をイメージ出来るかどうかなんだから」
とダグラスには説明したが、ダグラスはまだ良く判っていないみたいだった。
まあ、すぐに理解するのは難しいだろう。
エドも私が言うことが少し理解できるまでに1年くらいはかかったのだ。
弟も同じくらいかかるだろう。
まあ、しかし、私が取り敢えず実践してみせたので、出来るということは理解できたはずだ。
やれば山の一つくらい簡単に消滅させる事が出来ることも。
私がそうアリスに言ったら、
「それが出来るのはお嬢様だけです」
と呆れられてしまった。
剣術も弟のブライアンに相手させたんだけど想定通り全然ダメだった。
王子に剣なんてと文句を言ってきた騎士たちは一瞬でブライアンにのされてしまったことで、誰ひとり逆らえるものはいなくなってしまった。
剣術に関してはまず基本が出来ていないとブライアンが言うので、ただひたすら素振りをさせることにしたのだ。
取り敢えず、今年一年間は魔術はイメージ、剣術は素振りをさせることにした。
これをやれば少しはマシになるだろう。
近衛騎士たちが全く私に対抗できない事を知って、ダグラスも私のやり方に文句は無いようだった。
あとはそれが出来るかどうかだ。
そうやって、ダグラスのトレーニングと、天使な息子のシャルルちゃんの世話で忙しいのに、相も変わらず、エドが王宮に呼びに来るんだけど、なんでなんだろう?
あんまり王宮には行きたくなかったのだが、王妃様がダグラスの成長具合が知りたいと言っておられるとエドから言われれば、行かないわけにはいかない。
ダグラスを育てていれば二人の子育てで忙しいと言って断れると思っていたのが、宛が外れた。
「ちょっと、エド、いい加減に王妃様をなんとかしてよ。なんで私があなたと一緒に王宮にいかないといけないのよ」
私が文句を言うと、
「それは俺が言いたい。なんで俺がお前を迎えに行かないといけないのだ」
エドもそう言ってくれるので、
「そうでしょう! そう思うのならばあなたから断ってよ」
私がそう言ったのだが、
「それが出来たらとっくにそうしている」
むっとしてエドに反論されたんだけど。
「お前から断ってくれ」
エドが更にそう言うんだけど、
「それが出来たらそうしているわよ」
私達は王宮の廊下でお互いに相手を非難していた。
「そもそもあなたが、誰かいい人を王妃様の所に連れていけばいいのよ」
私は良いことを思いついたのだ。
「はああああ! お前に散々ひどい目に会ったからな。女は懲り懲りなんだよ」
エドが言ってくれるけれど、
「じゃあ、男がいいの?」
私がそう聞くと盛大にエドはむせていたが……
「王太子殿下!」
その時だ。頭の天辺から突き抜けたような甲高い声がして、ピンク髪の少女がこちらに駆けてきた。
「エド、あの子がいいんじゃないの!」
私はめちゃくちゃその子とエドをくっつける気満々になったのだ。
「はああああ! あれは辺境伯の長女だろ。最近やたら辺境伯と一緒におれに近づいてくるんだが、俺はお前みたいな積極的なやつは嫌だ」
なんかエドがとんでもないことを言ってくれるんだけど……
なるほど、エドはグイグイ来られるのが嫌いらしい。
でも、エドは強引に誘われると中々断れない性格なのだ。
それでゴブリン退治も盗賊退治も無理やり連れて行ったのだ。
この子ももっと強引に迫れば、あるいはエドも落ちるかもしれない。そうなれば私も毎日のようにこの王宮に来る必要は無くなって、天使な息子のシャルルちゃんと、二人きりの時間をもっと作れるはずだ。
私はこの時まではこの子を応援する気満々だったのだ。
次の言葉を聞くまでは……
「殿下、お久しぶりです」
辺境伯の令嬢、確かイライザ嬢だ。その子はエドの腕に捕まったのだ。そして、その豊満な胸をエドに押し付けいていた。羨ましいほどの大きな胸が揺れる。
こいつは私が胸がないのを知って喧嘩を売っているのか?
と思わないでもなかったが、ここは我慢だ。この女とエドがくっつけば私もこんな無駄な時間を過ごさなくて済む。
そう思って私はエドを置いていこうとしたのだ。
そう、私はエドなんていらないからこの女に譲ってやろうと思ってやったのだ。
「イライザ嬢、何の用だ。私はジャンヌと一緒に母上に呼ばれているのだが」
言わなくてもよいのにエドが逃げようとして言ってくれたのだ。
私は、せっかく女の子がエドに声をかけてくれたので、エドが来なくても良いと言おうとしたその時だ。
「まあ、エドワード様はこのような年増の未亡人と王妃様に呼ばれておりますの」
女はいかにも軽蔑したように私を見てくれたのだ。
私はその言葉に完全にプッツン切れてしまった。
「と、年増ですって!」
私は完全に地が頭に血が登ってしまったのだ。
「ふん、胸しか自慢できるもののないおこちゃま娼婦が何か言ってくれたかしら」
私は二たりと笑うや女を見た。
「だ、誰が娼婦よ!」
女も私の言葉に切れてくれた。
「だって許しもないのに、殿下の腕に胸を押し付けるなんて娼婦のやることよ」
私が馬鹿にして言ってやると
「ふんっ、その自慢できる胸もないペチャパイ女に言われたくないわ」
「な、なんですって」
私はシャルルを抱っこしていなかったらそのまま女を張り倒すところだった。
そして、
「オギャーーーオギャーーー」
すやすや寝ていたシャルルが私の大声に驚いて起きて突然大声で泣き出したのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは明日です。
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