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側妃視点2 悪巧みの為にあの憎たらしい女に謝ることにしました

「なんですって、失敗したですって!」

思わず私は叫んでいた。せっかくあの女がどうなったか楽しみにしていたのに、それが失敗したですって!


「申し訳ありません」

ダニーが謝ってくれたのだが……


「まあ、アデラ、そう言ってやるな。ダニーも懸命にやってくれたのだ」

お父さまがダニーを庇った。


今日はダニーが報告したいことがあると言ってきたので、また皆で集まっているのだ。

私はあの女のことだと思って嬉々として待っていたのに! あの女がどれだけ苦しんだとか、泣き叫んだとかそれを楽しみにしていたのに、失敗したなんて……


「いえ、あなたを責めているわけではないのよ」

私はそう言うしかなかった。何しろダニーは私の部下ではないのだから。


「あの生意気な女にあなたが鉄槌を食らわしてくれると聞いていたから、それを楽しみにしていただけで」

「そうですな。側妃様の嘆かれるのも当然で、その方が失敗するとは珍しいではないか」

私の言葉にコールマンも頷いてくれた。


「面目ございません」

ダニーは再度頭を下げて来た。


「まあ、結果は仕方あるまいて。で、どうなったのだ?」

お父さまが聞いてくれた。


「はい。元々オルレアン侯爵家には手の者を入れておりまして」

ダニーが説明を始めた。


「そうじゃな。オルレアン侯爵家に嫁いできたあの女はむかつくウェリントン将軍の娘だ。将軍の伯爵家は第一王子派だったからな。それをお前と親しい伯父に変えたら第二王子派になるとの事で期待していたのだ」

コールマンが確認してくれた。何しろコールマンの家と将軍の家はもともと犬猿の仲なのだ。それに、1つの侯爵家が私の息子を押してくれたら、とても心強いと私もそれを期待していたのだ。


「それをあの女が覆してくれたのですが……」

「本当に忌々しい女じゃな」

「絶対にあの女が体を張ったに違いないわ」

お父さまに続いて私も頷いた。


「まあ、あの女は若いですし」

「目鼻立ちが整った女だと聞いたが」

「結構な美人じゃった」

なんか三人共褒めてくれるんだけど。


私が年増だと言いたいのかしら?


「あなた達、何が言いたいのですか?」

思わず私がムッとして睨みつけた。


「いえ、決して側妃様をけなしたわけではなく」

「そうじゃ、お前はあの女よりも胸が大きいぞ」

「左様で」

なんか三人共、私が胸しかないみたいじゃない!


たしかにあの女は私よりも10くらい若いけれど、若いだけじゃない!

胸は私の方が絶対にでかいのだ。容姿だって後10年若ければ絶対に負けなかったのだ!

私が更にムッとした時だ。


「それよりも、どうなったのだ」

「そうだ。続きが聞きたい」

「左様でございますな」

三人で必死に誤魔化してくれるんだけど……


「あの女の息子を攫おうとしたのですが、あの女、中々、息子を離さないのです」

「まあ、そうなの」

私は驚いた。貴族の赤ん坊の世話は基本はほとんど乳母がやるのが普通だ。

赤ん坊は夜泣きするしそれで寝られないなんて最悪だ。私は体型が変わるのが嫌で、お乳もほとんど乳母にやらせていたのだ。


「乳母がいるだろうが」

お父さまが言ってくれた。そう、乳母から攫えば良いのだ。


「いえ、あの屋敷には乳母はいないのです」


「まあ、じゃあ、あの女が乳母の代わりもやっているの? 乳母さえ雇う金が無いのかしら?」

私が驚いて言うと、


「アデラ、それはないと思うぞ。一応侯爵家だ」

お父さまが言ってくれたるが


「まあ、変わった育て方ではありますが、そう言う女もたまにいますからな」

コールマンまでがそう言ってくれた。


「そうなんですね」

まあ、侯爵家が金が無いというのはないだろう。私も納得した。子育てを自分でやるというのが信じられなかったが……

今も私が息子に会うのは食事時くらいで、それも夜会やらお茶会やらで中々会えない時も多い。それに息子には日中は家庭教師がみっちりついているのだ。下手したら一日に一回も会わない時だってある。


「でも、たまに息子を離すときもあるだろう」

「一応侍女がいるのですが、抱かせるのはただ一人だけで、離れる時は伯爵家から連れてきた護衛騎士を付ける程なのです」

「なるほど。そこまで息子に執着しているのだな」

コールマンが頷いていた。


「このままでは埒が明かないと思い、第一王子殿下をだしにしようと思ったのです」

なんか、ダニーはとても不遜な事を言うのだ。

息子のライバルだから、いくら貶めてくれても良いのだが、王子をだしに使うとは良い度胸だ。


「殿下をか?」

コールマンが驚いた。

「まあ、閣下にお手伝いいただきましたが」

「私は預かった手紙を近衛騎士に持って行かせただけだぞ」

ダニーの言葉にコールマンは笑った。


「はい。殿下が訪問されたら、いくらあの女でも息子を離すかなと思いまして」

「どうだったのだ?」

皆注目した。


「それが女は殿下の前に息子を連れて行ったのです」

「えっ、王族の前にか」

私達は驚いた。王族の前に赤子を抱いたまま出るなんて、なんて常識知らずの女なんだ。


「まあ、この前も抱いておったからの」

お父様はそう言うが、そう言えばあの女は王宮にまで赤子を連れていた。なら、殿下の前でも抱いて現れて問題がないのかもしれない……


「面目ございません」

「それで諦めたの?」

私が聞くと、

「いえ、そこで騒ぎを起こしてドサクサに紛れて息子を誘拐しようとしたのですが、失敗してしまいました」

「失敗したのか」

「はい、窓ガラスを割って賊が入った演出して、どさくさに紛れて、侍女に扮した手の者が女から赤子を取ろうとしたのですが、女は平然と椅子に座ったままで」

「騒ぎにびくともせんかったのか」

「はい」

ダニーは頷いた。


「更に、危険だからこの部屋から他所に移ろうと提案したのですが、女は却って手の者を疑いだして、最悪女を亡きものにしても良いとの事でしたので、攻撃しようとしたそうですが」

「どうなったの?」

私は更に身を乗り出して聞いていた。


「女に雷撃を受けてやられてしまったようです」

「そうなのか」

お父様もがっかりしていた。


「それではらちがあかんな」

コールマンが言った。

そこまで、息子にこだわるのならば、中々厳しいのでは……私はこの件は難しいかなと思ったのだが、


「そこで、今度の夜会はどうでしょうか?」

ダニーが次の手を提案してきた。


「ああ、全ての貴族が揃う年一回の夜会か」

コールマンが指摘した。


「しかし、あの女が来るのか? 夜会に」

お父様が訝しげに聞いた。


私なら喜んで夜会に出るのだが、息子ベッタリのあの女が来ない可能性がある。

「そこでです。側妃様にお願いがあるのです」

ダニーが言い出した。

なんかろくでもないような気がする。


「お願いとは?」

「陛下にあの女と仲直りがしたいとお話しいただけないでしょうか」

タニーの言うことはめちゃくちゃだった。


「えっ!仲直りするの?」

「形だけで御座います」

「形だけでも、嫌よ」

私はそう叫んだが、


「まあ、そう言うな、アデラ。お前が少し我慢すれば良いのだ」

「左様に御座います」

「少しくらい我慢できるだろう。一時の前の小事だ」

お父様までがそう言って来るのだ。

皆こちらを見てくるし、


「うー」

皆に見つめられて私は考えた。

絶対に謝らないとダメなんだろうか?

私が目で訴えても、皆、頷いてくれない。


「判りました。我慢します」

私は仕方がなく頷いたのだ。


「有り難うございます。女が夜会に出ている間に今度は絶対に息子を誘拐してみせますから」

「頼みますよ。したくないのを、我慢して謝るのです」

私がお願いすると、

「お任せください」

ダニーが太鼓判を押してくれた。

私はそれを信じたのだ


仕方がない。あの女に泣き面をかかせるには仕方がない。泣き叫ぶあの女の姿が見られるのを、楽しみにしよう。

私は潔く、謝ることにした。

さて、ジャンヌはどうするか

続きは今夜です。

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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。

しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。



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