天使な息子に切りつけたメイドに雷撃を浴びせました
「天使な天使なシャルルちゃん」
私は歌いながらシャルルを抱っこしていた。
天使な息子のシャルルはとても可愛い。
この口元、お手々、そして青い目もとてもきれいだ。
きゃっきゃっ笑う笑顔もめちゃくちゃ可愛い。
私はそのほっぺたをツンとする。
「うー」
そうするとシャルルは嫌そうな顔をするんだけど。
なんでだろう?
寝ている時にたまにそれで起こすからだろうか?
「可愛いでちゅね。シャルルちゃん」
私はシャルルにキスした。
「おい!」
「なんで、シャルルちゃんはこんなに可愛いんでちゅか?」
「おい!」
「誰がおいよ!」
私がムツとして、エドに言い返した。
「お前、俺達は忙しいんだぞ!」
「なんでここにいるのよ?」
「「「お前が呼んだんだろうが!」」」
エド等が叫ぶんだけど。
確か、この前もそう言われた記憶があるんだけど、
「そうだっけ?」
私は何故エド等を呼んだか思い出そうとした。
「お前な、同じことを何度もやるなよ」
エドが文句を言ってくるんだけど……
今度は呼んだ記憶がないんだけど……
「アリス、私、エドを呼んだっけ?」
「いえ、お嬢様。今は新たに雇ったメンバーの育成に忙しいから殿下等と遊ばれるお暇はないかと」
アリスが答えた。
「おいおい、何か突っ込みどころが満載なんだが、俺を呼ぶ時は遊びなのか!」
エドが文句を言ってくるんだけど。
「それはどうでも良いけれど、今回は呼んでいないわよ。嘘だと思うのならば私の秘書官のバリーに聞いてよ」
「いつからバリーはお前の秘書官になったんだ」
エドがそれについて文句を言ってくる。
「それにそもそもバリーは何故ここにいないのだ?」
「何言っているのよ。そもそもエドが私を見張らせるためにバリーを送り込んできたんでしょ。ここにいるなら有効に活用したいから色んな仕事をやってもらっているわよ」
私は呼び鈴を鳴らした。
「はい、ジャンヌ様、何でしょうか?」
そこには執事の格好をしたバリーが慌てて入ってきたのだ。
「おい、バリー、お前はいつからジャンヌの使用人になったのだ?」
機嫌悪くエドが聞くのだけれど、
「えっ、私をジャンヌ様につけたのは殿下じゃないですか? ジャンヌ様が悪いことをしないように見張れって」
「ああああ」
エドは慌てて止めさせようとして失敗した。
「そうエド! これはどういうことなのかしら?」
私がギロリと睨んでやると
「いや、今は俺達を何故ジャンヌが呼んだかということなのだが」
「えっ、ジャンヌ様。殿下を呼ぶ時は私を通して頂かないと困ります」
バリーが言ってくるんだけど。
「ほらね。アリスも知らない、バリーも知らないじゃ私が呼んだんじゃ無いわよ」
私は否定したのだ。
「そんな訳ないだろ。この書面を見て見ろ」
そこには
『すぐに来い! ジャンヌ』
とデカデカと書かれていた。
「それ私の字じゃないわよ。なんでそんな手紙書くなんて面倒なことしないといけないのよ」
「この手紙のどこが面倒なんだよ。こんな短い手紙を俺に送ってくるのはお前くらいだろうが!」
私の問いにエドが怒るが、
「だから今は口頭でバリーに言うから手紙はイラないのよ」
私は言い切った。
「うーん、確かに。ジャンヌ様の言われるのももっともですね」
カーティスが私を援護してくれた。
「俺は、手紙さえ書かずに呼び出される存在なのか!」
エドがなんか落ち込んでいる。
「まあまあ、エド。今はそれよりも、誰が何の目的でエドをここに来させたのかよ」
「誰が何の目的でって……」
エドが考えた。
「エドを虐めるため?」
私が言うと
「どういう意味だ、それは?」
エドがムッとして言う。
「ジャンヌ様にエドを叱って欲しいとか」
カーティスが言ってくれるが
「私も今はシャルルのお相手で忙しいから、エドの相手なんて出来ないわ」
「俺も忙しいんだよ。こんなところで暇を潰すよりもやらなきゃいけない仕事が山積みなんだぞ」
私の言葉にエドが叫ぶんだけど。
「じゃあ、やっぱり嫌がらせなんじゃない。忙しいエドを私の所によこして、虐めさせるって、あなたも相当嫌われているのね」
「しかし、そんなことやりそうなのはお前ぐらいだぞ」
「だから今は、あんたになんか構っている暇はないのよ」
私達がまた言い合いを始めた時だ。
バリンッ
大きな音が外でしたのだ。
「キャーーー」
メイドの悲鳴が聞こえる。
「バリー、見てきて」
「はい!」
慌ててバリーが飛んでいった。
「奥様。危険です。何でしたらシャルル様は私がお預かりしましょうか?」
その時メイドが私の方にやってきたのだ。
「大丈夫よ。いざとなったらエド等が戦ってくれるから」
私は平然と言い切ったのだ。
「おい、ジャンヌ。何で俺が戦わなくてはならない」
むっとしてエドが言うんだけど。
「ええええ! あなたこのか弱い女の私に戦えっていうの?」
私がしなを作って言うと、
「お前のどこがか弱いんだ! お前はこの国最強だろうが」
横でエドが何か言っているけれど、それは無視だ。
何しろ私は天使な息子のシャルルを抱えているのだ。
一番奥で守られなければならない存在だ。
「やはり、奥様。ここは危険です。他の部屋にお移り頂いたほうが」
メイドがなおも言ってくるんだけど。
「うーん、怪しいのはあなたの言動なんだけど」
私はメイドを見た。
「な、何を仰るのです」
メイドは慌てて言った。
「危険かどうかは私が判断するわ。そもそも、何故シャルルをあなたに渡す必要があるの? 私の腕の中の方が一番安全なのよ」
私がメイドを睨めつけたのだ。
新たに雇ったメイドの中には不届きなことをするやつもいると元々思っていた。
それがこのメイドなのだろう。
私はエドにでも拘束させようと思った。
「エド、メイドを拘束して」
「えっ、俺がか」
エドのやつ、すぐに動かないから隙ができたじゃない!
「くっそう」
メイドはナイフを出してあろう事か私のシャルルに向かって突き出してきたのだ。
「なにするのよ!」
私はその瞬間プッツン切れたのだ。
雷撃が女を直撃して、ナイフが近付く前にメイドを吹き飛ばしていた。
完全に私が切れたので、手加減は出来なかった。
周りのメイドたちは呆然と見ていた。
「ああああ、ジャンヌに逆らうなんてなんてことを」
「完全に黒焦げだぞ」
エドとカーティスは肩をすくめているんだけど。
「お嬢様。これでは尋問して背後関係を調べられませんけれど」
アリスまで文句を言ってくるんだけど。
「うーん、ちょっと手加減が出来なかったのよ。まあ、気にしなくてもまた誰かがやってくるでしょう」
私はそう言うと泣き出したシャルルを慌ててあやしだしたのだった。