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チャッピーとピーコ  作者: タニコロ
9/16

東京駅には何もない

秋葉原を抜け、神田を通る。この辺りには何もない。

「ほぼ平原だ。何もない。東京駅の方向も何もない」

日和が何気なくつぶやいた。この周辺には何もないのだ。

「ねぇ、泰子。時間かかるかも知れないけど、住之江まで行かない」

「はい。何か残ってるかも知れませんね。ボートレース場とか」

「あはははは。ボートレース場か。あの向かいに住之江公園あるでしょ。あそこの池にチャッピー、落ちたのよ。犬なのに葉っぱで滑って。鈍臭い」

「あれは言わないで」

チャッピーが叫んだ。

「チャッピー、あなたちょっと偉そうにしてるけど、私はあなたの命の恩人よ」

「ぐぬぬぬ」

「住吉公園に池あるでしょ、泰子ちゃん」

「はい。渡れる石が置いてあります」

「あそこでも落ちたのよ」

「ピーコ、うるさい」

チャッピーは顔を真っ赤にした。

「それなのに人間になったら私に仕返しっておかしくない」

「おかしいです」

「だってえ、ピーコが鬱陶しいかったんだもん」

チャッピーが言った。

「泰子とエレンは仲が良くていいわねぇ」

「生まれた時からお世話してますから」

「ゴロニャーン」

とリドが日和の膝の上に顔を乗せてきた。

「あなたは可愛くないのよ。なぜか」

日和がギューッと耳を引っ張った。

「あれ、やっと村が見えて来た。だいぶ走ったね。たぶん、横浜も越えてるわ。ミー看板読んで」

「ツルマキです」

「ツルマキね。思いっ切り日本語っぽいけど」

日和たちは秦野の手前の鶴巻温泉まで来ていた。住之江区民には全く縁のない地名だった。おそらく今でも認知度はほぼゼロだろう。

「へーっ、温泉があるのね。昔からあるのかしら。とりあえずここで休憩しましょう。泊まっていきましょう」

日和が言うとリドが一番先に馬車から降りた。

そのリドを見て村を歩いていた人たちが目を止める。

「美人だ。すごくきれいな人だ」

「あんな美人見たことない」

「わあっ、キレイキレイ」

その言葉がリドの耳に入ってリドはキリッと表情をしめる。

どこかモデルのようなポーズを取っている。

「なんか調子乗ってる。このままどうなるか放っておこう」

と日和が言った。すると三人組の男たちがやってきて

「すみません。あなたの命をください。生贄になってください」

と言った。

「エーッ」

日和があわてて馬車を飛び降りた。

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