御徒町に着く
馬車は延々と西へ向かう。
ずっと草原の平野が続いている。
何の川かわからないが1本の太い橋があって、そこを通ろうとしたが、橋の入り口の両側に小屋があって警備兵が出てきた。
「あれ、何で銃を持ってるの」
日和が警備兵の姿を見ただけですごく驚いた。
「何で、何で」
馬車から飛び降り、警備兵の所に走っていく。
「すみません、もしお渡りになるなら10万ゴールドいただきます」
「あの、ここはどこですか。もしかして日本」
「お嬢ちゃん、何で1000年前の国の名前知ってるんですか」
「え、やはりここは日本?」
「昔はそういう名前だったらしいね。地震が起きて、その後、魔王みたいな人が来て」
「え、魔王」
「今、シコクは魔王が支配してるんだ」
「私、魔王を倒す剣持っているんですけど。杖も」
「ああ、ペロッピ様が昔のゲームに感動して作ったやつね」
「ペロッピ様って」
「昔、大きな宇宙船が落ちたんだよ。宇宙犯罪人の魔王を追って。その時、生態系も変わったんだ。その中心人物がペロッピ様。文化が無くなった街に文化をくれたんだよ。去年、亡くなりはったけど」
「すみません、10万ゼニー払います」
日和は考えることがいっぱいありすぎて逆に何もしゃべれなかった。
馬車は静かに川を渡る。
少し気分が落ち着いてきた。
ここが1000年以上後の日本だということ。
大地震が起こったということ。
魔王が宇宙人だということ。
四国が魔王の国だということ。
宇宙の遺伝子が混ざってるということ。
「サントリーの瓶はレトログッズとして置かれてたの。1000年は持つかということは、私らが死んで1000年後の世界?」
「ピーコ、石鹸のネットは」
「そういうノウハウが残ってたんじゃない? いろいろ残ってるはずよ」
日和と靖子はいろいろと考えた。
そもそも食事をする時の箸もそのままじゃないか。
「そうね、リドが私らの子孫と思えばまだかわいいわ」
「はふ?」
鼻を垂らしたリドが顔を出した。
「あの子、本当にバカなの。黙ってればかわいいお姫様なのに。だいたい、土浦で姫って何よ」
「ピーコ、土浦も国だったら東京も国になってるかも」
「そうよね。本当にちゃんと調べてみましょう」
川を何本か越えて上野の場所かな、というあたりに着いた。
街の真ん中には太い商店街みたいなものがある。
「ミー、あの看板なんて書いてある?」
「いらっしゃいませ、オカチへ」
「何、オカチ? オカチ、オカチ、御徒町だ」
「ピーコ、どうしたの」
「やっと知ってる街に来た。東京駅はこの先よ」
「何でわかるの」
「私のアネキが浅草で独り暮らししていてその時にアキバで電化製品買わされて、歩いて御徒町まで来たことあるの。おごったるわって言われて楽しみにしてたら上野のハズレのサイゼリアだった」
「それで覚えてたんですね」
「バカアネキありがとう。ここまっすぐ行ったらアキバ、神田、東京駅よ」
日和は馬車の手綱を強めた。