ピーコ、人に戻る
ポポロ洞窟の奥らしい場所に着いた。奥にはキングドラゴンがいる。周りには勇者の死体だらけだ。
「チャッピーさんやばそうですよ」
リドはブルブル震えていた。
「お前が土下座したら助かるかもな」
とピーコがささやいた。
「やっちゃうよ」
とチャッピーが言うと右手でパンチをズドン。
キングドラゴンは一発で倒された。
「あ、下に杖がある」
ピーコがサッと飛び降りて、杖をくわえると急に七色の光に包まれた。
「あわわわわ。あれ、意識が……」
ピーコの意識が遠のき、眠りにつく。
3分後ぐらいに光が収まった。
「あれれれ。誰、あなた」
リドが驚いた表情でわめく。
「えっ、ごくつぶし、うるさいわね。あれ、手、あれ、足、戻ってる。やった、やった、やったー」
ピーコは元の人間に戻った。
「ねぇ、チャッピー、元に戻ったよ」
「よかったね」
チャッピーは不機嫌だ。もうこれでピーコをいじめられなくなったのだ。
「わわわ、あなたピーコさん? 私リドです。よろしくお願いします」
リドはまた土下座していた。
「お顔を上げなさい。役立たず戦士」
「すみません。ピーコ様」
「で、この杖、何ができるの? ええい、火よ出ろ」
ピーコが杖を振り回すと火が出た。
「嘘、出るんだ。それなら水出ろ。あ出た。よし、コーラ出ろ。嘘、出る。何でも出るんだ」
「すみません、魔法の杖みたいです」
とリドが言った。
「わかってるわよ」
洞窟の奥に池があってそこにゴールドスワンがいた。
「よし、火の槍」
とピーコが言うと火の槍が飛んで行ってゴールドスワンを倒した。
「リド、その金の塊りを持って帰りなさい」
「はい。わかりました。ピーコ様」
「よし、チャッピー帰ろう」
3人は洞窟から村に帰って行った。ホテルに着くとピーコが
「あのさぁ、リド、私人間に戻ったからもういいよ。自由にやって」
「師匠、そんなことを言わずに私を弟子に」
「ええっ、どうしようかな。地理に詳しい?」
「詳しいです。詳しいです」
「余計なこと言わない? いびきうるさいから部屋別でいい」
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあ、荷物持ちにしてあげる」
「ありがとうございます、ピーコ様」
「あ、私、本当の名前は日和だから。ひ・よ・り」
「わかりました、日和様」
とりあえず、リドをあらためて仲間にした。戦士と言うよりも荷物持ちだ。ゴールドスワンは35万ゴールドで売れた。日本円にして1億以上だ。ホテルはスートルームを取っている。お金は8000万円の指輪を買って付けている。お金は持っていても用がないし、指輪なら売れるからという日和の考えだ。
「ねえ、チャッピー、どうする。これから」
「犬に相談しないで」
「嫌な時だけ犬なんだから」
「じゃあワンと鳴け。バウと言え。あ、リドって馬になれるかしら。魔法の杖で、馬になれ」
日和がリドに魔法をかけると馬になった。
「わー。これに乗ればいいわ。リドちゃん可愛い。じゃあ元にもどしてあげよう」
「あ、戻った。何をするんですか。馬にするなんて」
「あなたは明日から馬よ。これなら役に立つわ」
「ええ、馬ですか」
「ええ、私とチョッピーを乗せて走って」
「ううう、お役に立てられるなら」
翌日、日和はリドに魔法をかけて馬にした。
「これなら楽に移動できるわ。バカも体力だけはあるし」
チャッピーと日和は馬に乗って、次の村を目指した。その近くには魔王退治に役立つ剣があるらしい。
ポッカポッカ。牧歌的な風景が続く。
「魔物たまにしかいないね」
「うん」
と言うが実は魔物はまぁまぁの確率で出てくる。
日和が杖を少し振るだけで退治できるのだ。
「明日には着くかなぁ」
「日和、リドなんか臭い」
「うん、馬ねぇ。さっきフンしたし。気にしないのかしら。人参生で食べるし。完全に馬ね」
「今日、よく洗ってね」
「言っとく」
リドはそれが耳に入ったのか入らなかったのか、陽気にポッカポッカ歩いていた。
途中、山の上の小屋に着く。
「ここで泊まる。人は住んでなさそう」
と日和が扉を開けると
「誰、鬼? 殺しにきたの」
と声がした。
「すみみません。人間です」
と日和が言うと
「何だ。よかった」
と声が聞こえた。
近寄って見てみると女性だ。
「あれ、この服、知ってる。あ、港南造形高校の制服」
「知ってるんですか」
「私、住之江区民よ」
「え、どこですか」
「友愛会病院の裏」
「嘘、私、新北島よ」
「天天有ってラーメン屋ある?」
「その裏よ」
「なんだ。同じ住之江区民か。でも、うれしい」
「私も」
抱き合う二人。それを見たリドが
「何が同じなんだ」
「住んでたところが近くらしい」
とチャッピー。
「へー。どこの村」
「うーん。こことは違う異世界」
「えー、異世界」
とリドは驚いた。