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「ということで、父上、アリアドネ様と結婚することになりました。」


ここはヒルデスト侯爵家。久しぶりに家族が揃っている。いや…ユーリが父、母、兄、弟を集めた。と言ったほうがいいかもしれない。

彼は家族にリアとのことを報告した。


「お前!あれほど変な気を起こすなと言っただろ!?」

「旦那様、落ち着いてくださいませ。」

「父上、これはデューク皇太子殿下も望まれたことです。」


反応は様々だ。


「父上、ヒルデスト家を勘当していただいても構いません。

私はアリアドネ様を護るために、これから精進していくと決めたのです。

幸いにして、爵位もありデューク様にもご納得いただいていますから。」

「勘当などせん。お前は私の大事な息子だ。

だがな、我が国の王女の誘いは断って、帝国の皇女殿下を娶るとなると…。」

「国王陛下並びに王妃陛下、王太子殿下たちにはご納得いただいております。」


カイルが父親を説得にかかる。


「王女殿下の説得には王族の皆様がしてくださることになっております。また、デューク皇太子殿下から王女殿下がご納得されましたら他国との縁談を取り持つと言質をいただいております。」

「そうか…。ならば、私から言うことはあるまい。

ユーリクス、おめでとう。」


父親は祝福した。


「父上、ありがとうございます。」

「ふふ。アリアドネ皇女様が娘になるのね。

ユーリクス、おめでとう。」

「母上、ありがとうございます。」

「帝国への出立は明後日よね?それまでにアリアドネ皇女様に謁見できるかしら?」


母親はノリノリである。


「明日にでもアリアドネ様にお伺いしておきます。」



* * *



「アリアドネ皇女殿下にご挨拶申し上げます。

私、王国にて侯爵位を賜っておりますヒルデスト家当主ウォルターと申します。こちらが妻のエレインにございます。此度は我が家へのお越し恐悦至極に存じます。」

「はじめまして、ヒルデスト侯爵、侯爵夫人。急なのにも関わらず、お招きありがとう。」


ユーリがリアに都合を確認すると、ラーナがすかさず「本日の午後は空いております!」と言ってきたので、ヒルデスト家は急いでリアを招き入れる準備をしたのだった。


「アリアドネ様、こちらへ。」

「ありがとう、ユーリクス。」


ユーリのエスコートでヒルデスト家内を進んで行くリア。


「ねえユーリ、どうかしたの?険しい顔してるわよ…」


ユーリはそんなつもりはなかったのだが、リアにはちょっとした変化が分かるらしい。

周りに聞こえないようにユーリに問いかけた。


「申し訳ございません。少し気になることがありまして。ですが、リアが心配するようなことは何一つありません。俺に任せてください。

それよりも、母上があなたと話せるのを楽しみにしておりましたので、時間の許す限りお付き合いいただければと思います。」

「ふふ、わかったわ。」


サロンにリアを案内したユーリは「少し席を外します。」と父親に視線を向けてからサロンを出た。


「このヒルデスト家に入り込むとは()()()()なのか…?」


ユーリは戦場で見せるような表情へと変わり、気配を消して屋敷内のとある場所へ向かった。


「おい。」


それは凡そ()に向ける声ではない冷酷なものだった。


「貴様、我が家で何をしているんだ…?」

「ちっ!」


その人物は逃げようとするが、すでにユーリのテリトリー内だった。


「我が家が()()()()()()()の分際で逃げるのか?」

「黙れ!」

「俺のリアを狙っておいて黙れだと?」


ユーリは短剣を男の喉元に刺さる手前で止める。


「誰の指示だ?」

「答えると思うか…?」

「どうだろうな?だが、王宮でも何人もリアを狙った刺客を放っておきながら、国際問題になっていないのは何でだと思う?」

「…」

「皇太子殿下が()()()()は問題ないと判断しているからだ。

お前たちに指示を出した人物は、既に殿下の手の内だ。」

「……皇妃…陛下だ…」

「だよな。

さて、お前にはどちらが上でどちらが下なのか、お前が本当に仕えるべき人物が誰なのかを教えてやるよ。」


そういうとユーリは副長でもあるコイルを呼び出して刺客を連れて行ってもらう。


「コイル、後は頼む。」

「了解です。あっ、ユーリクス、婚約おめでとう!」

「ふっ。さっさと仕事をしろ。」

「へいへい。」


コイルは刺客を連れて王宮へと戻っていった。


「さて、皇妃には我が家へ喧嘩を売ったことを後悔させてやなければならないな。」


不敵な笑みを浮かべたユーリはリアの元へ戻った。



「アリアドネ様、これがユーリの小さい頃の肖像画ですわ。ふふ。」


ユーリがサロンへ戻ると彼の母親がリアに小さい頃の話をしていた。


「申し訳ありません、戻りました。」

「ユーリは小さな頃から頑張っていたのね?」

「母上、アリアドネ様に何を…?」

「子供の頃の話をアリアドネ様が聞きたがったいらっしゃったから。」

「はあ…。リア、聞いていて楽しかったですか?」


ユーリは当たり前のようにリアを膝の上に乗せてた。


「ちょっと!ユーリ!家族の前よ!?」

「デューク様の前でもしたのですから、かわりませんよ?」

「もうっ!」

「リアが母上と仲良くなったのに嫉妬した。ということにしておいてください。」

「何それ。ふふ、可笑しい!」


涼しい顔をしたユーリに対して真っ赤な顔でも笑顔を見せるリア。

それを見つめるヒルデスト家の面々。


「ユーリクス坊ちゃんが…他人を甘やかしておられる…」

「ああ!こんな光景を見られる日がくるだなんて!」

「」


古参の執事や侍女たちは恋愛に興味がなかったユーリの変化に喜んでいたのは言うまでもない。

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