大魔王降臨
「因みに皆自分が入りたい部活ってあるの?」
今さらなのだが俺以外の三人とも一年前までイギリス在住だったイギリス人である。日本語が堪能なのは親族に日本人がいるがゆえだった。
シンプルな話、この高校が海外の学校を意識しようとも日本国内に存在するためにどうしても日本準拠にならざるないといけない部分はどうしても出てくる。部活動では試合の日程や基準、果ては海外では当たり前な部活がなく、海外にはない部活が当たり前に存在する。
特に文化部ではその部分が顕著に出てくる。
茶道部なんかはいい例ではないだろうか。ましてや今回は部活動勧誘期間、立ち振る舞いに関して戸惑うことはあるのではないだろうかと思う。
「私はマンケンという部活が気になります」
「私は特にはないですけど文化系と運動系一個づつ掛け持ちできるとうれしいです」
「俺は運動系をメインに考えてる。気に入ったのがあれば文化系も入りたい」
三者三様の希望がでた。因みに誰がどれを言ったのかは言わずとも分かる。
「そういう竜司はどうなんだよ」
「僕は特に考えてない。できれば運動部もどうかなって思うけど」
一応忘れられてはいるのだが、僕の一番の目的は脱ヲタ。一般的な高校生活を送ることが目的なのだ。
「それじゃあ、適当に見て回ろうか」
僕の提案を了承した三人と放課後の校内に打って出た。
想像していた以上に部活動勧誘は白熱していた。
部活動の入部に関してはいつでも入部してもいいのだが入学直後というのは日本では定番。もっと言うと5月ごろに各部活で新入生入部の腕試しに近い試合が開催される。これはこの学校に限ったことではなく全国的な流れである。
だからこそどこの部も入学直後の四月に入部合戦となる。
「竜司はこの学校の部活の特徴って知っている?」
そう尋ねてきたのは桜さん。
「一応表面的には」
三人の案内役的なことを買って出た俺だが特別に詳しいわけではない。けれども地元から少し離れた特徴的な学校だけありある程度は知っていた。
「ここの学校は系列の大学と提携しているだけあって部活動でも大学との交流が強いんだよ、だから運動部は全般的に強いよ」
「へえ、そりゃあ楽しみだ」
「だからって文化部が決して弱いってことはない。大学と連携が取れる文化部は大きな功績を残してるし、それ以外の部でも活動資金が豊富だからかなり活発に活動しているらしいよ」
「それは楽しみです。コミケ行ってみたいです」
「竜司結構詳しいね」
「同じ県内に住んでるのもあるけどやっぱり入学する学校のことはついつい調べるんだよ」
「それで」
そんなこんなで最初に向かうことになったのは運動部。遠くから攻めていくことになったのだ。
最初に見に来た部活動はサッカー部。中庭に設置された先輩たちのブースに案内をお願いしてもよかったのだがそうなると今度は拘束時間が長くなることが予想できたので自分たちで見に来たのだ。
なぜサッカー部だったかというと三人揃っての強い要望。まあイギリス人と言えばサッカーというのは定番ではある。興味があるかどうかはさておき三人が熱狂して見に来たのは間違いない。
さらに言えば見学だけでは飽き足らず体験で先輩たちと4対4を実施した結果、三年の先輩たちをボッコボッコにしたのは申し訳なかった。因みに俺はほとんど役に立たなかった。
これで三人が興味を示したかというとそうでもなくむしろ若干失望していた。
その後もいくつかの運動部を覗き見て参加しては先輩をボッコボッコにしては勧誘を何とか断って次へ向かうことを繰り返していた。特にひどかったのは合気道部。悠馬と桜さんは幼少期にしていたこともありその話だけで勧誘を受けて体験してみたのだが、今年のインハイで県内優勝を目される部長を瞬殺。特に桜さんに至っては部長が可哀そうになるほどに相手になっていなかった。
その結果、運動部全域で道場破りの一年生四人組がいると噂になった。
それがいい方向に転がった訳でも悪い方向に転がったわけでもない。ただ勧誘がより激しくなったという一点においては悪い方向に転がった。
「思ったより手ごたえないわね」
こういったのは桜さん。
「決して日本の部活動がしょぼいって意味じゃないから」
「大丈夫、分かってるから」
多分この高校が決してレベルが低いのではないどちらかというとレベルは高い部類に属する。けれども三人が異常すぎるのだ。
運動部も一通り見てしまった我々は次どうするのかという話になったのだがそこで部活動勧誘の時間がきてしまった。
明日も部活動勧誘は実施されるので文化系は明日に回すことになった。