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俺のラブコメどこ行った  作者: 如月 羽藺葉
18/22

悪女?

 朝のHRホームルームが終了し一時間目とのわずかな時間。俺は机の上に突っ伏していた。

 「お疲れ様」

 と同情気味に桜さんが近づいてくる。

 事情を知るというか今日の朝起きたことをシャルが嬉々として話をしていたらしい。

 返事をする元気もない俺は手だけを上げる。雑な反応に本気で同情してくれていた桜さんは不愉快な反応はしなかった。

 出来ることならこのまま寝てしまいたいが十分後には授業が始まる。嫌々ながらに顔を上げて授業の準備を始める。

 「うらやましい」

 と今度は前の席から声がかかる。

 「できることなら変わってやりたいよ」

 シャルが近くにいないから呟いたのだろうがこのセリフには一切の同情ができなかった。

 これだけハジケリストなシャルを知ってもなお恋心がぶれないのだから大したものだ。その部分は尊敬に値する。

 悠馬が一目ぼれしたキャラとは中身は似ても似つかないのだがどうやらそんなことは二の次らしい。

 「それよりも人の家を勝手に教えるな」

 と彼を責める。シャルの奇行を朝からくらった原因を責める。

 流石に個人情報を勝手に漏らしたことに関しては良くないと思いいたったようで素直に反省する。

 「ごめん」

 「次からはこんなことするなよ。特にシャルには」

 「分かった」

 素直に反省したので不問にする。

 シャルや桜さんにも共通することだがどうにも素直な傾向にある。

 「何か失礼なこと考えてない?」

 「いや、失礼なことは考えてないよ。ただ三人とも素直というか分かりやすいなって」

 「失礼なことじゃん」

 と少し頬を膨らませる桜さん。けれども気を悪くしたわけではなかった。

 言葉を選びながら三人が分かりやすいことを説明する。

 「それは竜司が日本人だからだよ」

 これは正確な表現ではない。日本人か否かという話でいえば三人とも日本人の血を引いている。国籍は言うまでもなくイギリスだが血統主義を採用している日本からすれば日本国籍も取得しようと思えば取得できる彼女らだ。

 この場合彼女のいう日本人というのは日本で生まれて日本で育った人間のことを指す。日本人にはあまりない考え方である。けれども彼女の言わんとすることは理解できる。

 「日本人は理由にはなってないような気もするけどな」

 「やっぱり日本人はなんだっけ?二枚舌だっけ、本音と建て前が使い分けるのが上手いだっけ?」

 「その表現の方が失礼だけどな、でもまあ言ってる意味は分かる」

 日本人の人の機微を察知する能力の高さを言ってるのだと理解できる。

 そんな話をネットではよく見かけるが正直眉唾物だと思っていた。

 ただこうして彼女の言うところの日本人以外からこうして言われると認めざるを得ない。

 「それでもシャルはことさら分かりやすいよね。そこが可愛いんだけど」

 「分かる」

 悠馬が盛大に同意する。

 「何々、私がなんだって」

 話をほとんど聞いていなかったシャルが自分の名前に反応し会話に参加してくる。

 「シャルは表情豊かで可愛いねって話」

 桜さんが上手く誤魔化す。

 「えへへ、そう?」

 照れるシャル。シャルに関して言えばわかりやすいのもそうだが騙されやすいのも付け加えざるを得ない。そのうち誰かに騙されそうで怖い。

 既に桜さんに騙されている。

 シャル自体が騙されやすいのもあるにはあるのだろうが桜さんもかなり二枚舌が上手い気配がする。悪女の素質があるという方が正しいのかもしれない。

 考えていることがばれたのか、それとも見つめていたのかがバレたのかは分からないが桜さんと目が合う。

 少し驚いた顔をした桜さんは年齢に対して不相応ともいえる妖艶な笑みを浮かべる。その笑顔に不覚にもドキッとさせられる。俺自身も今のは表情に出ていたように思う。

 それを見た桜さんはクスクスと笑う。俺は不意に恥ずかしくなる。

 やっぱり桜さんは悪女の素質があると思う。

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