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俺のラブコメどこ行った  作者: 如月 羽藺葉
17/22

嫌な予感

 「シャル!なんでここにいるんだよ」

 そう何故か俺の自宅の前にシャルが立っていた。

 通学の関係上シャルの通学路の途中に俺の家はある。けれども学校までの最短ルートからは少し外れている。自転車で通学しているシャルからすれば時間に余裕があればこの程度の寄り道は許容範囲内だった。

 とはいえわざわざ俺の家による理由は特になかったはずだった。話の流れで家の位置は大まかには話したが細かな部分については話したことはなかった。つまりシャルは俺の家を知っているはずはなかった。第一声の言葉そういった事情から放たれたものだった。

 「こういうのやってみたかったんです」

 シャルは自分がこの場にいる理由をふんわりと話した。知り合って一か月も経ちようやくわかったのだが決して煙に巻かれているわけではない。ただ言葉が足りないのだ。本人のトンチキともいえる行動の大本には日本のサブカルチャー鉄板を実践したいという憧れに近いものがあった。日本人のヲタクであれば鉄板展開は内心幻想であることは理解している節がある。ところが日本文化というよりも日本の習慣に近しいものに理解の浅いシャルは幻想と現実の境目が少しついていない。

 結果、思いつくままにしてみたい鉄板的展開を実践しては周囲に諫められ改めるというのを繰り返している。中には気に入った上で周囲もこの程度ならいいだろうと許容している行動もいくつか続いている。

 ただ今回のは初めてのパターンだった。

 展開から予測するには幼馴染が朝迎えに来るタイプのものだろう。

 「それよりも、なんで俺の家を知ってる?」

 「悠馬に聞きました」

 「プライバシー!」

 「スパシーバ?」

 「なんで感謝するんだよ」

 心の中で悠馬を一度締めることに決めた瞬間だった。

 逆に言えば俺の家を知る手段はそこしかなかった。プライバシーを侵した当の本人は面白そうに一人笑っていた。

 好奇心に身を任せて行動した状態のシャルに何を言っても無駄だということはこの一か月で理解したことの一つだった。

 「はあ、しかたねえ。学校行くぞ」

 「はーい」

 いつまでもそんな掛け合いをしていても仕方がないので、早々に諦めて登校を促すことにした。

 ただ俺は一つ厄介なことを忘れていた。

 ガチャという音が背後から聞こえるのと同時に「行ってきまーす」という声まで聞こえた。

 しまったと思った時には既に手遅れで背後に煩くなりそうな気配が漂っていた。

 「お兄ちゃん、その人知り合い?」

 スルーしてほしい時に限って食いついてくる妹は目ざとくシャルに食いついた。

 「クラスメイトのシャルロットです。よろしく」

 これまた楽しそうにシャルは笑顔で挨拶する。

 少しポカンとした妹は俺の方を向きながら「この人って」とつぶやく。

 「そうだよ、さっき話してたシャル」

 そこからは想像通り、妹はシャルに詰め寄り怒涛の如く質問を繰り返す。シャルの自由奔放ぶりに頭を抱えていたが、妹の初対面に対する遠慮のなさに少し頭痛を感じ始めていた。

 シャルの表情をうかがうに迷惑そうな表情はしていなかった。それどころか少し危険な表情を浮かべていた。シャルは所謂、腐女子というやつだがそれはあくまで本人が外から観察する趣味だ。本人の嗜好の部分に焦点を当てればどちらかというとショタコンやロリコンに近い嗜好を持っていた。もちろん危険性があれば静止している。

 今のところは街中ですれ違う少年や幼女を目で追いかける程度でしかない。それでもかなりギリギリのラインなのだが危険性は感じなかった。

 妹は年齢に対して幼い見た目をしている。もっと言えば体系も幼い。家にいるときやプライベートで出かけるときは化粧や服装で年相応もしくは少し年齢を高く見せていた。ただ今は登校するために家から出てきたところだ。恰好は制服で見た目年齢を引き上げるような化粧は施しておらず、見た目は今年中学に上がりたての二カ月前まではランドセルを背負っていた女の子に見えたに違いない。

 妹も身内びいきなのを差し引いてもそこそこに美少女と称して問題はない見た目だ。それも要素の一つだったのだろう。シャルのストライクゾーンに入っていたのだ。

 その結果、自宅から通学路の途中まででずいぶんと仲良くなっていた。道を分かれるタイミングで兄よりもシャルの名前を呼ぶほどに。

 「いいですね、妹」

 「やらねえよ」

 決してシスコンというわけではなくシャルの危険な嗜好に妹を巻き込む危険性を考えてのことだった。

 そこからシャルの妹となんとか近づこうとする猛攻を交わしながら登校する。元々余裕をもって家を出たのだが予想外の出来事をシャルがことごとくするせいで通学路の最後の方は猛ダッシュでかけることになった。因みにシャルは時間が厳しくなった途端に自転車で先に一人走り去っていった。

 俺は締める相手を一人追加した。

 


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