方向性って崩壊と同義ですよね
「方向性ってやつですか?」
「そう、方向性ってやつ」
「要するにこれから俺たちがどうするかっていう話、ですか?」
「そういうこと悠馬君」
「私たちも二次研としての役割的なことね」
部長から提案されたのは俺たちが二次研に所属する上での義務。ルールでもある。
「竜司君は覚えている?二次研のルール。」
「サブカルであればジャンル不問の年二回のコミケ出店か、文化祭出展、三カ月に一回の部誌への参加。のどれかを最低年一回の参加。公共の秩序に反しない範囲で、でしたっけ?」
「そうそう、他の三人は把握おk?」
「雛子先輩に聞きました」
「なら大丈夫だね。せっかくだしもうちょっと詳しく説明するね」
まず選択肢の一つのコミケ参加。二次研自体でサークルが一つ存在していてそこで作成される作品創作に参加するか、自分たちで何かを作って二次研のサークルで出店。もしくはサークル運営に関わる。もしくは自分たちでサークルを立ち上げて参加する。どれでもいいとのこと。因みに参加には部活で補助金が出るとのこと。因みに姫島先輩は二次研のサークルと自分のサークルとR18サークルの三つ掛け持ちしているらしい。
次に文化祭の出展。これは運営にのみの参加は許可されていなく何かしらの作品を自分たちで作成しなければいけないらしい。こちらはコミケ以上のジャンルの多さで、自主製作映画、同人誌、イラスト、写真集と学校の検閲に引っかかりさえしなければなんでもありとのこと。因むと姫島先輩はこれにも何かしらの形で参加しているようで、こっちは時々で参加の仕方は変えているらしい。これの資金も主に部費から出るとのこと。
最後に部誌への参加は作成スパンが短いせいで基本的にはジャンルが縛られているらしく、小説、イラスト、漫画、等々の短くても数ページから長くても十数ページ程度の紙媒体に記載できる何かに限定されるらしい。もちろんこれも部費が出るらしい。部費出すぎでしょ。さらに因むと姫島先輩はこれにも参加しているらしい。参加しすぎでしょう。
コミケのR18サークルは部活動に認められていないので完全な趣味とのこと。活動しすぎ。常に締め切りに追われているらしい。
「というわけで皆何をする?」
そう言った部長自身は年二回コミケに参加し基本的には運営、夏か冬のどちらかにコスプレ写真集販売と文化祭の運営、部誌の作成補助。が基本スタイルとのこと。
「ハイ、音楽。音楽は?」
そう元気よくシャルが聞く。
「あるよ。音楽のジャンルも基本的に不問だよ」
「私はやっぱりロック」
「シャル、ロック弾けるの?ジャンルは?」
「クラシックロックとかガレージロックがメインよ」
「かっけえな、な竜司」
「そうだな、シャルが引けるとは」
「ふふふ、私も弾けるよ。メインはポストロックだけど」
「桜さんも」
「それは知ってた」
軽音楽部でもよかったのではないのか彼女らは。
「悠馬、アンタもできるでしょ。」
「えっと、一応ドラムの基本だけ」
「なんで三人ともロックミュージック」
「「「そんなもんイギリス人だからよ」」」
三人に言われるまですっかりと忘れていたがロックと言えばイギリス、イギリスと言えばロックというぐらいにはイギリスとロックは切っても切り離せない関係だったのを思い出した。かの有名なビートルズもイギリス出身のロックバンドだった。
「音楽系で行くならコミケか文化祭だね、因みに竜司君は何か音楽系はできないの?」
「音楽はからっきしです」
「そっかぁ」
「あの俺、ドラムよりもプログラミングの方が得意です。あとは動画とか音楽編集とか」
「悠馬、そんな特技あったのか」
「向こうにいるときに友達のバンドの手伝いでな少し勉強したんだ」
何か、何かこの四人でできそうな気がする。先輩はそれぞれで活動もしくは先輩たちのグループに参加でもいいと言ってくれてるけれど、どうせするのならこの四人で何かしたい。
「竜司、何かできるんでしょ。隠してないで言ってみて」
「シャル、なんでそう思うんだ?」
「だって私たち三人よりもヲタクなはずのアナタがこの部活で活躍できるスキルを私たちよりも持っていないなんてありえない。そう私の直観が言ってるの」
「何か隠してるなら今のうちに話して欲しいな」
「桜さんまで、でも俺のができることと合わせても何ができるか」
「いいから言ってみろって、言ってから考えようぜ」
三人にここまで言われて言わないのはカッコ悪い。多分きっと彼ら風に言うのならロックじゃない。今まで人に言ったことの無かった自分の趣味を明かす。本当のことを言うと高校に入るときにやめると決めていた趣味の一つ。まさか一か月も経たないうちにそれを解禁してしまうことになるとは思ってもみなかった。
「小説、小説が書ける」
「まじで」
「すごいじゃん」
「それは誇っていいよ」
「そんなすごいレベルじゃない」
「竜司君がそれができるなら、あと一人であれができるね」
「アレですか?」
「そう、それは「ゲームっすね」
部長の発言を奪い去るかのようにいつの間にか背後に立っていた姫島先輩が答えを言う。
「ヒメッコ、いいとこ取らないでよ」
「ヒメッコ言うなです。大体もったいぶるところじゃないっスよ」
「姫島先輩、ゲームですか?」
「そう、ゲーム。ストーリーを書けるやつがいて、音楽を作れるやつがいて、プログラムを組めるやつがいる。全部簡単じゃないし良いやつができるとも限らない。でもあと絵が描けるやつがいればゲームが作れるっス。」
「でも絵が描ける人がいないです」
「いるっスよ、ここに。私っす」
「ゲームいいですね、やりましょう」
「タッキー先輩良いっスよねしても」
「いいよ、でもヒメッコ他のは活動はいいのか?」
「なんとかするっス。ヲタクたるものやりたいと思った時にやんないとダメっスから」
ヲタクたるものやりたい時にやらないと、その言葉はどこか自分が自分にかけていた呪いのような枷を外してくれる一言だった。
「姫島先輩、ゲーム作りましょう」
「もちろんっす」
こうして方向性が決まったのである。