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俺のラブコメどこ行った  作者: 如月 羽藺葉
11/22

その姿、不沈艦

 山登りイベントが無事に終了し週明けの月曜日。

 登校途中の電車内で偶然見かけた雛子先輩は座りながらかばんを抱えて朝っぱらから熟睡していた。どうやら山登りの疲れが取れていないらしい。実際山を下りた後は死にかけの表情をしていた。後輩にいい姿を見せるために登りはかなり無茶していたようだ。山を下った後は二度と山になんか登らないと後悔していた。一緒に帰った部長は普段運動もしていないのにこんなことをするからとあきれられていた。

 そんな状態の先輩に声を掛けるか迷っていると隣に座っていた部長と目が合い口元に人差し指をあて静にしててという合図を受けたので電車内で声を掛けるのはやめた。

 道中に悠馬と合流。一駅移動して桜さんと合流した。桜さんも電車通学だったようで時間もちょうど同じくらいだった。

 「これはメンバー固定だな」

 そう呟いたのも特に意味なかった。

 「桜、お前時間か車両ずらせ」

 「お断りします。そういう自分が変えたらどう?」

 そう特に意味もなかったのだが休戦協定を結んだとはいえ未だに冷戦状態の二人には何がきっかけで喧嘩を始めるのか分からない。

 ただその喧嘩を止めるのもめんどくさい。この二人の喧嘩を止めることができるのはシャルだけで、その当人は自転車通学をしていた。

 駅から学校への途中。前方を歩く先輩たちに声を掛ける。

 「先輩おはようございます。」

 「「おはよう、、、ございます」」

 どうにも悠馬と桜さんは日本語の敬語が少しばかり苦手というかまだ習得できていないようで少し戸惑いながら挨拶をしていた。

 「「おはよう」」

 そんな事情を知っている先輩二人は表情を変えずに返事を返す。

 東堂先輩はさっきまでの爆睡状態を感じさせないような立ち振る舞いをしていた。

 その姿に少し笑みがこぼれる。

 

 「遅刻、遅刻、遅刻ーーーー」

 先輩たちと和やかに談笑しながら学校への道を歩く道中。左側の車道を猛スピードでかけていく姿があった。流れるように波打つ美しい金髪。と本人の目と同じような綺麗な青色をしたロードバイクが自転車で出せるギリギリの速度でかけていく。長い肢体と均整の取れたプロポーションから繰り出されるその速度は周囲を走る自動車に負けないスピードだった。

 因みに学校まで残り200mほどの距離で始業開始まで40分ほど残しての出来事だった。

 周りのザワザワした空気にその瞬間だけは突如と奇行に走るシャルとは他人のふりをした。


 教室に着くと既に何人かは到着し雑談をしていた。シャルも例外ではなく自分の席に座りながらトーストした食パンをモソモソと食べていた。

 少しばかりしょんぼりとしているのは多分登校時に校門で先生に怒られたからだからだと思う。100m後ろを歩いていた俺達にまでその怒号が聞こえるほど怒られていた。

 「朝から何してるんだよシャル」

 意味不明な行動を取ったシャルにその理由を問う。

 「日本の定番でしょ?」

 まるで日本人は人生で一度はその行動をすると言わんばかりに答える。

 「いや、しねーだろ」

 「聞いたことないわよ」

 悠馬と桜さんはそういう。二人とも片方の親が日本人とはいえ日本で生まれ育っていない二人は少し自信なさそうに呟く。その状況はシャルも同じなのだが流石にそこには二人の方が常識があった。

 「日本人でもそんなことはしません」

 両親ともに日本人で日本生まれに日本育ちの俺がそう断言する。

 嘘だ。というようにシャルはイエティでも見つけたかのようなショックを受ける。

 「だってどの漫画でもそうやって物語が始まるじゃない」

 「それは二次元の創作物限定だ」

 シャルの誤解した常識を断言によって破壊する。

 「はぅぁ」といううめき声とともに蹲るシャル。

 「そういうところも可愛いんだけどね」と桜さん。

 「だいたい、あんなスピードで曲がり角ぶつかってみろ事故だろ」

 「つまり走ればOKなのね」

 「ダメだ、するな」

 結局朝のHRまで拗ねていたシャルだったが担任からも説教を受けてさらに機嫌を悪くしたのは言うまでもない。

 そんな状態でも美人というのは魅力的に映るらしく悠馬はひたすらに見とれていた。


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