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俺のラブコメどこ行った  作者: 如月 羽藺葉
10/22

女子高生と山の景色

 かくして、学内の全運動部が恐怖しながらも入部を切望していた魔王sは二次元研究会という運動部に一ミリも関係のない部活に入部した。

 「なのになんでだーーーーーーーーー?」

 そう叫んだ俺の叫び声は近くの山に跳ね返りやまびことして自分の元へと帰ってきた。

 入部勧誘期間を挟んだ週末。俺は二次元研究会の面々とともに何故か地元の山に登っていた。

 文化部の特徴と言えば建物内で活動を行うためにそのほとんどがまともな運動は体育だけという学生生活を送るのが学生の常である。「吹奏楽部とかいう一部の文化部は除く」という注釈がつくが基本的には間違ってはいない。にもかかわらず俺は今山を登っている。そこに山があるからというようなふざけた理由ではない。そもそもで日本国内で山が見えない場所を探す方が困難だ。というよりも山を登っている理由を教えてもらっていない。

 今回の登山の企画者が先輩たちだけあってそれほど大きな声で問いただすのはためらわれる。

 決して運動が苦手なわけではない。むしろ得意な方である。どのスポーツも平均よりも少し上手いくらいのレベルには簡単に到達できるくらいには運動が得意だ。最近知り合った友人たちが少しばかり規格外の運動能力を誇っている。最近のソシャゲで言えば初期ステータスなのにSS数値になっているようなモンスターなだけだった。

 俺も今回の山がそこらへんのあるような標高300程度の山であれば散歩程度だと思ったがそうではなかった。こともあろうか最高標高が800を超える山に連れ出されたのだ。

 一応運動ができる格好と靴。水筒を一本は持ってきていた。正直年齢が年齢なら大問題に等しい。これは俺が現役の高校生だからこそこの程度で済んでいるが後期高齢者の最近の趣味は登山です。というタイプのご老人なら一発で病院行き案件になりかねない。

 「なんで俺は今山に登っているんだ」

 少しというか言葉の半分くらいを恨みを込めた独り言は先輩に拾われてしまった。

 「説明してなかったっけ?」

 「少なくとも俺はしてもらってないです」

 因みに今日の活動については聞いていた。ただ中身は後日教えると言われて入部初日はそのまま解散した。多分活動内容については急遽決まったという感じだった。

 ただ不思議なのは俺が予定を聞いたのはシャルからだという部分だ。連絡先といってもラインの交換なのだが、先輩ともしていた。ただし部長とだけ。副部長の方はずっと他の三人の案内や勧誘に勤しんでいたために交換する暇もなかったことを覚えている。

 「実はね、、、、」

 部長曰く、今期のアニメに登山関係のアニメがあってそのアニメ内で今登っている山が登場したのでぜひ行ってみようという話になったらしい。具体的にはそのアニメが大好きな副部長の提案という名の圧力によって決まったらしい。

 アニメには年一回ほどアウトドア系のアニメがヒットする傾向にある。筋トレアニメであったりキャンプ系アニメであったりとその影響でヲタクたちは新しく趣味を始める傾向にあるのだが、特にこだわりの強い人間が多いヲタクたちだ。極めるまくった結果、そこらへんに転がる陽キャやパリピ、ウェイ系人間なんかよりも健康的になる傾向が強い。というか多分陽キャの方が不健康。

 兎にも角にも影響されやすいヲタクの性でこうして山登りにきているというわけだった。

 シャルから連絡がきたという理由が判明したのだが、部長曰く僕が提案受けたのが金曜日の夜なんだよねとのこと。俺がシャルから連絡を受けたのが木曜日の朝。あからさまに順番がおかしい。

 可能性一 副部長が連絡を忘れていた。

 可能性二 副部長が根回しで一年に先に連絡をしていた

 どちらの可能性にしても黒幕は副部長だ。

 道中そんなことを考えながら最後尾でギリギリになりながらついて行った。

 山頂に到着し一息つきながら地面を見ていると視界にポカリスエットが差し込まれる。

 「ごめんね、いきなりこんなことに付き合わせて」

 副部長だった。部長から話を聞いたせいか本気で申し訳なさそうにしている。

 「いえ、運動不足気味なのでしんどさのあまり情緒不安定なだけです。大丈夫です」

 「そう、ならいいけど。魔王sなのに思っていたよりも体力無いのね」

 「俺は道場破りに一切の貢献はしていないですよ。全部アイツらがやったことです」

 「そうなんだ。でもまあどうせなら景色見なきゃ損だよ」

 そう言われて顔を上げてみる。

 展望エリアから見える景色はとてもきれいで。眼下に広がる街並みはまるでミニチュアの世界。街中の喧騒から少しばかり離れ美味しい空気と近い空と頬撫でる風は胸の内を充足していく。

 「悪くないですね」

 さっきまであんなことを言っていた手前意地をはって変な物言いになってしまったけれども、この景色の為に登るのは悪くないと思った。

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