順調な出だし
青春とは謳歌してこそ青春。
学生だからこそ許されるバカ騒ぎ、甘酸っぱい恋模様、汗と涙の部活動。その全てが青春である。そんな青春を送るための努力を俺は惜しまない。あの暗く苦しい中学3年間。あの3年間に戻りたくはない。その一心で俺は準備してきたんだ。
クラスのトップカーストになれるように
バカすぎぬよう、賢すぎぬようのほどほどの勉強をし
映える食べ物とスポットの情報を常に仕入れ
人気の女優俳優、アイドルを覚え
身だしなみに気をはらい
運動ができるように体を鍛え
最後に、ヲタクグッズのすべてを排除した。
そんなこんなで迎えた入学式。選んだ高校は自宅から電車で1時間、同じ中学からの進学者はゼロ。俺の印象の全てをリセットするためにこの高校を選んだのだ。入学式の前にホームルームがあるらしく、先に教室へと入る。教室は初登校とは思えないような賑わいを見せていた。どうやらここの学校は、地元からの進学者が多いようでグループができつつある。そんな彼らはこちらを一瞥し、すぐに会話に戻る。少しの居心地の悪さを覚えながら黒板に貼られた座席表を確認し、席に着く。初手の座席はかなり重要だ、そこで3年間の人間関係が確定する場合もある。と姉に聞いた。俺が最後尾なので後ろはいない、前は名前的には男子だったのだがまだ来ていないらしくどんなやつか分からない。左は地味目の男子、ずっとスマホをいじっているせいか話しかけづらい。右は幸運にも女子、それも美少女と言って申し分ない美少女。黒髪ロングの眼鏡系文学美少女。本読んでるので多分文学系、カバーついてて中身は分かんないけどな。内心で盛大にガッツポーズを掲げる。これで前の人物が妄想、いや期待通りなら完璧な布陣が完成する。
ホームルーム開始まで、ちょうど残り10分になったところで前の席の人物が到着する。名前の通り男子だった。
「飛鳥中学出身の高峰 悠馬だ。よろしく」
予想に反して先に声をかけてきたのは向こうからだ。ただ少し観察するとスポーツをやっているような部分が見つかる。いわゆる爽やかスポーツ少年。んん~中学時代なら間違いなく関わり合いにならない人種。
だが、
「紅葉中学出身の田川 竜司。よろしく。」
爽やかに握手にこたえる。クラスのトップカーストになるって決めたんだ。少しくらいの無理をしてでもこのキャラを突き通す。
「ここへの進学は一人か?」
会話を繋げることに成功、準備した甲斐があったというものよ。
「いや、一応同じ中学からは一人いる。」
「へぇ、そうなんだ。」
うんうん、順調に会話が進む。これこれ、うまいこといってるぞ。少し泣きそうになるな。
「それよりさ、このクラスの女子レベル高くないか?」
急に顔を寄せささやいてくる。おい、近い近い。え何?世間一般的にこれ標準なの?一般人デビュー1分だからわかりません。ただ、悠馬の言うことは分かる。先ほどの左隣の女子をはじめ、クラス内のあちらこちらにいる女子を見ればタイプはバラバラであるが、美少女と称して問題ないような女子がゴロゴロといる。
「いや、わかる。可愛いのが多いよな。」
と出会ったばかりの男子とコソコソと話しをする。
「ねえ」