エピローグ
イマジナリーフレンドと付き合うことは恐ろしいのか否か?
答えは恐ろしい一択だ。高校生になってもイマジナリーフレンドを見続けていた私が、イマジナリーフレンドを幽霊と誤認したまま付き合った結果、酷い目に遭った。
だけれど。
最高の相手を見つけることができたと思っている。
私はいつも通りに身支度をして、家を飛び出す。
「おはよう、夕子ちゃん」
「もうゆーちゃんでもいいって言ってるのに。おはよう、委員長!」
立つ姿は優等生。長い髪が風で靡き、人々を魅了する姿――委員長と言わずしてなんと言えばいいのか。
「あたしがその呼び方奪っちゃうと、ハルちゃんのポジション奪っちゃうのと同じになるからね。あんまり言いたくないのよ。ハルちゃんとは喋った中ではあるからね」
「え? そうなの?」
私の問いに答えるのは委員長ではない。
「そうだよ! 委員長とはそりゃあもう仲良さげも良さげの大親友!」
「*喋っただけで、大親友の仲ってわけじゃないだろ、ハッ!*」
鼻を鳴らし笑うのは私であって、私ではない。もう一人の『私』。
「何を~? 『ゆーこちゃん』でもそんな訂正はあたしの前では無効化だよ! 委員長とは最強最高大親友の仲なんだよ!!」
「*今は私の中にいないから会話できないってのに、大親友か?*」
「会話できなくても、委員長とは心の会話できるからいいもんねー!」
そのあと、しばらく『私』とハルは会話の応酬を続けていた。
委員長が話しかけてくる。
「二人は喧嘩してるの?」
「そうね、喧嘩してる。よく分かるわね?」
喧嘩をしてるなんて、イマジナリーフレンドが見えなければ分からないのに。
「実は……あたしもね、夕子ちゃんのイマジナリーフレンド、見え始めるようになったかもしれない」
「え!?」
「多分、夕子ちゃんが幽霊が見えるようになった逆パターンかな」
「本当に見えてるのよね?」
「うん、二人とも視えてる。これであたしも一緒に話せるね」
「まあ、普段は話さないほうがいいけどね、委員長の場合」
「うーん、別に話してもいいかなぁ。そういうのって多様性とか言っておけばどうにもなると思うよ?」
「……委員長ってけっこう行き当たりばったりが多いわよね」
今回の事件――試練というべきかもしれないけれど、あのときの委員長は行き当たりばったりな気がした。もしも私を壊してしまったらどうしてたんだろうとかあったけれど、まあ、ハッピーエンドだと思う。
私はハルと再び付き合うことができたし、誰もいなくなることがなかった。
これからも、辛いことがあるかもしれない。それでも、私はこれを超えることができる気がする。
私の回りには友達もいるし、恋人もいる。
季節は春から夏に移り変わっている。
春は出会いの季節、夏は恋が燃え上がる季節。
私とハルはこれからどうなるか分からないけれど、今回の試練で結ばれた絆は断ち切ることは無い。私は強くそう言える。
「それで今日集まったけどどうする? まだ何も予定決めてないよ?」
「そうね、また喫茶店に行きたいわね。今度はガールズトークでも」
「そうだね、あのときはちょっと事情が違ったからね。じゃあ行こうか」
「そうね。行くわよ、ハル」
「あ、はーい!」
『私』の魂はハルとの喧嘩をやめ、私の中に隠れる。
「ていうか! あたしまだゆーちゃんと二人きりでデートしてないんだけどお! いつになったらするの!!」
「……明日よ。言ったでしょ……? ポンコツなのかしら?」
「ポンっ……!? 彼女でしょ! ポンコツとか言わないでよ!」
「はぁ、仕方ないわね。……行くわよ」
「うん!」
私の手は、現実で――だけれど幻想で彼女の手とつながった。




