最終話 イマジナリーフレンドと付き合うことはハッピーエンドで終わるのか否か
「久しぶりだね、ハル」
鏡の中にいたのは、間違いなくハルだった。
姿形はさっきと変わってないけれど、別人格のようなハルではなく、限りなくハルに近いハル。
鏡の中に飛び込んだのは正解だった。試練が<鏡の間>というのがヒントに繋がった。
鏡の間――鏡の中に本当のハルがいて、そこで対話するのが今回の解答として最適解と思っていたけれど、どうやらその通りだった。やはり、この試験は私の考えの範疇を超えることは無い。
「待ってたよ、ゆーちゃん。――いや、待ってたかは自分でもよくわからない、かな」
珍しく、ハルが俯いている。
既に私の中では、現実と幻想の区別ができ、さらにはコントロールもできていて――だから彼女は一人で何かに悩んでいるのだろうか?と推測を立てることができる。
「ゆーちゃん。ついに分かっちゃったんだよね、あたしがイマジナリーフレンドだって」
「まあ、そうね」
「ってことは、付き合うってこともなくなるのかな……。今だって、こういうふうに喋ってるのが笑っちゃうくらい滑稽だよね」
いつものハルじゃない。その理由は私がまだハルを別人格だと思い込んでいないからかもしれない。
どうすればこの状況を解決できるか――そんなこと、考える必要はない。
「久しぶり会話でもしようか、ハル」
「?」
「一日も経ってないけれど、それでもここまで来た道のりは長かったわ。どれだけの勇気を与えられたのか分からないし、覚悟もした……それはハルがそれほど大切だからかもしれない。でも――」
私とハルは別人格。だから、
「――私がハルをイマジナリーフレンドだと知っていても、私は既に受け入れることはできる。――だからあとは、ハルだけ。ハルが受け入れてくれるなら、また付き合い始めよう」
イマジナリーフレンドで付き合うのが滑稽だと、笑っている人は笑ってろ。私はハルと付き合いたいんだ。イマジナリーフレンドだとかどうでもいい。関係ない。ただ、ハルの気持ちを知る――私と付き合うのか付き合いたいのか。
「でも……あたし、イマジナリーフレンドなんだよ? ゆーちゃん、気味悪いって思わないの? 自分自身と付き合うんだよ?」
「私は気味が悪いなんて思わないわ」
「……でも、他の人から――第三者からはどんな目で見られるか――」
「どんな目で見られても関係ないわ。もともと、幽霊が見えていたと思って、他人からは嫌われ続ける日々送ってるんだから」
「……本当に、また付き合ってもいいのかなぁ?」
「幽霊でも付き合えるよねって言ってきたのは誰だったかしらね」
「それはあたしだけど……幽霊とイマジナリーフレンドは、その……自分自身の感覚がまた変わっちゃうでしょ?」
「そりゃあ少しくらい変わるわよ。でもね、好きな人はその事実を知っていも好きなの。ったく、誰のせいで好きだと思っちゃったんだか。こんな依存性をたった数日もかからずに残しちゃって。
私はねハル――貴方のことが必要よ。あとは、貴方が決めるだけ」
言えることは言った。あとは、ハルが決めるだけだ。
ハルは、ドギマギとしながらも私を見つめてきた。
長い黒髪はまるで委員長のようだ――以前はそう思っていたけれど、今はハルらしい髪型だと思えてしまう。その髪をハルは触っていた。以心伝心――そういうと聞こえはいいかもしれないけれど実際はイマジナリーフレンドによる同心伝心。心臓は同じだ。だけれど、魂は違う――そう感じている。人格が違うと魂も違うとオカルト染みた話を聞いたことがあるけれど、それを今心ではなく魂から理解できた。
心は同じでも、魂が違う。イマジナリーフレンドだろうとどうだろうと、私の想い通りにはならない。だからこそ、ハルと付き合えば、また楽しい日々が待っている――そうなると予感している。
「また、付き合ってほしいな、ゆーちゃん!」
ハルは笑顔を取り戻し、にっこりと笑っていた。その笑顔につられて、私も思わず笑みを溢してしまう。
「これからもよろしくね、ハル!」
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