表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中編

 あれから、10年が経った。


 俺は幼馴染達から捨てられ、無気力のまま毎日を過ごし――てなかったッ!


 むしろ、固く決意した。

 必ず人生の成功者となり、奴らを見返してやるのだと。


 裏切りの糞ビッチ共と、猿勇者のために何でおれが人生を犠牲にしなきゃならないんだ? まあ、そんな事言いつつも10日ほどは家から出られなかったが、今となっては過去の話さ。


 惨めに捨てられた後、俺も王都へと向かい必死に働いた。

 家で待っている女性もいなくなり、足かせが外れた俺はメキメキと才覚を伸ばし、今では一端の名で通った商人となる。


 金も十分に稼ぎ、少なくない金額を故郷の村へと毎月欠かさずに送ったことにより、今では村からも救世主扱いされている。そんな俺を捨てたあの3人は、悪魔として語り継がれた。


 まあ、俺が語り継がせたんだがな。

 でも別にいいだろ。あいつらが故郷に戻ってくることなんか二度とないんだから、これくらいはしても罰は当たらないはずだ。


 かつて妹だったあのビッチも、手厚く親孝行してる俺が何度も両親に相談したことにより、今では嫌悪されまくっている。


 ざまぁみろ、これでお前に村での居場所はなくなったぞ!

 勇者宅で豪遊してるだろうから関係ないんだろうけど、少しスッキリした。









 快適な生活をそれなりに謳歌していた俺が、ある大事な用事で村へと戻っていた時、衝撃のニュースが王都から流れて来た。


 それは、勇者の死だ。


 それも冒険途中とかでは無く、王城の中で死んだらしい。


 商人で手に入れたコネを使い、更に詳しい情報を集めると、何と王城に魔王が来たというのだ。

 えっ、じゃあ王都落ちちゃったの? かと思えば違うらしい。


 なんでも魔王はかなりの脳筋だったらしく、自分より弱い種族には興味がないようで。


『だってお前ら、よえーじゃん。よえーやつに興味ねぇからさ、いちいち俺様に突っかかってくんなよ。時間の無駄。雑魚は大人しく、平和に暮らしとけよ』


 口は悪いが、どうも和平の交渉だったらしく……王様も魔王が向かってこないなら願っても無いという事ですぐさま同意したそうだ。


 だが、そこに現れたのがクソ勇者――もとい、猿……もうなんでもいいや。


『貴様は、魔王‼ わざわざ僕の手柄になりに来るとは……間抜けな奴め!』


 そう言って、問答無用に魔王に斬りかかったらしい。

 王様は顔面真っ青、他の偉い人達も、頭を抱える始末。


 しかし、魔王はそれを指一本で受け止め。


『おい、俺様は雑魚には寛容だが……売られたケンカは買う主義なんだ……覚悟は出来てんだろうな? ”勇者”』


 ……ワンパンだったそうだ。

 軽いパンチ一発で、アルフォスは木っ端みじん。

 最後に見た彼の姿は小便を漏らし、歯をカチカチ鳴らした情けない姿だったらしい。


 俺は散々、あのクソ勇者からボコられたから何とも言えないが――本格的に魔王を怒らせてたら、今頃人類は滅びてたんじゃないか、これ。


 ともかく、尊い1人の英雄の死によって、世界は救われた……などと言われるはずもなく、勇者の情けない最後は王都中に広がり、勇者という権力によって今まで好き勝手したこともあって、奴の名声は地に堕ちたそうだ。


 いつか見返してやろうかと思ったのに、自爆するなんて……。

 まあ、いいか。少しだけ魔王に感謝しておこう。


 それで話を切ろうかと思ったのだがここから更に興味深い話となった。

 勇者の死によって、勇者が囲っていた3人の妻たちが王都から追い出されたらしいのだ。


 3人の妻? あっ……。


 なんとなく察しが付いてしまった俺だったがあえて突っ込まず、何故追い出されたのか理由を聞くと、勇者の妻という立場を利用して、散々王都の人々に酷い事をして来たそうだ。


 マジでゴミだなあいつら。勇者の所為で性格が変わったのか、元からあんなだったのか……勇者の所為だと信じたいな。だとしたら、俺は15年間気づかなかった節穴野郎になってしまう。


 商人として、観察眼が無いのは致命的だしなぁ。

 あいつらは、後からクズになった事にしておこう。どうせどっちでも同じだ。


「へぇ、んじゃ王都から追い出されて行き場もなくしてるわけか」

「ええ。それから行方しれずらしいですが、今頃どこにいるやら」


 まっ、行き場を無くそうが自業自得に変わりなし。

 俺にはもう、何の関係もないから問題ないな。


 情報屋にお礼を言い、そのまま俺は自宅へと戻ろうとした。


 その時。


「レイト……? レイトよね!?」


 村の入り口方面から、声がした。

 10年前に聞いたような、ドブみたいな声だ。


 振り向くと、3名の女性達が立っていた。

 なにやら3人共、目をウルウルさせて俺の事を見つめている。




 はぁ。







 面の皮厚すぎだろッ!?

ぎゃー、あと1話続きます。

糞ビッチざまぁでフィニッシュ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さては魔王いい奴やな?
[良い点] 魔王から来てくれたこと。 楽。 [一言] オゥ、インスタント。 三分でざまぁ。
[一言] こっちは某リーナちゃんと違って完全に混じりっけなしに自分の意思でやってるから一切の容赦とか同情とかいらないですね 権力を盾に相当あくどい事もやったみたいですし本当にどうしようもない… さてさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ