第2話 無双?
「あー疲れた。静、あとは任せた」
ビル屋内、依頼人に指定されたポイントである建物の中で俺は言う
「はあ?まあ別にこれくらいなら平気だけど」
下層から来る敵を二丁拳銃で応戦している静が返事する
彩夏による索敵の結果、その建物にはかなりの数の敵がいたため屋上と正面からの挟み撃ち作戦を実行中だ
俺と静は屋上から侵入し、検知した敵を迎撃しているわけだ
「体は軽いが、ちとはしゃぎすぎた」
体の調子は万全だ。デスクワークの自分でも全く問題なく自由に動き回れる
だがその分疲れやすく感じるのだ
あれだ、ハイテンションで行動した時のぶり返しに近い感覚
それにしても…
「もしかして棒人間に精神を狂わせる機能が?」
「ないよそんなもの。気持ちの問題でしょ?」
棒人間とは今なお迎撃している敵だ
BO-02『源』 、耐久性を完全に排除して抜群のコスト性と汎用性を兼ね備えた殺戮兵器
見た目が見た目なので棒人間と呼ばれているそれはこの暗礁区ではありふれた存在…という設定だっけ
実情はモブ兵士描くのが面倒だったという話だ
ところで主人公たち味方サイドが無双するってのは見ていて気持ちがいいし需要があるのは分かる
しかし現実になって平和社会で育った自分にとって無双といえども戦闘には抵抗があるのが普通だ
異世界主人公が無双することに抵抗がある理由はそれだ。そんな簡単にモラルがなくなるわけが無いのだ
「彩夏ちゃんに聞いたけどあんたほんと大丈夫?調子が悪いなら帰ろうか?」
「ちとナーバスになっていてな。自分を守るのに精一杯だ」
「到着~っとあれ?」
「ありゃ、彩夏ちゃんたちもここまで来たの?」
ある程度下層まで降りた頃、別行動だった奥野翔仁、西田彩夏に出会う
翔仁の武器は白羅剣…と名づけたただの両刃剣、彩夏は銃と短剣だ
「別に怪我などはしていないようだな」
「棒人間の戦闘力がかなり低かった。あれぐらいなら余裕だ」
二人が出会った今、このフロアが最終面となる
彩夏の端末反応からして依頼人の娘がいるのはここだろう
「やっぱり罠だったんですかね~?」
「ここを突破すれば分かる話だ、行くぞ!」
罠、と聞くと俺たちがピンチになると思うが、原作を作った俺が結論を言うと罠ではない
だが娘がいるというのは嘘だ。つまり
「騙された…っていうのかな?」
「騙したなんてとんでもない。おめでとう、合格だ」
ドアを開くと味気ない空間に二人の人影があった
その中のひとりは数時間前に目の前で話をしていた依頼人だ
「合格?ということは私たちを試したってことかい」
「結構なことだ。よし、帰るか」
「まあ待ちたまえ」
彼が何か合図をしたのだろう。鉄格子がドアの前に出現する
おい、こんな描写見覚えが無いぞ?!
「どうするつもりですか?」
「なに、引き続き依頼を頼みたくてね」
「悪いが仕事人は同じ人から依頼は受けない。知っているだろう?」
え、初耳なんですけど?
「それは政府直属の話だろう?君たちは違うはずだ」
なにその設定、わりとどうでもいいけど気になる
後から聞いた話だが中央政府直属の仕事人は公平性を考慮してそういう規則があるらしい
なにそれ知らなかった! (by原作考案者
「本当に大丈夫なのか?」
「テストは合格した。文句は言わない約束だろう?」
「―――っ!」
そこにいたのは翔仁と同じ黒スーツ、左目に大きな傷がある男
マフィアの大ボス、安藤秋一だった
うん、まあ知ってた
だけど実際目の前にいると緊迫感が違う
偉人が放つオーラってこういうものなんだな。現実世界で味わったことがない感じだ
「改めて自己紹介をしよう。私は清水高信、彼は安藤秋一だ」
「清水…高信?」
「知っているのか、彩夏?」
ここは形式美だ。テンポ良く進めていこう
「中央政府の元構成人ですよ。資料で見たことがあります」
「元構成員?」
「ふむ、証拠は全て破棄されているものだと思ったが、掴める人には掴んでいるらしい」
「…なんかトップシークレットな情報みたいなんだけど、聞いて大丈夫な奴?」
静の質問にぁ、みたいな顔をする彩夏。
おいこらドジっ娘属性みせつけるな
「でもそれ以外で聞いたことが…あれ?」
「とにかく、安藤さんのような危険人物と蘭わりのある人の依頼は受けるつもりはないので」
「まあ待て、依頼を聞いてからでも遅くは無いだろう?」
嫌だよ、この流れアレだろ?この情報を聞いたからにはってやつだろ?
しかもその内容に興味を持つ俺は普通に依頼を受けるんだ
ああ頭痛がしてきた。ものすごく帰りたい
「君たちに頼みたいのは新エネルギーの調査だ」
「新エネルギー…最近話題になっている『マナ』というやつか」
どんなことにも冷静な奥野翔仁くん。普通に話聞いちゃっています
「そう、大気中に含まれる微粒子。それを利用することで質量以上のエネルギーを生み出すものだ」
ふわっふわしてる説明だが何となーく分かる。確実にやべー奴だ
「君たちにはその微粒子が多い地域、新世界を調査してもらいたい」
「くっ」
異世界で新世界の調査を任される。これもうわかんねえな
モブは棒人間はよくあることだと思いますが、自分は棒人間にもその見た目の理由設定を作っていました