プロローグ
「これが異世界転移…ってやつか?」
いつもの日常で何気ない瞬間に見知らぬ世界に飛ばされる
「なろうぜ小説家に」でおなじみのパターンだ
それが自分で起こるとは思わなかったが…
「どうかしましたか?拓也さん」
デザインしたことのある服装をした女性が自分に語りかけるのを見て気が沈む
「まさか転移先が自分の黒歴史だとは、前例はあるが珍しいパターンだな」
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――――つきましては、当該作品の削除を行いましたことをご連絡致します。
「ありゃ、とうとう来ちまったか」
大型連休が終わり、ひっそりと続けていた投稿小説が削除されていたのを確認する
「数多くの小説の中から探し出すとは、流石だな」
理由はその作品が二次創作に該当してしまったから
自分がひっそりと投稿していた四作品のコラボ小説が運営に見つかったのだ
最初からアウトなのは承知しているので、オリジナルキャラを登場させ、
登場人物の容姿や名前をいじってセウトにしたのだが
「最近は名前そのまんまが続いていたからな~」
個性を出すために名前がそのままだった登場人物もいたのだ。
もう少し捻るべきだった
「ってこれじゃあ反省になってないか。さて、これからどうするか―――」
「反省って何かしたんですか?」
!!??
突如人の声がして顔を上げる。そこには見たことのない女性の姿
いや、女性だけではない。見るもの全てが、景色が、部屋が、PCが!
見たことのないものに変化していた
俺は幻覚でも見ているのか…?ベタだがさりげなく頬をつまんでみる、夢じゃない
「拓也さん?」
後ろを確認する、どうやら俺が拓也と該当するものらしい
いや、俺の名前は拓也じゃなく…て……?
「あれ?」
思い出せない。住んでいた住所、勤めていた会社も覚えているのに名前だけ思い出せない
怖い、記憶喪失ってこんなに怖いものなのか?
「これが異世界転移…ってやつか?」
「どうかしましたか?拓也さん」
「ああ悪い、少しボーっとしてた。水くれ」
「はぁ…」
俺の名前を思い出せないのは怖いが、まずは目の前の現実だ
目の前の女性の服装,学生を思わせるセーターと季節に合わないマフラー
そして俺の名前と思われる拓也の呼び名。
間違いない
「まさか転移先が自分の黒歴史だとは、前例はあるが珍しいパターンだな」
ここは俺が学生のころに妄想していた作品「Flagments of Winds」の世界だ
その中で俺は風間拓也。つまるところ作品の主人公となっているわけだ
これは転移じゃなく転生に該当するな
「はい水です」
「サンキュ…ふう。静と翔仁から連絡は来たか?」
「まだですよ、そろそろ帰ってくる時間だとは思いますが」
ここにはいない二人の名前を出し、確信するが気が沈む
この作品を黒歴史と呼んでいる理由は完結していないからだ
なんとなく展開を書いて自己満足とリアル日常に埋もれてしまった作品
それが「Flagments of winds」だ。考えていた結末は良く覚えていない
「でも依頼がないということは平和だということじゃないですか?」
「いや、収入がなくなるだろう」
「その時は転職すればいいんですよ」
彼女の名前は西田彩夏
色々問題を抱えているがうちで引き取った。という設定だ
ていうかそれ以上に可愛い見た目で少し緊張している
あらかじめ言っておくが、彼女の顔はイラスト調で認識している
異世界ものでは普通、人はその登場人物の顔立ちを三次元で認識する
だから元の世界より可愛いヒロインに恋をしたり会話をしたり出来るわけだ
だが、俺が認識している彼らの顔立ちは明らかにイラスト調
あれだな。あの伝説的クソアニメポ○テピの蒼○翔太目線だと思ってくれ
「ただいま」
「あ、お帰りなさい」
「う」
一人は首元までしっかり覆われた白いタートルネックに黒ズボン
もう一人は上下黒スーツでタバコをしている。ダッセエ
「池部静と…奥野翔仁」
「どうしたんだい?」
「さぁ?」
「こいつがおかしいのは元からだろ」
「うーわうーわ、マジでか。やばすぎるだろ」
俺の絵心がなかったとはいえ、設定的に普通の顔立ちだったはずだ
それが思った以上に美女とイケメンになっていやがる
ちくしょう
色々無断で人の黒歴史を脚色するのやめてくれませんかね?
はじめまして、作者ACEです。
この作品は十数年以上前にマジで作者が考えた黒歴史作品を元に構成しています
そのため、よくあるチート能力や無双系なんかは抑えてはいます
ちなみに冒頭の作品が削除されたのもマジです
「色々無断でセウトな世界に突き飛ばされました」
は完全削除されました。シカタナイネ