将棋が好きな神様の悪戯7
再度盤面図を載せています。
前話と同じくへっぽこで突っ込みどころも山の如し棋譜です。
なお、盤面は特に逆転したりしていないので、通常通り先手が下で後手が上です。
「えーと。ボードオン。
この世界を統べる神様。シンバンによる裁定をお願いします。
相手はこのなんとかって「アラミドだ!」…アラミドさんで」
気持ち大きめの声でそう声を上げると、さっき対局したときと同じようなスクリーンが、空中に浮かび上がる。
『承認した。代償は如何に。』
「アラミドさんが負けた場合は、そこにいる女の子の所有権を俺に。
俺が負けた場合は、持ってるこの銀貨をアラミドさんに渡し、さらに王国の民になります。」
『代償確認。
先攻アラミド。4238戦2522勝。敗北の場合は所有奴隷324番をサガワナオトへ譲渡。
後攻サガワナオト。1戦1勝。敗北の場合は銀貨30枚の支払いに加え、王国民へ身分を登録。
相違ないか。』
「え!あなた300人もこの子みたいな奴隷持ってるんですか!?
何てうらや…!いえ、非道な事を!最低のロリコンですね!
あ、条件には相違ありません。それでOKです。」
「おまっ!ちげぇよ!これにはちゃんとした理由があるんだ!
事情も知らずに人聞きの悪い事言うんじゃねぇ!」
「犯罪者ってみんなそういいますよねー。口では何とでも言えますからねー。
さ、条件に異議がないならさっさと答えてください。」
幼女を奴隷にする理由なんか聞く耳持たんわ!ぺっ!
「くっ…言いたい放題言いやがって…。
代償には相違ない…。」
「じゃあ始めましょうか。対局開始。」
再度目の前のスクリーンに八十一マスの盤面が描かれ、二十枚の駒が配置される。
(しかし…このボイス認識…性能高いなぁ…。
地球にもここまでのものはなかったが…)
「さて、次はそっちが先手だね。
よろしくお願いします。」
「…おう。」
(やはり挨拶の文化は無いのか…。
見かけは将棋だけど、本質的には別物だという事なんだろうな。)
『2六歩』
『3四歩』
『7六歩』
『3二飛』
『2五歩』
『3五歩』
---今回は直人が後手の為、盤面の上三行が直人の陣営です。---
(先後入れ替わっているのでわずかな違いはあるが、典型的な後手石田対抗系の流れだな。
…まぁ、堅実に行こう。)
「…。」
さっきと同型になった事は流石に副団長サンにもわかったらしい。
前の対局の様に手拍子で指すという雰囲気ではない。
…まぁ「今は」だが。
『2四歩』
(うん?結構考えていたのに突き捨てるのか?)
『2四同じく歩』
『2四同じく飛車』
『3六歩』
(ここまでは先後が違うだけでさっきと同じだ…。
時間は使ったけど他の手が思いつかなかったんかな?)
と思っていると、アラミドはこちらを見ながら口角を釣り上げ。
「同じ手が…通じると思うなよ!!」
と威勢よく叫ぶと、スクリーンを叩き割るかのような勢いで力強くタップした
『4八銀』
(お?)
「ふん!どうだ。
これでさっきの王手飛車は防げる!
同じ手が二度通じると思うなよ!」
(ふーん。まぁさっきの局面を見て即対応できるのは中々だ。
定跡は知らないが力戦には強いってことかな。
30過ぎてその柔軟性があるってのは正直羨ましい。)
「だが、まぐれとはいえ一度でも俺に勝ったのは中々だ。
うちの国に来たらキシ団に来い!俺が鍛えてやるよ!ははは!」
(?
あぁ、勝ったつもりで言ってるのか。
…浅いな、本当に。)
『8八角成』
「ふん。もうその手は怖くないぞ。」
『8八同じく銀』
(へぇ。怖くないのか。
…本当に?)
『3三角』
「ははは!王手じゃねぇなら怖くねぇんだよ!
飛車を成り込めば痛くも…かゆ…」
威勢の良かった言葉が尻すぼみに、そして聞こえなくなっていく。
(まぁそうだろうね。そのやり方だと王手飛車は防げても、この飛車銀両取りが受けられないから。)




