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くちなしの異世界  作者: kou
35/40

初心者の通る道8

局面図は後ほど折を見て追加予定です。

「では続きを見ていこう。6六歩と角道を止められたキリルさんはこの後どうする?」


「え、えっと…。

とりあえず急な開戦のリスクが減ったので、その場合は玉の守りを固めるとよいと習いました。」


ふむ。その考えは正しい。

まぁ問題は玉をどう囲うかなのだが…。


「よし。

ではキリルさん、習った通りに玉を囲ってみてもらえる?

王国で教えている序盤の進め方を見てみたい。

ユリアンさんは美濃囲いで、局面を見て発展も可」


「わかりました。」

「了解ー。」


『3二銀』

『6五歩』

『4四歩』

『7八銀』

『3三銀』

『4八王』

『3二金』

『3八王』

『3一角』

『2八王』

『5四歩』

『3八銀』

『5三角』

『1六歩』

『1四歩』

『5八金』

『4一玉』

『4六歩』

『3一玉』

『4七金』

『2二玉』

『6七銀』

『7四歩』

『3六歩』

『7二銀』

『5六銀』

『7三銀』

『3七桂』

『5二金』

『4五歩』

『4五同じく歩』


「はい、ストップ。」


ふむふむ。キリルさんの陣容は矢倉模様。

ユリアンさんは高美濃か。

振り飛車に矢倉というのは相性としては良くないんだが、それはこの際置いておこう。

それよりも、だ。


「キリルさんは今のを同歩と取る時、相手の応手はどんな物があると考えたのかな?


「え?えーと。同銀と取り返してくるか、3三角成かと思ってました。」


「ふむ。同桂は?」


「同桂?あぁ、桂馬ですか?

えーと、桂馬は…あ!!」


やっぱり。

前も思ったが、桂馬に対する王都の面々の認識はちょっとおかしい。

自ら使わないからなのかもしれんが、桂馬の効きに対する配慮があまりにも無さ過ぎる。


「気づいた?

この局面で歩を同桂と取られると、それがそのまま角銀の両取りになってるんだよ。

なので、この4五同歩は悪手なんだ。」


「ぜ、全然気付きませんでした…

あの…手を戻してもいいでしょうか…。」


ちらりとユリアンさんを見上げながらそう問いかけるキリルさん。

ユリアンさんも慣れたもので、ニッコリと笑いながら手でどうぞと促す


「そうなるとこの局面は4三金が良いのでしょうか?」


「そうなるね。


では巻き戻して続きを指してみよう。」


↓以下4五歩から分岐


『4三金』

『4四歩』

『4四同じく銀』

『4五歩』

『5五銀』

『5五同じく銀』

『5五同じく歩』

『5五同じく角』

『3三銀』

『2五桂』


「ううぅ…」


キリルさんの表情が険しくなってきた。

角道が玉に直射したままの応手なので手が苦しいんだろう。

正直この展開、2二に入城した時点で見えていたんだが、俺は悪手を発生時点で咎めてもそれが悪いという実感がわかないと考えている。

よって悪手に対しては、それが極端に局面を悪化させるものでない限り、問題が顕在化するまで口を出さない。

まぁ練習対局だし。


『4四銀』

『4四同じく歩』

『4四同じく角』

『4四同じく角』

『4四同じく金』


「はい、ストップ。」


「ふえぇ!?ま、また間違えちゃいましたか?」


「うん。まぁ間違いといえば間違いだけど、そう警戒するこっちゃないよ。

棋力の差は少しずつ詰めていけばいいことだから。」


「それは…わかってるんですけど…。」


そういいつつも、キリルさんは口を尖らせ、目を逸らす。

まぁ弱さをわざわざ突き付けられているようなもんだから不満なのは解るけど、そこは受け入れないとね。


「で、この局面だけど、7一角が飛車金両取りになっちゃうね」


「え…あ!!」


「ユリアンさんはこの手、何手前からの読み?」


「2五に桂馬跳ねた所からですかねー。

4四での清算に角で応じてきたら本譜通り飛車金両取り、金で応じてきたら7三角成とぶった切るつもりでした。」


「それはまた豪気な…。」



「あ、あの!!」


ユリアンさんと読み手について話していると、必死の表情でキリルさんが割り込んできた。


「うん?どうかした?」


「あの…この一局…最初からやり直させてはいただけないでしょうか…。」


ん。予想外の切り口で来たな



「ふむ、その理由を聞こうか。」


「はい。ユリアンさまと指してて、私は2二に玉を入れた事が今の局面の難しさを生んでいる元凶だと思いました。

なので、もう一度、序盤の駒の進め方から細かく教えてほしいんです!!」


ほほう。こっちが何も言わないうちにそこに気がつくとは…。

この子、俺が考えていたよりずっと賢いな。


「うん、解った。

じゃあこの局は流して、最初から指しなおそう。

ユリアンさんも大丈夫かな?」


「勿論ですよ。

王女様と道場主様の希望を蹴ったら男が廃りますわな。」


「あ、ありがとうございます!!」


俺とユリアンさんの回答に満面の笑みを浮かべ、頭を下げるキリルさん。

自身に欠けてたものを自力で見つけ、それを治す為に直談判できる。

この子、第四王女という話だったけど、ちゃんと勉強すれば棋士団なんかよりずっと強くなるぞ…。


閲覧いただきありがとうございます。




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ヽ(・∀・)ノ

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