将棋が好きな神様の悪戯2
「はっ!」
目を覚ますとそこは見渡す限りの草原だった。
少し遠くには草を食べている牛。
後ろを向くと木と石でできた小さな農村らしきもの。
遠くの空には見た事のない大きな鳥。
着ているのは皮でできていると思われるごわごわした茶色の服。
…ファンタジーだ。あまりにファンタジーに過ぎる。
「…間違いない。これは夢だ。
早く起きよう。」
流石に導入が雑すぎる。
納期近い仕事もあるんだし遅刻は出来ない、さっさと起きなければ。
こういう場合は大抵思いっきり背伸びをすると起きるんだ。俺知ってる。
そうして力いっぱい後ろへ仰け反ろうとすると、ひらりと紙のようなものが体から落ちた。
何か書いてあるようなので、なんとなしに手に取って読んでみると
『おはよう佐川君!早速だけど君は死んでしまいました!
気持ちを新たに翌週の勤務へ向かって気合を入れなおした直後に、落ちてきた看板に
押しつぶされるなんて運がないね☆
でも安心して!そこそこのコミュニケーション能力と知識のある君を
僕の世界に招待します!
(君に拒否権はないよ☆彡)
幸い君は、君のいた世界にとって大して重要じゃなかったみたいで
君の世界の管理者は快く承諾してくれたよ!(TOT)カワイソー
年齢は君が死んだ27歳、服装は僕の世界の標準に合わせているよ!
サービス精神旺盛でしょう?感謝してね!祀ってくれてもいいよ!
僕の世界は君のいたところと違って、Yes平和、No暴力がモットーだからね!
およそ知性あるすべての生き物に暴力は振るえないから気を付けてね!
まぁ現代日本で牙のもがれたサラリーマンに
人へ暴力振るう根性なんかないと思うけどね☆(ゝω・)vキャピ
基本的に人と人とのもめ事はとあるゲームで決める事になってるから、郷に入れば郷に従えの精神でよろしくねー(^O^)v
ようこそ!僕の世界マウスレスへ!
いつでも君の傍に。
世界神より。』
という実に頭の悪い説明がA4判にびっちり手書きで書かれていた。
…。
うざい。
超うざい。
メガトンうざい。
てかどういう事だよ死んだって!
なんだよそれ!俺まだ30代だぞ!
これから先彼女作って出世して金稼いで家買って犬飼って車買って子供二人作って仲良しこよしの四人家族で子供成人したら夫婦水入らずで旅行行ったりしてアラフォーアラフィフライフ過ごして緩やかに老いながら最後は子供と妻と孫に看取られて病院のベッドで息を引き取るっていう俺の人生設計はどうなったの!?
終わりって事!?
デッドエンドって事!?
いやいやふざけんなよマジで許容できない許せない納得できないうわああああああああああ!!!!
と。
ひとしきり吠えたところで、ここまでしても目が覚めないってことはこれはガチって事か。
…。
まじかー。
俺死んじゃったかー。
まじまじかー…。
「ま。ここで頭抱えていてもどうしようもない。
とりあえず見えてるあの農村っぽいところに向かおう。」
独り言は長い一人暮らしのクセだな。
家があるってことは人もいるんだろうけど、おかしな目で見られるようなら
徐々に直していかないとな。




