棋士団VSナオト道場3
本部分から局面図は後付けの形にしようと思います。
文章も符号もあるのに局面図用意できずに投稿できないのが大分ストレスなので…。
合間を見て追加する予定ですので、どうかご容赦を。
先手だったら指す手は一つ。
親の顔よりよく見た定跡。
レッツゴー7六歩!
『先手、7六歩』
『後手、8四歩』
『3二飛』
『8五歩』
『7七角』
『3四歩』
『6六歩』
『4二玉』
(ん?)
これは…。
振り飛車最大の敵、居飛車穴熊の匂いがする。
『1六歩』
このタイミングでの端歩は、穴熊に辛酸を舐めさせられた経験のある振り飛車党には馴染みの一手。
居飛車穴熊は最終的に1一、もしくは9九の隅へ玉を囲う為、振り飛車側からの端歩は無視して玉の移動を優先させる事が多い。
もし相手が穴熊に組もうとしてるなら、この手を無視して玉を移動させるだろう。
逆にこの端歩に対して相手も端歩を突いてきたら穴熊の可能性はぐんと下がるという事になる。
そして…
『3二玉』
団長さんが選択したのは玉の移動だった。
(あーあーあーあーあ!
これ確実だもーやだ穴熊ほんと大っ嫌い!)
現代将棋で骨身に浸み込んだヘイトが体中から染み出てくるのが解る。
それと同時に、穴熊を相手にする時以外感じる事のない、表現しがたい高揚感が頭、腕、そして指先にじわじわと滾っていく。
『1五歩』
「…。
貴様、儂の家に伝わるジョバンジョーセキを知っておるのか?」
言外に漂うヘイトを感じ取ったのか、対局している団長さんはそう問いかけてきた。
(勿論知っているとも。何杯苦汁を舐めさせられたか数えきれんわ!!)
「そういう質問はこの対局で勝ってからにしてください。」
「むぅ…。」
『3三角』
(しかしこっちがノーマル三間で向こうが居飛穴か…。
久々に…潰しがいのある対局だ!)
『6八銀』
『5二金』
『6七銀』
『2二玉』
『5八金』
『1二香』
『4六歩』
『1一玉』
パタパタと手が進む。
俺は勝手知ったる対穴熊振り飛車の陣形へ。
団長さんは一目散に玉を盤の隅に。
居飛車穴熊に対し振り飛車党が頭を抱える特徴の一つが
この『囲いを最優先にする序盤定跡』の存在である。
穴熊は囲いの完成にかかる手数が非常に多い。
団長さんはそれに相当慣れているのだろう
指し方に迷いがない。時間を使わない。さりとて考えなしでもない。
一直線に、迷いなく玉を囲えば、まともな攻めは間に合わない事を知っているのだ。
『4七金』
『2二銀』
(穴熊完成、か)
この2二銀で玉のコビンに蓋をした形が、最も簡単な穴熊の形である。
ここから金を寄せていくと更に囲いの硬さが増していくが、この時点で既に囲われた玉には王手がかからないようになっている為、他の囲いとは比べ物にならない程堅牢になっている。
対して俺の玉はまだ一度も動いていない。居玉のままだ。
攻めの陣形整備に手を費やした為、最低限の囲いすらできていないスカスカの陣形だ。
穴熊に慣れた団長さんにとっては、俺の陣形はさぞかし貧弱に映る事だろう。
『3六歩』
『3一金』
『3七桂』
『4二金』
「ふぅ、旅の者よ。」
「?
なにか?」
「まだ始まって間もないが敢えて言おう『貴様の負けだ』と」
(でたよ。早合点。)
「儂が天より授かったジョバンジョーセキ。その名も要塞
その完成まであと一手だ。
玉を包むこの布陣が完成した勝負にて、儂が負けた事は過去20年で一度もない。
対して貴様の陣形は一体なんだ?
そのような隙間だらけの陣で玉が守れると思っているのか。馬鹿め。
アラミドを下したその棋力に敬意を表し、万全の準備を整えてきたというのにとんだ無駄足だ。
この勝負はとっくについている。
さっさと負けを認めろ。」
(…この団長にしてあの副団長あり、か。
僅かでも見直した俺が馬鹿だった。
要塞だって?
アホらしい。藁小屋の間違いだろ。)
「おしゃべりは対局が終わってからでお願いします。」
『2五桂』
「…む。
…ふん、生意気な小童が。」
『2四角』
『6五歩』
「…所詮天啓を得られなかった流民の戦い方か。
これで我が鉄壁の守りは完成だ。」
『3二金』
おおぉ!!と棋士団のいる方向から声が上がる。
確かに金銀三枚を使った穴熊は固い。
王手はかからないし金銀の連結も強い。
何の策もなければ攻め切る事は出来ないだろう。
しかし…
(千丈の堤も蟻の一穴から。
お前の要塞が如何に脆弱な出来損ないか教えてやるよ。)
『1三桂成』