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くちなしの異世界  作者: kou
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将棋が好きな神様の悪戯1

「…負けました。」


「ありがとうございました。」


「はい!次はかがわくんとひさじまさーん!角落ちでー。」


「「よろしくお願いします」」


ここは七原市四丁目浅花ビルの3階にある将棋道場。

席料1200円で一日指し放題。

俺みたいな年いってから将棋にはまった、素人に毛が生えた程度の将棋指しには

ちょうどいい道場だ。


俺の名前は佐川(さがわ) 直人(なおと)、年は今年で33、一人暮らし。

職業はプログラマー、趣味は将棋。


「あ、席主さん。俺今日はもう上がりますね。」


「はーい!佐川さんお疲れ様でしたー。」


気持ちのいい笑顔で答えてくれる席主のおばさんに見送られ、将棋道場を後にする。


「ふぅ…。今日は三勝七敗か…。

やっぱなー…穴熊は固いよなー…もういい加減振り飛車一辺倒じゃきついかなー」


道場での勝率が五割を大きく下回る様になってからだいぶ経つ。

あくまで持論だが、将棋はやればやるほど強くなるというのは子供の事にだけ当てはまる理屈だ。

成人の将棋指しは、ただ回数を重ねるだけじゃ強くなんかなれない。

負けた対局を糧に出来る方法がなければ、次に生かすことは出来ないのだ。


将棋を始めた頃はそれが出来た。

負けた対局の負けた理由が分かって、それを次に生かすこともできた。

仕事でミスするのに比べたら何倍も楽だ。どこかに必ず逆転の目はあるのだから。


しかし、将棋に慣れ、腕が上がるにつれて、自分が何故負けたのか、何故勝てたのかが解らなくなっていった。

始めた頃より上手くなっているのは確かだ。

しかし上手くなればなるほど、指す将棋が複雑になればなるほど、その勝ち負けの理由を探すのが難しくなっていった。


子供の頃ならなにくそとのめりこんだのだろうが、もう俺はそういう年でもない。

これが自分の才能の限界というものなのだろう。


今の俺に、強くなるために努力する気力はもうない。

今日の様に休日の半分を道場で過ごし、ぬるま湯のような将棋を指す事で満足するようになっていた。


(これから先、こんな感じで生きていくのかな…。


まぁでも、それはそれでアリか。

余生の過ごし方のひとつと思えば、こういうのも悪くない。)


「んー!

さて、明日からまた仕事だ!また五日間頑張るzゴシャ!


そうして来たる月曜日に向けて何度目かの決意を新たにした瞬間。

何の前触れもない唐突すぎる事故で、俺の人生はあっけなくその幕を閉じた。


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