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quiet gerden  作者: サファイア
消えた⁉夏休み
3/3

せかいの理

「着ましたよ。」

腕を袖に通しながらオレは女性に問いかけた。

「てか、なんか用ですか?」

「少し気になったことがあってね…。あなた、この世界の人じゃないでしょう?」


「…あ、授業10分前だ。」

この人大丈夫か?と思いながら教室に向かおうとしてみる。

「ちょ、ちょっと!私は真面目よ!」

しっかし、急に不思議なことを言われてもな。


「あなたのシャツのマーク、この学校のじゃないわよね?今日学校に来るとき気づいたの。」

確かにYシャツの腕部分に学校マークがついているのがオレの高校の特徴だ。


「そうだけど…。でもいったい何故そんなことを?」

そう聞くと回答は予想できる。

「私も別の所から来たのよ。」


授業5分前のチャイムが鳴る。

「私の名前はミサネ!あなたの名前は?」

セイト、と答えた。

「セイトくんね。放課後生徒会室で会いましょ!」

そう言ってお互いの教室に向かった。


~放課後~

生徒会室は案外簡単に見つかった。人がいるのか、すでに電気がついている。

ノックをすると中から昼に会ったミサネさんが出てきた。

「よく来たわね。隣部屋が空いているから入りましょ。」


隣部屋でお茶を出してもらい、それを頂いた。

「ところで、オレ他の高校なんですが、どうなっているんですか?」

「ああ、授業受けても問題ないかって?私も始め戸惑ったんだけど机もあったし、名簿にも名前が載ってるのよね。でも転校生として入れたらもっと馴染みやすかったんだけどね。」

それと今日は何日か分かる?と聞かれる。

夏休み前の7月20日だと答えた。

「でも時計とか見ると、今日は7月14日。」

「え、14日?」

「そして昨日は15日だったの。というよりここ最近は15日だった。」

どういうことだ。時間が遡っているのか?

「最近って…。同じ日が続いていた?」

「ただ曜日はきちんと変わる。そして一人増えると日付も1日戻る。」

どうもオカルトめいている話だ。ただ話しぶりはウソを言っている感じはしなかった。


「ここへはどう来たの?」

「確か買い物帰りに歩いていたら霧の中に迷い込んでしまってて…。」

「他の人と同じね。霧が晴れたら、いつの間にか学校があったって。」

「他に同じような人がいるんですか!?」

「いるわよ。何人か。」

少し驚きを隠せない。こんな非現実的なことがあるのと、他にも人が来ていたとは。

「ミサネさんもそうやって来たんですか?」

私はねー、と言葉を濁す。

「少し、違うルートだったけど…。」


場所を変えて屋上に向かった。校内では軽音楽部の練習音が聞こえる。

途中、自販機でジュースを買ってもらった。

校庭を見ると野球部とサッカー部の練習がよく見えた。まさに青春といったところだ。


「なんか普通の学校って感じだな。」

特に変哲もない学校だ。何も違和感がないくらい。

「願い事って、ある?」

「願い事?」

ミサネさんは手すりによりかかり、遠くを見ている。

「なんでもいい、叶わなそうなこととか。」

叶わなそうな願い事か。一度呼吸をして言い出してみた。

「もう一度家族と暮らしたいとかですかね。半年ほど前オレが留守番していたら事故で亡くして…。」

一瞬その時のことを思い出した。警察から連絡が来て、葬式をやった。

もう半年経つのに今だ胸が詰まった。


「そう。ここに来てから家へは帰った?」

「いや、まだ…。」

そういえば飲み物を買ってバッグに入れたままだった。

「この世界ではね、何か一つ願いが叶うの。」

「いや、まさか…。」

そんなことあるはずないと思ったが彼女の顔は真面目だった。


「もうこんな時間ね。」

チラリと腕時計を見ている。

「続きは明日以降にしましょう。」


学校を出たのは17時を過ぎてからだった。いつの間にか長い間話していたらしい。

幸い街はそこまで変わっておらず、自宅もスマホで住所を入れればマップで出てきた。




いつぶりだろうか。ここまで気持ちが昂るのは。

普通に歩くように心掛けたが、いつもより足が速くなってしまう。

まるで長距離走を走った後のように鼓動の音が大きく聞こえる。

しかしまださっきの話を信じた訳じゃない。流石に半信半疑だ。

だが家が近づくにつれだんだんと確信に変わってきた。


家の明かりがついていた。


玄関の前に立つと誰かの話し声が聞こえる。そっと扉を開けると。

「あ、お兄ちゃん。おかえり。」

妹の、キヨミの声だった。

「もうすぐご飯できるわよ。」

母さんの声だった。

「今日は遅かったな。」

父さんの声だった。


「ただいま…。」

その瞬間、家族ってどういうものか少し分かった気がした。そのときオレはどんな顔をしていたのだろうか。

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