ニュー・ライフ
7月20日 午後
まだ昼の熱さをアスファルトが保っている。高校性2年のオレ、聖は明日からの夏休みで皆が浮かれている中、家への帰宅路についていた。
しかし家へ帰ってもテレビを見るだけだ。他の家では明かりが付いていて、スイカなど買ってあるのだろうか。
「ただいま。」
人の気配のない暗くなった家の玄関を開ける。日中の日差しで熱せられた蒸し暑い空気がまとわりついてくる。
『おかえり。』という母の声も、妹の声もずっと聞いていなかった。またいつか家へ戻ったら誰かが帰ってきている期待がある…しかし今日も叶わなかった。
家に帰ると仏壇の前で手を合わせるのが日課だ。
「…。」
半年前、事故で両親と妹を失った。その日から家の時間は止まっている。
人は不思議なもので、だんだんと日常に慣れてくる。辛いことも…幸せなことも。
冷蔵庫を見たら飲み物が無くなっていた。
「買いに行くか。」
いちいち着替えるのも面倒だ。着のままでスカスカのリュックを持ち、家を出た。
買い物がてら少し寄り道をしたら18時を過ぎてしまった。町中のテレビでは性同一性障害、難民問題などを扱っていた。また、少し前に起きた殺人強盗が何者かに殺されたなどと報道していた。
自販機で買って飲んだ缶をゴミ箱の中に投げ入れる。カラン…と寂しい音が響いた。
ふと気づくと辺りは暗くなっている。というより、霞がかっている。
「雨か?」
しかし特にそのような予報はなかった気が…。
家に帰ろうと歩いていくが、だんだん霧が濃くなってきた。
「うそだろ…ここどこだ?」
いつもと同じ道を歩いていただけなのに、道に迷うことってあるのか?もしかしたら、狐に化かされているのかもしれない!
腕時計を見ると8時くらいを示していた。周りの霧がだんだん晴れていく…。
「学校?」
気が付くと目の前にどこかの学校が見えてきた。