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ケイト、女子会の司会をする。

今回のツッコミはケイトです。


「――それでは第一回女王国女子会を開催いたします。司会を務めさせて頂きますケイト=ターナーです。本日はよろしくお願いします」


 私の一礼を受けてパチパチパチと、まばらな拍手が返ってくる。

 参加者はアリシア女王。パールちゃん、マイカさん、ママ……そして私。

 ここは女王国公館のこじんまりとした一室だ。

 ――どうして? どうしてこうなったの?

 私はその原因を作ったママを睨みつける。

 だけどママは嬉しそうにはしゃいでいた。

 今まで見たこともない楽しそうな笑顔で浮かれているママ。

 私は溜め息をついて数日前の夜のことを思い出していた。



「――ねぇ、ケイト?」

 

 パパとママと私の三人で晩御飯の最中に突然ママが切り出した。

 まぁ、基本的にママはいつも()()だ。 


「……なに?」


 何か不穏な空気を感じて表情が曇るのも、無理はないと思ってほしい。

 昔からその被害を受けるのは私だと決まっていた。

 ママは私が迷惑しているだなんて、これっぽっちも思っていないだろうが。

 

「女子会って楽しいの?」


「……は?」


「ホラ、いつも言ってるじゃない。……ルビーちゃんとサファイアちゃんと女子会してるって」


 確かに彼女たちと一緒にお喋りするのは楽しい。

 今までロクな青春を送って来れなかった分をこの数か月で取り返す勢いだ。

 とくに恋愛話はメチャクチャ盛り上がる。

 みんなそれぞれ好きな人がいて、みんなが誰かを知っている。

 サファイアちゃんはクロード。

 ルビーちゃんはトパーズ。

 そして私はロレントさん。

 それぞれの恋を応援しながら、どこが好きどこがダメだと、ノロケ交じりグチを言い合っているとすぐに時間が過ぎてしまうのだ。


「……うん、楽しいよ?」


 ……何? まさかその情報を寄越せと?

 クロード一行が女王国の監視対象になるのは仕方ない。

 表立って女王に歯向かったのだ。

 それはそれ。これはこれだ。

 女子会は乙女の秘密、そして乙女の楽園なのに!

 政治や権力争い、陰謀とは無関係な神聖で絶対不可侵の領域、それこそが女子会の本質!

 私たちの女子会を阻む者はたとえママであっても排除する覚悟だ。



 だけどママから出た言葉は予想の斜め上を行っていた。


「女王国でもやりたいなぁって――」 


「……ん? ……じゃあ、勝手にやったら……いいんじゃないの?」


 イマイチ言葉の意味が分からないので、取り敢えず距離を取るという方向で返事をしてみる。

 だけど私のそんな対応が気に食わなかったのか、ママは頬を膨らませた。


「だって、やり方が分からないもん」


 ママが拗ねたように下から見上げてきた。

 ……『もん』?

 何だコイツ? ……完全に乙女になっていやがる。

 そして例によってそんなママをパパがうっとりとした表情で眺めていた。


「ねぇ、ケイト? 司会をやってくれないかしら?」


 ハァ? ……司会? 何だそれ?

 ママは目を潤ませて祈るように手を組んだ。……無駄に神々しい。

 パパはいきなり目の前に聖女か何かが現れたのだと勘違いしたのだろうか、澄んだ目でママを見つめながら、小さな声でマール神に祈りを捧げていた。


「いらないから、司会なんて。……普通にお菓子食べながら話すだけだから」


「そんなのいつもやってるわよ? 次は誰をオトすとか、どの陣営の人間を仲違いさせる、とか……」


 それは女子会とは言わない。ただの作戦会議だ。

 ……しかも物騒すぎる。今度は何を考えているのだ女王国!


「ねぇ、女子会って絶対そんなのじゃないわよね? もっとフワフワしたモノよね? 乙女の秘密を共有する甘酸っぱいモノよね? ……だからケイト、女子会の先輩として教えてほしいの。……お願い!」


 ママが身を乗り出して私の手を掴んだ。

 絶対にイヤだ。何故私がそんな面倒なコトを。

 そう考えていると――。


「司会ぐらいやってあげたらどうだ? 何事も人生経験だぞ」


 今まで黙っていたパパがママに助け船を出した。

 アンタは黙れ! 話がややこしくなるでしょうが!

 私はパパを睨みつけるも、全然こっちを見ていないし!


「……テオ……」


 ママがパパを見つめる。

 パパも「ちゃんと言ってやったZE☆」的なドヤ顔で見つめ返す。

 そして二人は見つめ合ったまま愛を囁き始める。

 ――ほら~! ね!? ね!? こうなってしまったらもうダメ。

 我が家の食卓が一瞬にして恋愛物語の舞台に早変わりしてしまった。

 私は覚悟を決めて、いつものように『木の役』として存在感を消すことだけに集中した。

 もうヤダ、この夫婦! ……勝手にやってろ!

 見つめ合う二人を不動心でやり過ごしながら、私はご飯を黙々と食べ続けた。




「――それでは、まず好きな食べ物の話でもしましょうか?」


 と、まぁ、……そんな流れがあって、私は女子会の仕切りをしている、と。


「マイカさんは? 今までで一番美味しかったモノは何ですか?」


「んー、そうっすね。やっぱ山岳国の酒っすかね? こっちの飲みやすいワインもいいんすケド、あのガツンとくる感じはマジ良かったっす」


 だーかーらー、食べ物だっつってんだろうが!

 流石に温厚な私でも(しょ)(ぱな)からピキピキきている。


「えぇ、あれは本当によかったわ。実は私も何度か取り寄せてみたの。あの喉が焼けつく感じが最高よね!」


 何故かその話にママが食いついた!

 そして今まで飲んだ美味しい酒の話で盛り上がる二人。

 アリシア女王とパールちゃんの年少組が顔を見合わせていた。

 これはダメだ。最悪のパターンだ。何とかして話題を変えないと!


「……えっと、パールちゃんは、好きな食べ物はあるのかしら?」


 彼女はいきなり話を振られて驚いていたけど、少し考えてから可愛らしい笑顔を見せた。


「豆です!」


 えぇっ!?

 まさかの素材? しかも穀物の分類での返答?


「せめてナニ豆とか、出来ればそれを使った料理とか、それをどこで食べたのか教えてくれるかなぁ?」


 私が必死で膨らませようとするが、その努力はあっさりと打ち砕かれる。


「豆はそのままで食べるのが一番美味しいですよ。名前は知らないです。山で採れる野生の豆です」


 ニコニコと答えるパールちゃん。

 ダメだ。この子見た目に反比例して一番女子力が低いかもしれない。

 ただの野生児だ。

 ――せめて女王なら、女王ならばこの状況を打開してくれる!

 私は深呼吸して気持ちを落ち着かせると、一縷の望みをかけて女王に質問した。


「……その、アリス様は、何か好きな食べ物はありますか?」


「……塩ね」


 まさかの調味料キター!!!

 もはや食材ですらない!

 なんだコイツ? こんなの女子じゃねぇ! ……っていうか人間じゃねぇ!

 知ってたよ! あぁ知っていたさ! コイツがこっちの思い通りに動いてくれないことぐらい!

 ちくしょう! ――なんて日だ!

 滅べ! こんな国、とっとと滅んじまえ!

 


 それから何故か話題は美味しい肉へと移り、そこから思いっきり盛り上がった。

 ……女子会で肉の話はいかがなものか。

 私の苦労は一体何だったのか。

 やりきれない思いの中、第一回女王国女子会は大盛況のうちに幕を閉じた。

 そして私は今まで感じたことのないような疲れを全身に感じながら、トボトボと家路につくのだった。



 その後ルビーちゃんとサファイアちゃんとの女子会で何となく肉の話を振ってみたら、まぁ盛り上がる盛り上がる!

 今までで一番盛り上がった。どんなコイバナよりも盛り上がった。

 あらゆる女子会を過去のモノにするような破壊力を見せつけられた。

 そのとき初めて私は、肉は正義、……いや肉こそが絶対正義なのだと思い知ることになった。




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