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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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王女アンゼリカ2

 飛び込んできた少女は、今侍女ソフィアと名乗った少女と比べると色々なものが違い過ぎていた。


 服装は……似ている。体型はソフィアの方が豊かだ。

 金髪碧眼は同じだが、サラリとしたストレートヘアのソフィアと比べると少女の方は軽くウェーブがかっている。

 何より、顔が全然違う。大人しめな印象のソフィアと勝気な印象のある少女という違いはあるが……明確に、少女の方が美しい顔立ちであった。


「うむ、うむ……ほうほうほう!」


 飛び込んできた少女はセイルをジロジロと眺めまわすと、やがてニンマリと笑う。


「さて、セイル。妾はアンゼリカ。アンゼリカ・ニム・ヘクスじゃ。余計な敬語は要らぬ。妾は飾らぬお主が見たい」

「飾らぬ俺……」

「そうじゃ。敬語を使えば人は自然と殻を纏う。素が見えず、似たような凡庸な木偶となり果てる。されど普段通りの言動は木偶の中の真実を曝け出す。その結果、賢人か阿呆かもよぉく見える」


 なるほど、確かに敬語を使っていれば自然と言動にはブレーキがかかる。

 何かを言う前に「これを言ってはいけない」という自制ができるのだ。

 しかし普段通りの言葉遣いの場合はどうだろう?

 素の自分の言動を曝け出す事で、かかるべき制動がかからなくなる恐れもある。

 言ってはいけない事を言う可能性も出てくるというわけだ。


「……ではお望みの通りに」

「うむ、素直な奴は好きじゃぞ? 褒美に一つ質問を許そう」

「では、今の「試験」とやらの説明を。随分と殺気立っていたが……俺達の前に来た「誰か」が何かを仕出かしたか?」


 セイルがそう聞くと、アンゼリカはニヤッと笑いながらソフィアの退いたソファの上にどっかりと座り込む。


「うむ、うむ。実はお主の前に来たのはアリアスという男なのじゃがな? お主と同じように「普段通りの発言」を許したところ、あっという間に本性を曝け出しおった。ククク、妾を前に「こんな場所では終わらない男」とは良く言ったものじゃ」

「なるほど。それは……なんというか、勇気があるな」

「おうおう、それじゃ! 勇気をもって民衆を導く者、すなわち勇者であるとか言うておったわ! 面白いから即座に叩き出したがな、実はこの王都の冒険者ギルドのな、副支部長が恋人の一人であるそうじゃ」


 副支部長の顔を思い出しセイルが嫌そうな顔をすると、アンゼリカは狙い通りとばかりに爆笑する。


「ま、たぶん特別扱い狙いじゃろうがな! そっちの方でも「勇者」でなくとも良かろうにのう!」

「は、はは……俺には真似できん」

「真似されても困るがのう」


 そこでアンゼリカは真顔に戻ると、セイルの顔をじっと見つめる。


「お主の情報を冒険者ギルドで見つけた時には当たりだと思ったものじゃが……こうして実際に見ると、妾の勘が間違っていなかったとよく分かる」

「それは……どういう意味だ? 此処に来て何かを見せた記憶はないが」

「ふむ」


 アンゼリカはソファに深く腰掛けると、小さくニヤリと笑う。


「セイル。王の資質とはなんだと思う」


 王の資質。

 セイルはアビリティとして「王族のカリスマ」を持ってはいるが、そういうものは例外だろう。

 一般的に考えて王の資質とは……。


「まずは血筋、だろうか」

「大事じゃな。他には?」

「国を動かす能力、だろうか。王が国を統べる存在であると定義するのであれば、必要になってくるとは思う」

「うむうむ。間違ってはおらんの」


 しかし正解ではない、という風にもセイルには聞こえた。

 他の答えを望んでいるようにも見える。


「これ以上と言うのであれば世界の流れを見る力、といったような抽象的な表現しか残っていない」

「世界の流れを見る力、か」


 アンゼリカはセイルの答えを繰り返した後、何かを考えるようにじっとセイルを見る。


「……セイル。固有能力、というものを知っておるか」


 その言葉に、セイルはアンゼリカが何を言おうとしているかを察する。

 固有能力。すなわちアビリティ。

 この世界にもそういうものが存在している事は、オークジェネラルが証明していた。


「固有能力……まさか」

「そうじゃ。王族と呼ばれる者達は皆、何らかの固有能力を発現させる。それ故に妾達は「民を統べる権利を神より与えられた」と解釈されるのじゃ」


 王権神授説。その根拠となるのがアビリティ……固有能力だというのだろうか。

 しかしそうなると、モンスターの「固有能力」はどういう扱いなのか。

 聞いてみたい気もしたが、それは拙いとセイルは自制する。

 ……が、意外にもその答えはアンゼリカから齎された。


「されど、モンスターの一部に固有能力を持つ者が居る事も分かっておる。奴等は神から固有能力を掠め取った簒奪者であるとされているが……さて、お主はどう思う?」

「分からない。だが、オークジェネラルがそれらしきものを使った所は見た」

「それを討伐した、と。ククク、素晴らしいのう!」


 本当に愉快そうに笑うと、アンゼリカは「さて」と呟く。


「妾の固有能力は「看破」といってな。相手の大体の強さが色で見え……更に、固有能力を持っている場合はソレが見えるのじゃ」


 その言葉に、セイルは思わず立ち上がりそうになる。

 固有能力が見えている。それはつまり。


「ヴァルスラッシュ……というのは攻撃技じゃな。じゃが、もう一つが……くくっ、まさか「王族のカリスマ」とは。実に面白い!」

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