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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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決闘準備

 結局、騒ぎを聞きつけてやってきたギルド職員の立会いの下に、決闘は明日の朝と決まり……セイル達は、跳ね足の仔馬亭という名前の宿の二階の部屋にやってきていた。

 

 何かあるかもしれない……と見越してとった三人部屋だが、宿の主人の目が少し気になったような感じもする。


「それでセイル様。いつ殺しに行きますか?」

「ぶっ殺しましょう」


 やる気……いや、殺る気満々のアミルとイリーナをセイルは手で制する。


「待て、こっちが襲いに行ってどうする。むしろこっちが警戒する側だぞ」

「返り討ちですか!」

「望むところです」


 武器の手入れを始める二人をとりあえずそのままに、セイルはカオスゲートを取り出す。

 流石に夜討ち……はないとは思うが、警戒はしておくに越したことはない。

 だが何より警戒すべきは、決闘当日だろう。


 ギルドの立会いによる決闘のルールはシンプルだ。

 互いに刃引き……要は切れない武器を使っての試合。

 誰がどう見ても相手が負けという状況を作った方の勝ちになる。

 正直、セイルが負ける要素はないように見える。

 何故なら、カオスゲートで確認できるセイルのステータスがこうだからだ。


セイル

レベル5/99

物理攻撃:500(+500)

物理防御:400

魔法防御:400


【装備】

・ヴァルブレイド(☆☆☆☆☆★★)

・鎧


【アビリティ】

・王族のカリスマ

・ヴァルスラッシュ


ヴァルブレイドではなく普通の剣を使ったとしても、攻撃力は500。

 攻撃力200のアミルがゴブリンを一撃であったことを考えても、素のセイルの力がその辺りの連中に劣るとは考えにくい。

 それはトテラの森の時……サーニャがゴブリンを相手にした時に二撃を必要とし、それでもゴブリンが息も絶え絶えとはいえ生きていた事や、ペルナが何度か乱打しなければゴブリンを昏倒させられなかった事からも明らかだ。

 サーニャ達は恐らくそれなりの実力者だが、それでもレベル1のアミルの方が恐らくは攻撃力という点では強い。


「……」


 それでも挑んできたのは何故か。審判の買収? それとも何かの狡い手を用意している?

 まさかとは思うが、セイルが本当に弱いと考えているのか。

 こういう時、剣に何か仕掛けがしてあるというのは定番だが……。


「保険は、かけておくか……?」


 そう呟くセイルにアミルが何か反応する前に、宿の扉が叩かれる。

 その瞬間アミルがドアの近くに立ち、剣に手をかける。


「……どちら様ですか?」

「バルトだ。セイルはいるか?」

「ご用件はなんでしょう?」


 あくまで警戒を解かないアミルに、扉の向こうから困ったような声が聞こえてくる。


「明日の決闘の件で話がある。出来たら扉を開けてほしいんだが……」


 視線で確認するアミルに、セイルは頷いてみせ……そこでアミルはようやくドアを開く。

 扉の向こうのバルトはまず杖を構えているイリーナにギョッとして、次に剣呑な瞳で剣に手をかけているアミルに気付き両手をあげる。


「……勘弁してくれ。一緒に森を抜けた仲だろ?」

「すまないな。さっきの事があったから警戒してるんだ」


 セイルが苦笑まじりにそう返せば、バルトも「まあ、仕方ないな」と苦笑で返す。


「で、入っていいか? 心配なら武器は預けるが」

「お預かりします」


 アミルはバルトの腰の剣をベルトから外すとベッドに放り、届かないようにする。

 続けて何か暗器を持っていないか素早く視線を走らせるが……やがて、納得したように頷く。


「どうぞ」

「ああ……しかし、訓練された兵士みたいだな」


 そんなバルトの軽口は大正解だが、アミルは当然答えない。

 ただ、バルトが通った後の扉を閉めるだけだ。


「で、決闘の話ってことだが……どうしたんだ?」

「ああ。本当に受けるのか? 正直、あいつらはマトモな冒険者とは言い難いぞ」

「だろうな」

「正直、まともに戦うとも思えない。代役を立ててくる可能性もあるぞ」


 代役。初めて聞く事に、セイルは眉をひそめる。


「ギルド職員の説明にはなかったように思うが……そんなものがあるのか?」

「ああ。本人が戦えなくなった場合の特例だがな」

「なるほど、な」


 そこでセイルに勝てそうな人材を見繕ってくる。ありそうな話だ。


「用心棒ってのはハッキリ言って、裏に近い仕事だ。ろくでもない連中とのコネクションも出来るし、そういう連中には人間を普段から相手にしてる壊し屋みたいなのだっている」

「だとしても、今更無かった事には出来ないだろう」


 セイルがそう言えば、バルトは思わずといった様子で黙り込む。


「そりゃ……そうなんだがな。だが……事情をギルドで話せば、ひょっとすると無かった事に出来るかもしれん」

「連中がマトモでないなら……今頃明日は決闘だとか触れ回ってるんじゃないか? それを防ぐ為にな」

「黙らせてきますか?」

「やめろ」


 据わった目のアミルがそう聞いてくるが、セイルは一言で制する。


「心配してくれるのは有難いが……俺は負けるつもりはない」

「そう、か。余計な心配だったか?」

「いや、気にかけてくれて嬉しいよ。連中が卑怯な真似をしないように明日は見張っておいてくれ」


 セイルがそう言えば、バルトは胸を叩いて頷いてみせる。


「それは請け負った。何処まで役に立てるかは分からんが……な」


 そう言って部屋を出ていくバルトが立ち去ったのを確認すると……セイルは懐に入れていたカオスゲートを取り出す。


「どう思われますか?」

「真面目なんだろうさ」


 裏切って様子を見に来たわけではないだろう。そんな判断を下すと、セイルはカオスゲートに触れる。

 表示されている金額は、29シルバー75ブロンズ。


「さて、準備を始めようか……ガチャという準備を、な」

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