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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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201/228

向かう先

「入るのはいいが……何処に行くんだ?」

「え?」

「まさかとは思うが、洞窟の中に隠れ潜むとか言わないだろう?」


 だとすれば、セイル達はそんなものには付き合えない。

 そんな想いを込めて聞くと、アークは「まさか」と答える。


「そんな事しても、一生逃亡者なだけじゃないか。意味が無いよ」

「だろうな。しかし、それなら」

「まあ、無理についてきてくれとは言わないよ」


 言われて、セイルは仲間達を見る。

 コトリはサッと視線を逸らすが、ウルザは少し考えた後に「いいんじゃないかしら」と呟く。


「他にあてがあるわけでもなし。ついていっても損はないと思うわ。それに……」


 ウルザの視線が向かう先は、セイルの上でふよふよと浮いているナンナだ。


「その妖精が何も言わないんだもの。ついていく、で正解なんじゃないかしら」

「……そうなのか、ナンナ?」

「うーん。ビビッとはこないけど、たぶんそれでいいじゃないかなー」

「そうか」


 頼りにならないな、とは言わない。

 ナンナの「導き」とやらの正体は分かっていないし、その時が来ればナンナが何かを示すのだろうという予感がセイルにはあった。


「どうする?」

「ついていく事にしよう。それが一番良さそうだ」

「よし、なら決まりだ」


 手を叩くと、アークは洞窟の中に入っていく。

 後を追うようにセイルが入ると、薄暗い洞窟の中はアークの言う通りジメジメしている。

 そして……先に入ったはずのアークとメルトが、振り返ってセイル達をじっと見ていた。


「……どうした?」

「いや、その。言い難いんだけど……」

「明かり、持ってないか?」

「……ん?」


 アークとメルトの言った意味が分からず、思わずセイルは首を傾げてしまう。


「明かり? 持ってるか、何か暗視の能力とかがあるんじゃないのか?」

「いやあ、むしろ僕は暗いと何も見えないからなあ」

「俺は普通の人間だし?」

「ならなんで率先して入ったんだ……」


 しかし、明かりと言われてもセイルはそんなものを持っていない。

 強いて言えばヴァルスラッシュの時にヴァルブレイドが輝くが、そんなものを常時やっているわけにもいかない。


「……ウルザ、コトリ。何かないか?」

「残念だけど手持ちにないわね」

「ございます、と言いたいんですけどねえ。荷物持ってくる暇ありませんでしたし」


 ウルザは肩をすくめ、コトリは「何かないですかねえ」と言いながらポケットを探り始める。


「うーん、やっぱりないですねえ」

「そうか。となると……確か木を擦り合わせると火がつくんだったか?」

「そんな単純なものでもないわよ。確かコツがいるんじゃなかったかしら」

「そもそも火口がないですけど」


 ワイワイとセイル達は話し始めるが、そんなセイルの頭をナンナがぺしぺしと叩き始める。


「ん? どうした。何か案があるのか?」

「ていっ!」


 セイルがナンナを軽く掴んで降ろすと、セイルの眼前でナンナは薄い光の玉のようなものを纏う。

 それは何かバリアのようなものではなく、単純に光っているだけのようだった。


「これは……?」

「セイルの欲しがってる明かりだよ? もっと強く光る?」

「あ、ああ……それは助かるが。そんな能力があったのか?」

「うん!」


 言いながらナンナは明るさを強め、アーク達のところへと飛んでいく。


「ほら、虫の人。ちゃっちゃと案内して?」

「虫の人って。僕にはアークって名前があるんだけど」

「同じようなのが来た時に区別できる自信ないし……」

「酷いな!?」


 言いながらも発光するナンナとアークは洞窟の奥へと歩いていき、その後をメルトとセイル達が追う。

 自然とセイルとメルトが並ぶ形になり、メルトはセイルに興味深げな視線を向けてくる。


「……セイルって言ったっけ?」

「ああ」

「どっかの王族か?」

「何故そう思う」

「何故って。只者じゃねえ雰囲気があるぜ。しかもかなり良い物だろ、その鎧。一般人に買えるようなものには見えねえ」

「……なるほどな」


 確かにセイルの着ている「王族の鎧」は星3の鎧だ。

 この世界の基準でいっても相当な代物であることは間違いない。


「確かに今は1つの国を統べる立場ではある」

「そうか。どこの国だ?」

「何処の国……か」


 今のメルトの言葉から、どうやらグレートウォールの崩壊前にこの大陸に辿り着いたのだろうとセイルは察する。

 

「恐らくお前の知っているだろう国は全て滅びたぞ」

「はあ!? なんでそんな事に」

「グレートウォールの崩壊の影響でな……その辺りの事情は」

「いや、それはアークの奴から聞いたけどよ。え? それじゃお前の国って」

「ガイアード王国という。帝国が滅びた跡に創った国だ」

「なんてこった」


 自分の顔を手で覆って、メルトは呻く。


「人間やべえだろなあ、とは思ってたが想像以上にヤバいじゃねえか……おいアーク、聞いてるか」

「聞いてるさ」


 先頭を歩いていたアークは、その言葉に振り返る。


「だから言っただろ、メルト。君が此処に流れ着いたのはある意味で幸運だったかも……ってさ」

「って言ってもよお。そんなアッサリと……」

「僕等は皆予想してたよ。予想外なのは……」


 言いながらアークはセイルと視線を合わせる。


「君達だね」

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