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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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レア度の低いアイテムは売るべきか残すべきか

 依頼の紙をはがしてカウンターに持っていくと、職員はギョッとした顔をする。


「え……。これ、お受けになるんですか?」

「ああ」

「いえ、しかし……無茶ですよ。流石にギルド職員として受理できません」

「問題ない」

「そう言われましても……いえ、やはり無理です。ゴブリン退治の方でしたら受理できますが」


 無理です、と繰り返す職員を見て、セイルは諦めアミルに視線で促す。

 それに頷くとアミルは手早くゴブリン退治の依頼書をはがして持ってくる。


「なら、これで問題ないな?」

「はい、これでしたら……受理いたします。カードをこちらに」


 冒険者カードを何かにかざしていた職員は、そのまま二人のカードをカウンターへと戻す。


「終わりましたら、またカードを持ってきてください。退治数はカードに記録されますので、特に証拠の品などは今回必要ありません」

「分かった。ところで、このゴブリンだが……」

「はい?」


 先程はがしてきたオーク退治の依頼書とゴブリン退治の依頼書を交互に指で叩き、「トテラの森」の部分を指す。


「同じ場所に見えるが、オークに遭遇してしまった時には倒してもいいんだろう?」

「えっと……ええ、まあ。ただ、逃げる事をお勧めしますが……」

「ああ、分かった」


 それさえ聞ければ充分だ。万が一オークに手を出すなと言われてしまえば今回は諦めるつもりだったが、別に倒しても構わないならやりようはある。


「行くぞ、アミル」

「はい!」


 身を翻し出ていくセイル達の耳には、恐らくは聞こえないようにだろうが「死ぬな、あいつ等……」とか言っている職員の声が聞こえてくる。

 恐らくは、そこまでオークは強いのだろう。


「トテラの森、か……」


 依頼書を裏返してみれば、トテラの森までの簡単な地図がついているのが見える。

 そこまで遠くは無さそうだが、場合によっては野営もあるだろう。

 しかし、野営用の道具など何一つ持ってはいない。

 当然、金もない。


「……」

「どうしました、セイル様?」

「いや……たいしたことじゃないんだがな」


 セイルの視線の先には「バラムント武具店」と書かれた看板がある。

 依頼に行く前に手っ取り早く金を得るには、持っている武具を売るのが早い。

 順当に考えるなら、一番使用率の低い鉄の斧を売るのが正しい選択だろう。

 セイルは近くの路地裏に入ると、金属板を取り出しメニュー画面を開く。


「鉄の斧……と。よし、あった」


 選択すると、路地裏の土の上に鉄の斧が現れる。


「それは……斧、ですか?」

「ああ。これをそこの店に売ろうと思ってな」

「良い考えとは思いますが……」


 何かを言いたそうにチラチラと見てくるアミルに、セイルは「どうした?」と問いかける。


「いえ、その……斧を抱えて店に入るというのは、その……」

「む」


 斧を手に、店の中に入り込む男。控えめに見ても殴り込みか押し込み強盗だ。

 しかし、布か何かに包もうにも適当な布など持っていない。


「一度仕舞うか……」


 しかし、メニュー画面にはアイテムの格納コマンドなどない。

 ないが……金属板を鉄の斧に向けてみると、新しい文字が浮き上がる。


―鉄の斧を取得しますか? はい いいえ―


 はい、の項目をクリックすると、鉄の斧は光となって消えてアイテム一覧に現れる。


「なんだろうな……アミルの剣と反応がちがうが……」


 思わぬところで機能の確認が出来てしまったが、これを使えば問題なく鉄の斧を持ち込めるだろう。

 問題は、金属板を貴重なアイテムと狙われないかだが……これは、もう妥協し許容するしかない。


「よし、入るか」

「はい!」


 アミルを伴ってセイルが店に入れば、店のカウンターで暇そうにしていた店主が不愛想に「いらっしゃい」と声をかけてくる。


「悪いが、ウチにはお貴族様に売るようにゃ大した武器はねえぞ」

「そんなものは気にしなくていい。今回は持ち込みだ」

「持ち込みィ?」


 訝しげな顔をする店主の前で、セイルは金属板を操作してカウンターに鉄の斧を呼び出す。


「んなっ……今のはもしかして、ボックスの魔法……いや、魔法具か!」

「そんなことはどうでもいいだろう。それより、だな」


 セイルがカウンターを指で叩くと、店主はハッとしたようにカウンターの鉄の斧へと視線を落とす。


「あ、ああ……買取ってことでいいんだよな」

「そうだ」


 頷くセイルを見て、店主は鉄の斧を確認し始めるが……やがて、その目が見開かれ始める。


「……こりゃすげえな。鉄で此処まで出来るのかよ。かなり良い斧だぜ、こりゃあ。マジで売るのか?」

「少しばかり入用でな」

「そうか……いや、こいつはいいな……何処のどいつがこんなもん作ったんだか」


 感心しながら見ていた店主だが、ハッとしたようにカウンターの下からゴソゴソと袋を取り出すと、その中から何枚かの銀貨を取り出しカウンターに置く。


「これ程のもんなら、シルバーで10出そう。素材っつーか技術そのものに対する代金だな。こいつが剣だったら20出してたかもしれん」

「そうか。では成立だな」


 鉄の剣もダブってはいるが、出すつもりはない。

 セイルは銀貨10枚を金属板を使って格納すると、アミルを連れて店を出る。

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