序章:寝坊助な俺
いつからこんな事になったんだろう…
俺は体育倉庫の中で煙草を吹かしている
外からは壁を叩いたり、扉に体当たりする音が聞こえた
俺はバールを担いで跳び箱に登った
12月24日 PM3時
草薙慶一、とある工業高校の3年
成績悪し
ビッグスクーターを改造した巨大な流線型のバイクを乗り、学校へ向かった
(あ〜あ…遅刻かよ…)
遅刻どころかもう学校は終わる
しかしそれなのにバイクに乗り学校へ向かっている
意外と真面目なのかも知れない
慶一はふと思う
国道なのに何故車が一台も走ってないのかと
そして人が歩いてない所か血痕があちらこちらにある
左のハンドルを捻り、引っ張ると一本の刀が前方から飛び出して来るそれを引き抜くとバイクを静止させた
とりあえずバイクは置いて学校へ続く道へと足を向けた
「……なんだコレ…」
短い髪の頭を掻きむしり、状況を察する
しかし生徒の死体があちこちに転がっている惨状など、理解出来る訳がなく
慶一は立ち尽くすのみだった
"もっと武器を持ってくればよかった"
慶一がそう感じる事になるのは後の事である
刀はどこかに落とした
回りは死んだ筈の生徒達だらけだ
今あるのはバール一本
「きやがった!」
ドアが吹っ飛ばされ、中に死体が入り込んでくる隣の部室棟の屋根に飛び乗り走る
そして向こうの校舎にあった窓を割り中に侵入する
「はあ…おっかねぇな…」
そう呟きバールを担ぐ
1m位あるバールだ、結構な重量がある
とりあえず今は必要ないから担いでのんびり歩いて行く
階段を登り曲がる所で誰かにぶつかる
「あいだ!」
おっさんか!
そうツッコミを入れたくなる声を発した女を見た
……確かクォーターの三嶋秋ちゃんだ
「あれ?慶一君だ、逃げた方がいいよ〜」
間延びした声でそう言われた
秋の後ろを見ると牛と人の体を持つ巨漢、2m位もあるが
デカイ鉄パイプを持って音を立てて走って来てる
「……逃げっぞ!」
秋を先に走らせ慶一はバールを構えた
階段の手摺りを使って高く跳躍し、ミノタウルスの首に叩き込んだ
「………」
「…ブモ」
ミノタウルスの拳が直撃して慶一は吹っ飛ぶ
天井に当たり床に叩き付けられた
「ぐぇふ!」
このぐぇふ!で済む俺もすごいが一つ確信した
「勝てないな、こりゃ」
直ぐさま振り返りダッシュで逃げる
ミノタウルスは足はそんなに速くはない
とりあえずちんたら走っていた秋を抱え上げ、三階に逃げた
「はあ…はあ……つ、疲れた〜…」
息を切らしながらそう言う
本気で疲れた
汗ダクダクの息ゼイゼイって奴だ
「お疲れ様〜慶一君」
お疲れ様じゃねぇよこのアマ
「…なんで街がこんな状況に?」
誰のせいだと思ってると言いたい所だが仕方ないからいきさつを聞いて置こう
「えっと…あれは今日の朝でしたね…」