噂の廃墟
真夏の太陽が降り注ぐ季節
2人の男子高校生が高校最初の夏休みを迎えていた
有馬「なー、高校生になって初めての夏休みだしどっか遠出しねー?」
彼の名前は村上 有馬
つい数ヶ月前に高校に進学したばかりの男の子だ
悠人「って言っても俺らしがない高校生だぜ?行ける場所なんて限られてくんだろ?お金的に」
有馬の言葉に返答したのは中学からの親友である皆月 悠人
2人とも高校生初めての夏休みでワクワクしていた
有馬「お金か…バイトするか?」
悠人「いやーさすがにいきなりバイトはしたくねーよ」
有馬の冗談交じりの提案に悠人は割とマジな方で拒否する
2人とも高校生になって最初にしたいことはまず彼女を作ることからだ
バイトなんてむしろしたくなかった
有馬「んーだったらさー…あの立ち入り禁止の場所に行かねえ?」
有馬の言う立ち入り禁止の場所とは町外れにあるとある廃墟のことだ
立ち入り禁止になったのはある事件が起きているからだ
約3年前に大学生6人組が肝試しという遊び感覚で入ったところ
数日後に全員遺体となって発見された
警察も捜査に入ったが捜査に入った警察官の6名が行方不明になり
数日後に全員遺体となって発見されたらしい
その事件があって以来立ち入り禁止場所にされている
しかし有馬は好奇心に駆られてすごい行きたいという雰囲気を醸し出している
けど当然悠人は嫌がる
悠人「いやいや有馬?あそこ立ち入り禁止だしなにより死人が出てるんだぞ?俺らそこに行ったら死ぬだろ。やめようぜ」
普通に考えれば悠人の言ってることは正論だ
計12名の原因不明の死亡者が出てる時点で普通の高校生が2人で行くのは危険すぎる
けど有馬には有馬なりの考えがあって行こうとしていた
有馬「でもよー、死んでるのって2つとも6人だろ?警察だって10人くらい捜査に入って4人は普通に帰ってきたんだし俺らは2人だから関係ないんじゃね?6って数字がなんか気になる」
悠人の正論も全く耳を貸さずに有馬は廃墟の方角へ向かう
有馬の性格上止めても無駄だなと悠人は分かっているため
渋々一緒に行くことにした
数分後……………
森を抜けて町外れに着くと
目的地が見えた
まだ明るいから廃墟はなんともワクワクするような光景に有馬には見えていた
有馬「俺初めて見たけど案外普通じゃね?」
隣にいる悠人も頷く
悠人「そうだな。警察の立ち入り禁止のテープが貼ってあるくらいで見た感じは普通の廃墟だな…」
あまりに普通すぎて内心ちょっとビビっていた悠人も拍子抜けをする
悠人がボーッと見ていると気付いたら有馬がすでにテープを潜っていた
悠人「お、おい!有馬待てよ!」
有馬「早くしろよー」
有馬に続いて悠人も慌ててテープを潜り廃墟に入る
中はガラスが割れていたら色々散らかっている
少し進むと有馬が急に足を止める
有馬「……おい、悠人。これって血じゃねえか?」
有馬の指差す方を見るとそこには乾ききっているけど確かに血らしき跡があった
悠人「うわ…ちょっとエグいな…」
乾ききっている血とはいえ
血を見るのに慣れてない2人は少し気持ちが悪くなる
有馬「ん?なあ…あの部屋特に血がヤバくないか?」
有馬が言った部屋は確かにそこの部屋だけ血の跡がかなり大量に付いていた
悠人「もしかしてここが事件があったっていう大学生と警察官が死んでた場所なのか…?」
有馬「か、かもな…」
有馬は目を逸らし悠人は部屋に足を進めて行った
さすがにここまでヒドイ状況とは思っていなかったので言い出しっぺの有馬だが
帰ることを提案しようとした
有馬「悠人…悪い、言い出しっぺは俺だけどそろそろ帰らないか?」
有馬は悠人のいる部屋に振り向く
しかしそこには悠人の姿が見えなかった
有馬「え?悠人?おい?隠れてんのか?」
辺りを見回すけど特に隠れられるような場所はない
でも確実にさっきまで近くにいた悠人が目をちょっと離した隙に消えていた
有馬「おい悠人!?そういう冗談はマジでいらないから!」
大声で怒鳴っても悠人からの返事は一切ない
一気に恐怖が出てきてこの場から離れたくなるけど悠人を置いてはいけない
少し深呼吸をして冷静になる
悠人はどこに行ったのか動きを止めるのは怖かったけどなんとかして考える
そしてあることを思い出す
自分が目を離した時に悠人は血まみれの部屋に入って行った
そこから悠人の姿を見失った
有馬「まさか…あの部屋か?」
有馬は恐る恐る部屋に近づき
そっと中の様子を見る
しかし悠人がいる気配がない
今度は恐る恐る部屋の中に足を踏み入れる
有馬「悠人…?どこ……え?」
部屋に入った瞬間に有馬は違和感を感じた
見間違えなのかどうか分からないけど部屋が歪んで見える
そして同時に激しい眠気が有馬を襲う
有馬「な、なん…だ?これ?」
なんとか平静を保とうと必死になるものの有馬は意識を失っていった