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序章8話

「…………」


んぁ……何か、声が聞こえる気がする……。


「ねぇ……起きて……」

「ふあぁぁ、んー?」

んっ?あれ?えーとアンネさん?と、後ろに二人女性の人が居る?


「ごめんね、お休みの所」

「いえ、あの、どうしたのでしょうか?」

「実はね……彼女達も馬小屋に泊めても良いか聞こうと思ったんだけど、貴女以外誰も居ないのよ。で、申し訳ないけど起したの」

「え?……私しか、居ない?」


言われて周りを見回すと確かに誰も居ない……。雑貨の入った鞄等はあるけど貴重品等は無いみたいです。


「たぶん、外に出てるんだと思うんですが……」

「今、8時よ?流石にこの時間で帰ってこないって無いと思うんだけど?」


え?今、8時?夜の8時ですよね?えっ?うそ!?いや、ばっ晩御飯に行ってるだけかも?でも、幾らあの人達でもご飯で4時間も時間かかるわけない……。


皆、どっどこ行ったの?何か良くない事に巻き込まれたとか!?どっどうしよう!!どうしよう!!


「ちょっ、ちょっと落ち着いて!?ねっ?」


おおっそうです。落ち着かなきゃ……。でっでも、見知った人が居ないのがこんなに不安になるなんて……。かっ体が震えてきた。


「ねぇ、アンネ。私ら、ちょっと探して来ようか?」

「ありがとう、メリンダ、シャノン。でも、貴女達、この子の連れ合いの顔わからないでしょう?」

「それはそうですけど……ああぁ、泣き出しちゃいましたね……ほら、大丈夫だからね?」

「うっううぅぅぅ……ひっく……ひっく……ずっずびばせん……」


シャノンさんと言う女性の冒険者さんが私を抱きしめてくれて、背中をポンポンしてくれたお陰で大分落ち着いたのです。それにしても皆どうしたんすかね……。


「はぁ、冬も明けたから宿代節約しようとしたらまさかこんなトラブルに遭遇するとはね」

「すっ、すみませんです……あっ、皆さんが良ければ一緒でも構いませんです」

「この子は……こんな時でも気ぃ使う子なんだなぁ。うちのボンクラーズにも見習わせたいぜ」


!?ボッ、ボンクラーズ!?

ちょっと、その、ごめんなさい。今噴出しそうになったですよ。主にそのネーミングセンスに……。


「あっ、うちのパーティの男共だよ。ほんと、脳筋な奴等でねぇ……迷宮以外じゃ使い物にならないよ。はぁ……おっさんになんか良いバイト紹介してもらわないとなぁ」

「ちょっと、メリンダ。……いくら事実とは言え知り合ったばかりの冒険者希望の子の前でそう言う物の言い方は、お姉さんとしてはどうかと思うんだけど?……おじさんにバイト紹介してもらうのは同意するわ」

「事実である事は隠したりしないのかい!!」

「貴女が先に言ったんじゃない。お姉さんは心外ですよ」


これって、私の気持ちを落ち着かせるため冗談いってる?

ああぁぁ……そういえば、こんな事してもらえてのって何時以来かなぁ……。


「ぷっ……くっ……そ、その、おじさんって、どういう人なんですか?」

「ようやく笑えたね。辛くて苦しい時ほど笑顔でいろよ。そうすれば必ず良い事はある。ってかっちょいいセリフを顔面まっかっかにして言った人だな」

「そうそう、そこでキリっとして言えてたらまあ、ちょっとは?ダンディかも?って思える人ですか」

「……なっなんか、その方凄く哀愁漂う人ですね?因みにお名前はなんという方なんですか?」

「ああ、そのおっさ……」


メリンダさんが、その人の名前を言おうとしたその時、馬小屋の扉が開いたのでした。そして開けた人物は私の良く見知ったアーネストで、勢い良く飛び込んできたのはフィオナでした。


「セラ!!こんな小汚い馬小屋じゃなくて、綺麗なベットのある宿屋を見つける事が出来たわ!!そっちに行くわよ!!」

「……はぃ?」

「まぁまぁ、フィオナ落ち着きなよ。セラが混乱してるぞ、ああ、実はね……」


話を、まとめると……。私が寝ちゃった後、皆で冒険者ギルドに様子を見に行ったら受付に居た綺麗なお姉さんに時間外になるけど折角だからとクラスの適正検査をさせてもらい、そのまま冒険者に登録しちゃって、しかも、丁度、6人なら扶助制度の対象だから武具の支給が受けられて尚且つ、支度金として金貨60枚を借りれたから、ここよりも6人が泊まれる綺麗な宿屋を1ヵ月借りたと……。


「あの……私の、登録は?」

「セラはまだ子供だし、しばらくは僕等のポーターとして雇う形になるよ。で、1、2年ぐらいで冒険者登録しても十分だと思う」


あの、私の、私の意志はそこには無いのですか……。

考慮してくれないのですか……。

ああぁぁぁ、膝がガクガクする……なんか、力が抜けてゆく……。

血の気が引くってこんな感じなのかな……。


「……あんた等、さいってぇぇぇだね」


とても、冷え冷えとするメリンダさんの声が、聞こえました。

さっきまで、私を安心させようと朗らかに笑みを浮べていたメリンダさんとシャノンさんが凄く、まるで能面の様にあの人たちを見据えていました。


「なによ。いきなり失礼じゃないの」

「はっ、さいってぇぇぇなあんた等に持つ礼儀なんざないがね。あんた等、冒険者として一番やっちゃいけない事をやりやがったな?」

「えぇ、そうね。『仲間を尊重し、決して裏切るなかれ』冒険者として最も重きをなす戒なのですけどね……初手からこれを破る人を……いえ、人達を始めて見ました」

「なっ何を言ってるんですか!!僕等はセラの今後の事を考えて……」

「……本人の選択の機会を奪って事を成すのが考えた結果かよ。あんた等がこの子を含めて話し合い、納得した上での選択ならあたし等は何も言わない。だが、あんた等は目先の金や物資に目が眩んで『仲間』の意思を尊重しなかった。これを裏切りと言わずになんて言うんだい? 覚えておきな、あたし等が口をつぐんでもこの手の噂話はあっという間に広まる。今回は成り立ての新人が馬鹿やった程度ですむと思うが、次にやらかしたら……あんた等は元より次に街に来るあんた等の村の連中が肩身の狭い思いをする事なるからな」


そう、一気に捲くし立てたメリンダさんは、あの人達をそれはそれは汚らわしいと言わんばかりに見下した目で睨み付けたのでした。


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