序章7話
時間ギリギリで駆け込んできた馬鹿共を後生大事にサービスする気が俺にはわからん。
声がどうにもキンキンする頭の悪そうな小娘らと楽しそうにお話してるあの「リーゼロッテさん(笑)」のやつもな。……これだから縁故採用者はって言われるんだよ。あー腹立つわー。
「あっ、あのぉー」
「んあ?……ああ、君かどうした?」
「私、今日は早く帰らないといけないんですけど……」
ちらちらと、馬鹿共を見る事務を担当してるお姉ちゃん。そういや、名前はミナだったな。あー、今日は息子ちゃんの無事に7歳を迎える事が出来た特別な誕生日とかで早く帰るって言ってたなぁ。「リーゼロッテさん(笑)」の下に居るから下手に捕まったら帰れなくなるだろうな。
「あー、さっさと帰りな。何か言われたら俺がけぇれ、けぇれって言って追い出したって言やぁ良いからよ」
「でも……」
「いいって、ほら、今日は息子ちゃんの誕生日で早上がりするって前々から言ってたし、上もそれ了承してたろ?それでも今の時間まで働いてたんだからな。ああ、そうだ。帰りに直営の酒場よってけよ?俺から息子ちゃんにプレゼント用意しといたから。あっ、序に荷物運びはマッシュの野郎に頼んでおいたからな」
「ええぇ!?……すっすみません。いえ、その、ありがとうございます。このお礼は……」
「いいから、早く行けよ?じゃないと、捕まったら帰れなくなるぞ、ああ、目立たない様に裏口から帰れよ」
何度も頭を下げる彼女を無理やり裏口から帰らせた。はぁ、ため息出る。……正確には息子ちゃんへのプレゼントってよりは、あの「リーゼロッテさん(笑)」の所為で息子ちゃんの7歳と言う特別な誕生日のご馳走を作る時間を潰されちゃった埋め合わせだしなぁ……。
因みに、ミナは未亡人だったりする。旦那さんは徴兵期間中の盗賊討伐の際に戦死したそうなんだわ。で、マッシュの野郎はその旦那の親友でショックを受けてたミナを何くれとなく支えてた純情野郎だったりするんだわな。……なんで、俺こんな事に気ぃつかってんだろうなぁ。泣けてくるわ。
おっといかん、いかん。そろそろクラスの適正検査とかで宝珠持って来いって言うだろうな。後序に金庫の鍵も出しておくか……。あいつの事だから扶助制度の上限まで貸し出して長期間ギルドのパシリにする気満々だろうし?自分の息の掛かった宿屋なり武具屋なり紹介して散財させるだろうからなぁ。ムカつくガキ共だが、まあ、ご愁傷様ってこった。
ざっと紹介状を見た所、セラと言う子は今年で10歳。まだ、誕生日が来てないので9歳ね。これなら叔父様も説得できそうね。
「確かに、冒険者ギルドの規定ではその年に10歳になる男女とあるけど、実際の所その要件で冒険者に成る子はほとんどいないのよ」
「ほら、私の考えてた通りじゃない」
「そうなんだ……確かにセラはまだ子供だし……」
「ですので、私としてはまず、皆さんで冒険者登録をして彼女を……そうですね、ポーターとして雇う形にすると良いのではないかと思います。このようにすれば、皆さんと同じぐらいの年齢になった時に別の人達を紹介して冒険者になっても問題ないわけです」
「でも……そうするとセラの身元を保証する術が無いと思うんですけど」
「それも心配ありません。冒険者として冒険者ギルドで実績を積んでいれば皆さんの保証があればギルドとしては問題ありません」
「なるほど、僕はリーゼロッテさんの意見に賛成するけどどうかな?」
「アーネストやフィオナが賛成なら構わないよ」
「おっおでも……」
よし、このメンバーのキーパーソンはフィオナさんとアーネスト君ね。意思の最終決定はアーネスト君がするけど、かなりフィオナさんの意思が反映されそうね。
「では、クラス適正を検査しましょう……。ミナ!!宝珠を持ってきて!!」
「ほらよ」
「え!?ちょ。なんでゴルノフさんが?」
「彼女ならとっくに帰ったぞ。因みに俺は今日は夜番の日だからな」
「なっ!!何を勝手に……」
「元々、昼で上がるって「ギルド長」も了承してたのに結局誰かさんが受け付け終わるまで働かせてたんだろ?帰るのは当然だろが。……ああ、それと金庫の鍵も用意して置いたぜ。遣い終わったら元の場所に戻しておいてくれや。俺は番所いるから、用があるんなら声を掛けてくれ。もっとも、優秀なリーゼロッテさんには必要ないと思うけどな」
「あっ当たり前でしょ!!さっさと行きなさい!!」
「へいへ~い」
のっし、のっしと番所に移動するゴルノフ。私の事を馬鹿にしてるとしか思えない。
「何あれ、感じ悪ぅ……」
「だね、何様のつもりなんだろう」
「まっまあ、とりあえずアレはほっといてクラスの適正検査をしましょうね!!」
気を取り直して、宝珠を用いて検査した結果。
戦士にはアーネスト君、クローディアさん、モーリス君。
スカウトにはクロル君
四属性魔術師にはエリスさん、
そして、光属性魔術師にはフィオナさん
となった。普通この手の適性検査ではまず、誰がスカウトをやるかで揉めるし、四属性魔術師は兎も角、回復魔術と支援魔術を使える光属性魔術師はめったに出てこない。
これは、非常に有望なパーティであろう。なんと言う幸運、それを、あの馬鹿は追い返そうとするなんて!!
まあ、クロル君は若干不満みたいだったけど、私がスカウトはパーティの目として最も重要なクラスなのよ?って嗜めたらあっさりと納得してくれた。まあ、時間外業務だけど私って運が良いわ。
「クラスも決まった事だし、扶助制度について説明するわね」
「扶助制度、ですか?」
「ええ」
扶助制度、正式名称は「迷宮攻略冒険者、扶助制度」と言うの。この制度は迷宮で戦うにあたり最も効率の良い6人編成でパーティを組む新人冒険者への支援制度で初心者用の武具の支給や、最大で一人頭10金貨を無利子でパーティに貸し出すことが出来る。
ただし、この扶助制度を利用した場合、貸し出した金貨の倍額を返納してから3年間は制度の申請を行ったメンバーでパーティを組み続けなくてはならない。例外は冒険中にメンバーが死亡した場合のみである。なお、扶助制度で貸し出したお金はパーティ全体で借りてるお金になる。
次に、月に決められた回数はラオルスクの迷宮へ挑み、迷宮の魔物を間引く事が義務付けれる。
金貨の返納をしても3年間はギルドの指名クエスト等を優先的に受けなくてはいけない。この契約は後に発効されるステータスカードに登録されるので、悪意を持って破った場合は全世界の冒険者ギルドでの恩恵が受けれなくなる。
「規約としては以上です。返済の額を抑える事で新人の冒険者への負担を減らしつつ、生存率を上げるための装備の支給や資金の調達が出来るのです。その代わりと言っては何ですが、その後3年間はパーティを組み続けたり、ギルドからの指名クエストを受けたりしてもらう必要もありますけど、この点も大丈夫でしょう。同じ村の出身で仲も良さそうですから人間関係に問題もなさそうですしね。皆さんは丁度バランスの良いクラス編成ですし、何より回復や支援が得意な光属性の魔術師がいるので、迷宮で経験を積めばあっという間にお金の返済も出来るでしょう。」
様子を見れば、彼らが私の説明に満足しているのが良くわかる。それも、そのはず。彼らは装備の質の向上を行う為の資金を有利な条件で借り入れる事が出来るし、ギルドも緊急時に融通できる人材を確保出来る。双方に利益が出るんですものね。
後はカードを作り、扶助制度を適用し、限度額一杯の金貨60枚を貸し出す旨をカードに記載し、とりあえず現金は金貨5枚で渡した。
「ねぇ?貴方たちって泊まる宿屋決まってるの?」
「ええ、一応。跳ねる猪亭の馬小屋ですが……」
「良かったら、私の知り合いの宿屋を紹介しましょうか?そこなら6人で1ヵ月、金貨5枚で部屋を借りれる宿屋を紹介するけど?」
「ええぇぇ!?本当ですか!!是非、お願いします!!」
「じゃあ、このままちょっと待ってね。仕度出来たら、行きましょう」
「「「「「「はい!!」」」」」」
とりあえず何とか投稿します。
ただ、色々詰め込みすぎたので、解り難くなってるかもしれないので、いつか改稿するかもしれません。申し訳なしorz