序章6話
衛兵長のグレンさん、炎の鉄鍋亭のグレンダさんに跳ねる猪亭の、亭のぉ、あっ名前聞いてなかった。明日、聞いておかないと。……今日は本当にありがとうございました。そして、神様、いい人達に巡り合えたご縁をありがとうございます。
「よっし……藁も沢山敷いし、……ああぁぁ、よくお日様に干してたんですねぇ良い臭いがする……の、ですぅ……」
ごろんと、藁の上に寝転がると流石に疲れたのか眠気がします。本当に、いい臭いですねぇ……。今日は、いえ、今日も疲れたのです……体もそうなんですが、心の方も……ちょっと、ちょっとだけ仮眠、しますぅ……。
「おや?セラの奴もう寝ちまっただよ」
「あら、本当ね?まだ、4時の鐘の前なのに。まだ9歳じゃ仕方ないんじゃないの?」
「ねぇ!!まだ時間も有りそうだから冒険者ギルド行って見ない?」
すやすやと眠るセラを尻目にメンバーで一番大柄なモーリスと、一番(ある箇所が)大きいエリスが話していると、フィオナが話しかけてきた。
「え?でも、セラ寝ちゃってるわよ?良いの?」
「そうだぁ、起すの可哀想だよぉ」
「大丈夫、そのままで寝かせとけば良いじゃない。それに、ちょっと様子を見に行くだけだって」
「でも……」
「ほら、皆待ってるんだから行くよ!?」
フィオナは、メンバーのある意味一番の有力者である為にその意見を蔑ろにしにくい……。このままセラだけを置いていって何かあったらと思うと……。
「大丈夫だって、宿屋のおじさんにちゃんと言ってきたからさ」
「本当?……じゃぁ、ちょっとだけ見に行こうか?」
宿屋のおじさんに話をしてあれば大丈夫だよね?ちょっと見に行ってくるだけだからお休みしててね。
幸い、この宿から冒険者ギルドはさほど離れてはいないので直ぐに戻ればそれ程問題も無いだろう。そう、エリスは考えたのだった。
冒険者ギルドの受付業務は4時の鐘が鳴り終わったら終了する事になる。
今日も受付担当のリーゼロッテは新人冒険者の登録作業をそつなくこなしその後片付けを終えて帰る準備をしていた。
「ねぇ!!良いじゃないの!!まだ、時間あるんでしょ!?」
「あのなぁ~。今から冒険者の登録は出来なかないが、ろくに説明できねぇから明日にした方が良いっていってんだろ?」
ギルドの入り口で聞き覚えのある声が聞こえる。同僚のゴルノフだろう。リーゼロッテからしたらゴルノフはちゃらんぽらんでよく仕事をサボる不良職員だった。
「大体よぉ~。この紹介状7人じゃねぇか。お前ら今6人しか居ないだろうが、もう一人はどうしたんだよ?」
「だから、私達の荷物を見てるから宿屋に居るって言ってるじゃないの!!」
「うるっせぇなぁ。もちっと静かにしゃべれねぇのかよ。頭にキンキン響くじゃねぇか」
「なんですって!?」
……6人!?ちょっとあの馬鹿、もしかして追い返すつもり!?
荷物をカウンターに置いて、入り口まで早足で、しかし、なるべく優雅に歩いてゆくと12~13歳ぐらいの男女3人づつの子供達が案の定、ゴルノフに軽くあしらわれていた。
「ちょっと、ゴルノフさんよろしいですか?」
「ああぁん?……なんだ、りーぜロッテさんじゃないか」
「彼ら、登録希望者ですか?」
「ああ、そうだが?」
「なら、業務はまだ終ってません。受付るべきでしょう?」
「あのなぁ、こいつ等の紹介状は全員で7人、今こいつ等が居るのは6人なんだよ。バリキャリのリーゼロッテさんならお解かりになると思うけど要件も満たしてないから、そこの少年少女さんらにはお引取りしてもらって、明日出直してきてくださいね?ってやんわりと説明してるんだが」
そんな事は解ってる。でも、6人で来た彼らの登録を受け付ければ今月のノルマを達成出来るのよ!!
私はあんたみたいなギルドのごく潰しとは違うのよ。
「その割にはぞんざいな受け答えでしたね?……この事はギルド長に報告します。それと、彼らの受付は私がやります。よろしいですね?」
「はあ!?あんた正気か!?」
「よろしいですね!?私は貴方よりも上席です。これは命令です」
「……ああ、そうですかい。どうぞ、お好きになさればよろしいんじゃないんですかね?」
この男は!!冒険者ギルドの仕事を何だと思ってるのよ!!一々楯突いて忌々しい。
これだから、礼儀の知らない叩き上げは嫌なのよ!!
扶助制度についての説明は、恐らく次の投稿で出来ると思います。