序章5話
遅めの昼食をとった後の宿屋探しは予想通りに難航しました。
炎の鉄鍋亭の女将さんのグレンダさんに同情された所為か、流石の私も泊まれる場所に当があるって言う気になれませんでした。……ちょっとは思うがままに物事は進まないって思い知らせてやりたくなったって言う気持ちも働いた為でもあります。
今は、3組に分かれてそれぞれ泊めてもらえそうな宿屋を手分けして探してる所です。私はクローディア姉ぇとクロルと一緒に、アーネストはフィオナと、モーリスとエリスで組んで宿屋を探してます。午後3時の鐘がなったら、大通りの噴水の前に集合と言う事になってます。で、多分後15分ぐらいでその鐘が鳴ると思います。一応、本当に見つからないといけないので、さりげなく教えてもらった宿屋さんに誘導してたりします。
「やべぇなぁ……みんな満室だってよ……」
「あたしもまさか、冬明けのこの時期がここまで人が流れ込んできて馬小屋ですら手配が難しいってのは思わなかったよぉ……」
「ねぇ、クロル、クローディア姉ぇ、あそこにも宿屋あるよ?」
「……あー、なんて読むんだあれ」
「跳ねる猪亭って書いてあります」
「あーちょっとあそこの宿は俺等の所持金じゃ泊まるの無理だろ……」
「でも、聞いてみないと始まらないのです」
「おれ、パス。行くんならセラとクローディアだけで行ってくれ」
「あたしもパス……。どうせ無理だろから」
「……じゃあ、私が聞いてきますので入り口で待っててください」
扉を開けて中に入ると、強面のおじさんがおります。私の事を非常に胡散臭そうに見てます。ちょっと、怖いんですけど、これどうしましょう?
蛇に睨まれたカエルな気分の私、しばらくそのおじさんと見つめあう。気分はまな板に載せられた子豚さん?いや、せめてそこは子羊と言いたいです。
「……なんの用だ」
はっ!!いっけない。まずはコミュニケーションを取らねば!!
「すみません……表通りにある炎の鉄鍋亭の女将さんから今日の寝床が確保出来なければそちらを訪ねててみなさい。と言われてきました」
「……女将の名前は?」
「グレンダお姉さんです」
………………
…………
……
ちっ沈黙がキツイです。その、どうなんでしょうか……駄目なら駄目って言って欲しいぃぃ。
「アンネ!!いたらこっち来い!!」
「は~い。……父さんどうしたの?」
「馬小屋、空いてるな?」
「一応ね、お客の馬を繋いでるから詰めて10人ぐらいだよ?」
「おい、ガキ。何人だ?」
「ひゃい!!私入れて7人です!!」
「……案内してくるから、アンネ、お前はカウンターに居ろ。行くぞガキ」
「はっはい!!あっありがとうございます!!」
「一々頭を下げんでいい。それより早くついて来い」
「いってらっしゃい。…………ぶふっ、父さん照れてるぅ~」
「うるせぇぇ!!おら、さっさとついて来い!!」
え?てっ照れてるの?ほっ本当に?顔色に変化無いと思えるんだけど?まさかね。といけない、クローディア姉ぇとクロルを呼ばないと!!
「クローディア姉ぇとクロル!!馬小屋だけど泊めてくれるって!!」
「えぇぇぇ!!本当!?」
「マジかよ、超ラッキー!!……そうだ、もう直ぐ鐘が鳴るだろうから俺一足先に集合場所に行って来るわ!!」
クロルが駆け出してしばらくしたら午後三時の鐘が鳴り響いたのでした。ああ、これでとりあえず今日を無事に乗り切れそうです。残ったクローディア姉ぇと一緒に馬小屋で泊まる際の注意事項をぶっきらぼうなおやじさんから聞きながらもそう思ったのでした。
序章はあと少しで完結すると思います。
しばしお付き合いの程よろしくお願いします。