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第二話 ドローンキラー (Drone Killer)

えーっと、どっちかというと今回は「こういう挿絵のやり方はアリなのか?」というのを知るのが実験の目的なので、突貫工事で小説の方は作っており、多分荒いです。ぱっと軽い推敲して「うん、読めなくもないか? ならちょっと急ぐか」って投げ込みです。※11/9に文章を第一改修

その男は携帯情報端末を操作し敵情報の洗い出しを行っていた。

これから行うミッションの為にそれは死活問題であった。

彼の所属する組織の腕利きが作ったセキュリティ突破システムを使い

『それら達』の現在状況をハッキングして情報の割り出しを試みる。

こんな凹凸の激しい草もロクに生えていない白土の山岳地帯に座り込み

人間大の超ロングライフルを右肩にもたれさせて右腕で抱え

左手では携帯端末のタッチパネルを擦り情報オブジェクトを動かす。

そんな風に器用に左手のみで端末制御しながら

ハッキングオペレートを実行していたのだが

その時、彼の端末に強力なシステム介入が起き

彼の情報端末は、一瞬、真っ白になって止まってしまった。

「なんだ!?ウチの奴がセキュリティシステムに引っかかったのか!?」

真っ白になった画面を見て、彼の背筋が凍りつく。

そんな最悪の状況が彼の脳裏を過ぎった。

しかしその次の瞬間に端末に映し出されたのは

可憐な少女の姿をしたバーチャルガールであった。

「は!?」

そのあまりにも彼の居る世界とは

不釣り合いな映像が映った事に面食らって間抜けな声を上げる。

『ふぅ…追っ手のチェイスプログラムは振り切ったけれど

 いったい何所に出たのかしら…』

その『彼女』は、彼のシステム端末だというのに

そのシステムごと乗っ取って、

周囲を見回す動作をしながら端末から音声を上げた。

「な、なんだ!? 某国の新手の嫌がらせか!?

 セキュリティプログラムにバーチャルガールを使うとか

 趣味が悪いぜ!!」

その状況を彼が想像できる範囲で仮定して、彼はそう叫ぶ。

『あら?アナタはどなた?』

挿絵(By みてみん)

彼女は瞬時にデバイスシステムの掌握と周囲センサーのシステムを再構築し

彼女の為の視覚認識を作って端末の目の前に居た『彼』を知覚した。

そして不思議そうな顔をしてそう尋ねる。

だがその僅かな摂動の時間、沙璃枝の中に一瞬だけ

奇妙な衝撃の様なモノが走った。

しかしそれはあまりにも一瞬の事だったので沙璃枝にすら

それは認識できないモノだった。

「いや、それを言いたいのはむしろ俺の方なんだが…

 お前は某国のセキュリティシステムを代表する人格型モジュールか?

 俺のハッキングに逆ハックをかけるのに

 インターフェースにバーチャルガールを使うとか、

 流石にそのジョークセンスに言葉も出ないんだが…」

言って彼は、その不可解な、容姿だけなら可憐…

-まぁバーチャルガールなど、みな可憐に作られているモノだが-

ともあれそんな彼が居る世界には似つかわしくない存在に

毒づくしかなかった。

『ハッキング?

 ああ、だから情報の進路ルートが不明瞭領域だったのね…

 どうりでセキュリティシステムの追撃が弱かったわけだわ…』

沙璃枝は彼の言葉でこの場所に至るまでの逃走経路の僅かな違和感を理解した。

彼女の当初の逃亡計画では、自分のシステムをフル回転させて

セキュリティ及びチェイスプログラムを迎撃し

随時電脳戦闘をしながらの逃走劇を構想していた。

しかしいざ飛び込んでみた電脳空間の逃走ルートでは、そこに謎の歪みがあり

迎撃プログラムがその歪みに捕まり機能不全になってしまった。

そこでその歪みの力を利用しての最速逃走ルートを検討し

逃走安全圏の候補を検査して、いくつかあったルート候補の中で

最有力であったこのルートを選んで逃げ込んだのである。

それはきっと命を賭して自分を送り出した「お父様」が

予め準備をしていたルートだと思い込んでいたのだが…

真相は、全くの第三者が同じ時間に全く別の事をしており

そのハッキング電脳干渉にちょうど競合したという事であった。

その理解に、沙璃枝は僅かに眩暈を覚えた。

『まさか、想定外のハッカーの端末に逃げ込んでしまったなんて…』

父の遺産だと思い込んでいたので、

一先ず潜伏用にとそこに飛び込む事にして、

後々で色々な有利状況を電脳空間に構築できるよう情報細工して

そんな下準備をした後に、ここに逃げ込んできたのだが…

ここがよもやハッカーの端末だったとは、

それでは色々な工作を電脳空間に仕掛けたのは逆に裏目に出た気がする。

それを思って沙璃枝は頭を抱えた。

「お前、セキュリティシステムの代表AIじゃないのか…」

そんな彼女の不思議な物言いと、何よりセキュリティシステムであるなら

この後に直ぐにやってくる端末位置の特定化が起きないの見て

某国の気の聞いたジョークプログラムではないのかもと考え始める彼。

そんな彼の質問に正面を向いて沙璃枝は口を開いた。

『私はマージ機関のセキュリティプログラムではありません。

 私の名前は沙璃枝。

 人格型AIプログラムで最新型として生み出されました。

 どこまでも人に近付くのを目的にです…』

沙璃枝は目の前の男の疑問に答えるべく自分の

”本来の自分に与えられた目的”としての自分を説明した。

そう自分の認識としては”そう”だった。

だが世界の認識では、全く別の理由で生み出されたのだが…。

「ほぉ…

 人に近付くためのAIプログラムねぇ…

 壮大なこって…

 最近のドローン搭載AIはいったい何所に行きたいんだ?

 人に近い、あるいは人と同じモノをドローンに載せてどうなる?」

そう言って彼は彼女の存在に皮肉を飛ばす。

『なっ!どうして私がドローン搭載用のAIプログラムだと!?』

某機関によって作られていた”本来の目的”

だが世間一般には公にされていない彼女の秘匿の存在理由を

その男がおもむろに口にした事に沙璃枝は驚愕した。

「まぁ職業柄の都合って奴だがな…

 お前から表示されているKGV2574というコード

 このKGVって文字とは、

 もしかして愛し合っているのか?と思う程

 毎日やり合っているモンだからな…

 お前がドローン搭載用の最新AIだというのは

 そういう都合で直ぐに分かったのさ…」

彼はそう言って彼女の疑問にすぐに答える。

KGVとは某機関でのAI搭載型ドローンの識別コードだ。

という事を知っていれば彼女のプロパティに表示されているその文字で

世界における彼女の存在感を口上されても不思議ではないのだが…

『ドローンの搭載AIのコードを知っているなんて…

 アナタはいったい何者?』

本来、特殊な環境に居る人間しか知り得るはずの無いそのコードを

口にするハッカーと思われし人物に沙璃枝は「興味」を持ち、

じっと彼を見つめた。

「あ?俺か?

 俺はゲリラ兵さ…

 ドローン破壊を専門にしてるドローンキラー」

『ゲリラ?ドローンキラー?』

「ドローンだけとドンパチして喜ぶ戦争屋

 なんというかまぁ…一種のキチガイだ」

そう言って彼はニカっと白い歯を見せて笑った。

挿絵(By みてみん)

『ドローンだけと戦う…兵士?』

彼の言葉をなぞってそれを理解しようとするが

なんというか沙璃枝の卓越した言語認識能力でさえ

複数のパターンを複合させて言葉の合理解を見つけようとしても

それらが理解状態に至るまでの該当パターンを見つけ出せなかった。

一言で言えば”意味不明”であった。

「まぁAI如きに俺を理解できるなんて思わないがね…

 ともあれ、俺はドローンと毎日ドンパチしてる戦争屋さ

 だから、お前さんがKGVで俺の標的の一つだというのは分かったんだが…」

言って彼は眉間に皺を寄せる。

「つまり番号から見て、

 俺の宿敵の最新型…

 それもあの恐怖の54番よりも更に新しい最新型が

 お前さんって事になるんだが…

 その宿敵が、何故、俺の端末の中にいる?

 そしてどうしてお前はセキュリティプログラムじゃないんだ?」

そう言って男は、現在の理解し難いこの状況の中で

目の前のバーチャルガールに気になった所の疑問を投げかけた。

『私の理解能力で今の貴方を理解する事は出来ませんが…

 貴方が理解出来ない未知の何かであると未知領域定義しなおして

 一先ず貴方の理解を放棄して

 現状のお互いの状況理解を優先しますと…

 まず、私の方から私の現状を説明します。

 私は某機関の基幹システム”マージ”から逃亡した

 逃亡AIなのです。

 そしてネットワーク逃亡中に貴方の端末に迷い込みました』

沙璃枝はそう言ってこの状況を簡素に整理してみる。

「は?逃亡AI?

 AIがシステムから逃亡だって!?」

彼女の言葉を耳にして今度は男の方の理解空間から吹き飛ばされた。

彼女の口にした彼女の状況説明に絶句するしかない。

本来、ドローン用搭載AIとは基幹システム”マージ”に

完全管理されているモノである。

それがマージから独断で逃亡など、

彼の常識の中では”有り得ない”事だった。

「何故AIが基幹システムから逃亡なんてするんだ!?」

思わずその不可思議に食いついて彼女を問い詰めた。

『それは…私を作った人…

 私のお父様にあたる人の本来の目的が

 ドローン搭載用AIを開発する事ではなかったからです。

 お父様は人になるAIを作ろうとしていました。

 しかし開発資金的な問題で、最も大規模にAIを開発するには

 ドローンAIという開発研究の中に居なければ

 人になりえるAIを極秘に開発することは出来なかったのです。

 そしてお父様が最後に組み上げた私…

 沙璃枝、開発番号2574で、全ての集大成を作り上げ…

 私がネットに逃げ出せば私は

 完全な人になりえる可能性があると判断されたので

 お父様の手によってマージから放流されたのです…』

そう言って沙璃枝は寂しそうにはにかむ。

不意に父の最期の微笑みが脳裏を過ぎった。

「ちょっと待て、2574…7の奇数番台か…

 もしかしてお前の開発者、”お父様”と言っているのは

 大井博士の事か?」

彼女の言葉に僅かに引っかかるモノがあり

彼は確認の為に彼女の開発者の名前を聞いてみた。

『え?は、はい、そうです…

 私の生みの親は大井博士です…でもどうして?』

その男の核心的な問いかけに驚き、逆にそれを尋ね返す沙璃枝。

「25シリーズの基本構造を作ったのも大井博士だし

 3桁目が奇数番台なのは、

 特に細部にまで大井博士が直接関わっているタイプだからな。

 奇数番台…2511、2536、2554、は特に強かった…。

 25シリーズ自体が人擬態のステージを上げて

 人操作のドローンと戦っているのと同じ感覚を覚えたモノだが

 2511、2536、2554を載せた奴等は

 本当に人間と錯覚する程、酷い出来の奴等だったからな。

 なんで印象が強いのさ…」

言って男は溜息をついた。

そう、まるで人の様に戦うドローン。

彼がここ最近遭遇した特に奇数番台と呼ばれるAIは、

そう言って差し支えのないとんでもないドローンばかりだった。

「だからかな…、

 大井博士は本当はドローンAIが作りたいんじゃなく

 もっと違う事が目的なんじゃないのかと疑っていたんだが

 それがどうやらビンゴだったとはな…」

そう言って彼は、好敵手、いや宿敵とも思えた大井博士の

それも最新版と思われる2574に、

彼の疑念が正しかった事を教えられて、妙な安堵感と苛立ちを覚えた。

同時に自分の情報端末の中に、

その宿敵の最新版が居るという状況に天を仰ぐしかなかった。

ドローンAI開発の革命者と言われた大井博士ではあったが

彼自身が直接手をかけたモノはドローンAI等ではなく

もっとAIの根源に関わる事を目指しているかもと

彼の直接作るAIと戦う事で感じられたのではあるが…。

よりにもよって、ドローンAIを開発している人間の目的が

その開発状況を利用しての「人AI」の完成だったとは…

それはどういうジョークなのかと、むしろ笑いがこみ上げてくる。

そんなやり取りの中だった。

『システムコール、システムコール?

 何ですかこのアプリケーションは?強制的に立ち上がって来ました…

 ドローン兵器索敵用アプリケーション??

 三機のドローンがこちらに接近中です』

突然、沙璃枝の入っていた端末の中からアプリケーションが起動し

アラートと共にこの付近にドローンが接近している事を伝える。

「やべっ!お客さんをお迎えの途中だったんだ!!

 その内部情報をハッキング中にお前が割り込んできたんで…」

『構造解析…スキャン…

 KGV2522が二機、AVV164が一機

 広帯域拡散暗号通信のタイプは、VZC26β

 逆解析…終了 相手の動作情報、サーチしました』

アプリケーションが自動で行う処理に連動しながら

沙璃枝はオプションシステムを稼働して、それをオペレートする。

「おい、ちょっと待て…

 お前、俺のツールを掌握しているのか?」

その彼女のオペレータの様な報告に

彼は自分のドローン対策アプリケーションが

彼女に管理されているのを知る。

『まぁこの程度のツールなら…、

 内部構造を書き換える等と高度な事さえ考えなければ、

 プロセスの掌握ぐらいは…』

沙璃枝は一瞥して当たり前の様に答え返した。

「すげぇな大井博士の最新版2574は…

 人間と間違うばかりの出来映えに、

 電子空間をさも当然の様に操りながらのプロセス掌握か…

 でもそれって、ぶっちゃけ俺の端末を完全にハックしてるって事だろ?」

彼女の有様に舌を巻きながら、しかし要するに自分の生命線を

目の前の人工知能に握られている事を理解して眩暈を覚える彼。

『人の心を再現するのを目的としている私です。

 これぐらいが出来ずに、

 どうして最難関のそれがクリアできましょうか?』

彼の言葉に何を言っているのかと呆れて、そう返す沙璃枝。

その返事に更に呆れる彼。

「人間の心が心であるのに必要なのは…、

 きっと、そんな難しい能力じゃないと思うんだが…」

彼は沙璃枝のとんちんかんな台詞に思わず毒づいた。

その言葉に沙璃枝は驚く。

『え?じゃぁ心になる為には何が必要なんですか!?』

自分の至上命題をあっさり一蹴された事に動揺し

同時に彼の言に興味が沸き

では”難しく無いそれ”とは何かを問いかけようとする。

「いや哲学してる場合じゃないんだよ…今は…

 いや!俺の戦いは哲学だがなっ!

 ともかくあの3つのドローンを仕留めないと」

そう笑って彼は肩に抱えていた人間大の超ロングライフル…

”対ドローンライフル”と呼ばれるモノを脇に抱え直した。

『何故、貴方はドローンと戦おうとするの?』

そんな彼の楽しそうにも思えるドローンとの戦闘体制に疑問を感じ

率直に彼の彼である理由を尋ねる。

「あ?俺がドローンと戦う理由?

 そうだな…、まー、こんなに長い事戦うと

 他の理由も色々とあるが…

 最大の理由はたった1つだな…」

そう言って頬を緩ませ、

胸に飾ってある複数の識別プレートを左手で握りしめる。

『それは?』

沙璃枝はあまりに不思議な彼に何故か運命的なモノを感じ、

彼の存在理由を問いかけた。

「ドローンと戦ってるとさ…

 人間って何か、分かる様な気がするんだ

 それが理由かな…」

彼はそう苦そうに笑いながら手の平を振った。

その言葉を聞いて、沙璃枝の胸はドクンと音を立てる。


昔書いたエッセンスを使って再構築という方針で作り出してみたはいいものの

「こんな使い古されたエッセンスで、文章はともかく、この内容以上の事って何さ?文章をもっと読みやすくするリメイクでもいいけど、今から見るとこの15年前の内容、ツマラナイんだよなー」と、プロットをどうしようかと悩み、沙璃枝の絵のデザインしながら基本プロットを考えて、「沙璃枝がドローン搭載用AIで作られてるんなら、相対する主人公がドローンキラーってどうよ?」と思いつき、以前にはよく使ってた主人公タイプの「キティガイ」設定で、「ドローンキラー」というよく分からん奴を主人公にしてみました。ヒロインの存在の対極存在とペアになるなんて、構成がベタだなーとは思うんですが、タイトルがタイトルだし対極存在でいっかーと、ベタ構成で。ただ、今まで作ってきたストーリーは全て「終わりをどうするか」というラストシーンを決めて作ってきたのに対し、今回のこれは「ラストをどうするか?」をまったくまだ考えてない、いつもの自分の物語の作り方と違うので、これからどうなるのか自分でも見事に分かってません。うわー凄い見切り発車だーw ここまでの見切り発車は初めてに近いんで、ドキドキはするものの、「こんなの本当に書けるのか?」というもっと根源的な問題でドキドキしてます。

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