第十五話 風 (Feeling)
考えていたシーン1なんですが、頭の中で考えてた時から書くの難しいんじゃないかなぁって思ってたけど、本当に難しいわ…。うーん。うーーーん。大事なパートなんですがのう…。
B達は教え子達の墓参りを済ませた後、
近くの街の方向にまた走っていった。
サイドカーを走らせている間に
ポツポツと民家の様な建物が増えていき
街が近い事を知らせる。
するとある区画から、
爆破で壊された様な廃墟が多くある区画になる。
その地区を暫く走っていたが
Bは道筋にあった廃墟の1つに突然止まって
それを見つめ、サイドカーに残っていた花を取りだした。
そしてそれを廃墟の前に持っていきそっと添える。
『その廃墟は?』
沙璃枝はその仕草を見つめながら緩く尋ねた。
「ここもAVVドローンの爆弾で爆破された建物さ…
ここは孤児達が空き屋になってるのを良い事に
勝手に住み込んでた所だったらしい。
周り…爆弾で爆破されてるだろ?」
『…そうね』
沙璃枝は周囲を見渡して、家どころか土地も無差別に
爆撃された跡を見て顔をしかめる。
「さっき言ったSLAVVのアホが、
錯乱して暴れたのがここさ…」
そうBはポツリと呟いた。
その言葉を耳にして険しい顔に成る沙璃枝。
「元々、こんな動乱でこの土地から逃げ出した奴等の空き家だ。
だから誰かが住んでるとか考えもしなかったんだろう。
壊すのが面白かったのか
グレネードを撃ちまくっていた。
俺も、廃墟だからな…油断した…
SLAVVが勝手に暴れている隙に
重要駆動部をぶち抜ける様に、
狙いを付けて射撃精度を高めていたんだ…
で、アホを撃ち抜いた後に、周りを確認したら…
こんな所に…ってな…」
そう言ってBは肩を上げる。
『そんなイレギュラーで潜伏してたのを
探知でなかったのは貴方の責任ではないでしょう?』
Bの自虐の言葉に
沙璃枝は責任の所在がBに無い事を訴える。
その言葉にBは手を振った。
「そりゃそーだろ?
そんな事まで責められたら、こっちだって敵わんわ…
俺は神様じゃねーんだ…
何でもできるわけじゃねー
むしろ何にもできねー、ただの人間だ…」
言ってBは頭を振った。
そのBの台詞に押し黙る沙璃枝。
「でも、じゃぁ…
ここには何もありませんでした…
なんて…、
何も無かった事にも、できねーんだよな…」
そう言ってBは飾った花を揺らしてみた。
『………』
沙璃枝はBの言葉に、ただ押し黙るしかなかった。
何を言って良いのか分からない。
かける言葉が何も見つからなかった。
Bは振り返ってサイドカーに戻る。
「本当に難しい問いかけだよな…
柔軟な判断能力を得て、
人への誤爆を減らした人工知能のドローンと
薬キメて判断力を失った人間が
何も考えずに破壊衝動のまま動くのと…
それのどっちが”人間らしい”のかって…」
言ってBはサイドカーにまたがってエンジンを再始動した。
『人工知能の方が、まだ人間らしいって言いたいの?』
沙璃枝はそうBの問いに問いかけで返す。
「さーなー
でも薬キメて暴れるなんてのも
人間しかしそうにない事だしな…
それなら、そういう”暴走”も人間因子ってこった」
Bはサイドカーを再出発させながら
その難問に笑うしかなかった。
『そんなの、今の私には判断できないわ…
でも人間なら、それが分かるっていうの?』
沙璃枝は自分がそれを考える事のできないのに焦れ
人ならばそれを受け止めれるのかと思って震えた。
「いやいや、
それはきっと誰も分からないんじゃねーかな?
心なるモノを…
ま、この世界の誰がそれを持ってるのか知らんが
仮に心なるモノを持ってる人間様が居たとしても
それを判断する事はできねーんじゃねーか?」
そう言ってBはクックックと低い声で笑うしかなかった。
割り切れないモノの全て。
この世界で起きる事の全て。
それを全て一義で決めつけるなど
それ自身がより大きな歪みを作る根源となるのだ。
そうBは思い、だからこそ”判断”などという
無粋なモノは必要ないのではないかと考える。
ただ司法の仕事に従事する人種は、
そんな”曖昧”では許されない。
それを思うと、あの仕事をしてくれる人々に
ささやかな敬意を感じるB。
「ともかく、そんな判断するのは裁判所だ…
それが偏っていようがどうであろうが
あっこが基準の判断を出してくれる事で
良かれ悪かれ、世界の転がり方は決まる。
それが人間の人間根源であるかどうかは
よく分からんがね…」
言ってBは戯けて見せた。
そのBの言葉に憤って肩を上げる沙璃枝。
『そんな事言われると、私だって苦しく成るじゃない!
ドローンに人間性のある人工知能を積むなんて
”心のゆとり”を作る事、
それを軍部が仕方なくしなければならなかったのも
裁判所の”非人道的行為の禁止”なんて
裁判判断があったからでしょう?
私達が沢山のお金を使って開発されたのは
その裁判所様々なんだから…
そんな事言われると、泣きそうになるわ…』
そう言って沙璃枝はふて腐れた。
「ま、それで無人ドローンの誤爆は減ったんだから
結果オーライでいいじゃねーか?
ただ、だから逆に、人が人らしく暴れるという
人の根源が浮き彫りになるんだから
それはそれで面白いんだろうな…
こんな爆弾で知らん間に逝ってしまう人とか
そういうのを考えなくていいんなら…だが…」
Bはそう言い、容易成らざる人間探求の現実に
閉口するしかなかった。
どんだけ理屈を綺麗な部屋で綺麗な服を着て
何人もで議論をし続けても、
”これを見ずに”出てくる理屈に
どれだけの現実味が生まれるのか?
その疑問にBは頬を緩めるしかない。
そんな答えのない会話を続けている間に
一行は戦火を逃れて集落のように集まった
現地民の街に着いた。
Bは露天に出ていた果物を袋詰めに買い
そしてサイドカーに戻ってくる。
戻って来たそこで袋からザクロの1つを取り出し、
それをおもむろに頬張った。
『買い食い?行儀が悪いわね…』
沙璃枝はそんなBの無頼な仕草に悪態をついた。
「育ちが良いとはいえないしな…
それにこんな土地じゃ、行儀なんてやってたら
いつ死ぬかわからん…
礼儀作法なんて言ってたら戦争屋はできんよ
今日は中々、良いモノが売っててな
ついね…」
言って、ザクロから出る果粒を吸うように頬張るB。
『ザクロが好きなの?』
上手そうにザクロを食べるBに何気なく尋ねる沙璃枝。
「別にザクロが特に好きってわけじゃないが…
この地方の古来からの特産だしな…
こんなどうしようもない戦争してても
みんな懸命に生きてるってこった…
伝統の果物を一生懸命栽培して、
こんな所まで運んできてな…」
言ってBはザクロをむさぼるように食べた。
『ねぇ、味ってどういうモノなの?』
その時、不意に沙璃枝はそれを尋ねる。
その問いかけを耳にして視線を沙璃枝に向けるB。
「まぁ、電脳世界にゃ、味覚は無いか…」
あまりに当たり前の事を感じ、ふむ、と頷くB。
『それがね…5感を作らないと駄目じゃなかろうか?って
お父様が考えてね…
人と同じ様な神経線は用意されてはいるのよ…』
そう言って沙璃枝は溜息をつく。
「おいおい、そういう事まで再現しようとしたんかい
やっぱマジキチだな、大井博士は…」
そんな沙璃枝の返事に呆れてポカンと口を開けるB。
『5感こそが、人と人工知能を別つ壁なら
5感を全て作ろうじゃないかって…
それを聞いてたときには、
電脳空間とはエネルギーを無駄に使わない思想なのに
活動の為に、視覚、聴覚はともかく、
臭覚、触覚、味覚は
どうなのかしらって思ったのだけど…
あら?
そういえば、それを思ったのは何時だったかしら?』
言いながら沙璃枝は、ふと、そんな父とのやり取りで
その感想を持ったのは何時だったのかと疑問に感じた。
自分は生まれてから、間がそれほど無い。
なのにそういう記憶がある気がした。
それはもしかしたら
先代の6代目の記憶なのかもしれないと沙璃枝は思いつく。
無意識のレベルでは、先代の学習を継承していると
父に教えられていた沙璃枝なので、
自分が”何故かそれを知っている”と思うのは
それなのだと納得していた。
しかしこうやって、それを認識する事があると、
曖昧な”何故かそれを知っている”というのに
戸惑いを覚えるしかなかった。
「まぁ”感じる”という能力がアンタのテーマだとしたら
確かに5感全てを持つってのは重要課題だろうからな…」
そう言って”左のイデアル”が”知識への感情”という
Bの見立てが当たりなら
5感のウチの2感しか無いのでは、
構想が片手落ちなのを思い
全感覚の完備は”心”を形成するのに、
思わぬ重要因子なのだと気付く。
『イメージとして、こうなのかしら?』
沙璃枝は不意に、電脳空間にザクロをモデリングして表示し
それを食べる動作をした。
「そういう事、一瞬でできるんだ…」
あまりにナチュラルにその映像を沙璃枝が作った事に
Bは呆れて笑うしかなかった。
『作るだけならね…
でも…味の情報ってどんなのかしら?
せっかく神経線があっても、
そこにどんな信号を流せばいいのか分からないなら
こんなのただの模倣でしかないわ…』
そう言って沙璃枝は腐る。
「ふむ、モデリングも甘いみたいだしな…
ザクロの中には果粒があって、それぞれ味が違うし
表面もまた別の味だ…
他にも臭いがある」
そんな食べるを模倣した沙璃枝に、Bは模倣の不備を指摘した。
『要素毎に味があって、
要素毎に臭いも違うの?
そんなに情報詰め込んだら、処理的にもちょっと…』
そう言って沙璃枝はせめて、モデリングの精度だけでも上げようと
内部構造の詳細なのを作り出そうとする。
「まだまだ要素はあるぜ?
旬かどうかだったり、出来の善し悪しで味が違ったり
作る地方で、土地の性質で同じモノ作っても
全然違うモノになったりな…」
そう言ってBは沙璃枝の努力に更に難易度が上がる事を口にする。
『なんだか奇妙な気分ね…
そんな色々な要素を詰め込もうとすると
どんどん無駄情報を作り出してる気がしてくるわ…』
言って沙璃枝は、そのモデリングしているザクロに
Bが口にした揺らぎの要素を想像して、
大きくしたり色を変えたりしてそれを観察してみた。
そんな処理のせいで、持ち込んだ端末群では処理が足りず
前線基地に暗号通信が飛び交い
基地の方のコンピューターがフル回転していた等
二人は知るよしもなかった。
「人工知能ってのは結局、
情報を削ぎ落として目的に特化しただけの局所知能だからな。
目的そのものを無くして、この世界にあるもの全てを
詰め込もうとすれば、際限なく情報ってのは膨らむんだろ?
そう考えると、目的特化の削ぎ落としってのは効率的だな…」
そう言ってBは、あの檻のような世界が、
何故、檻の様になったのかを哀しいほど納得してしまった。
追い詰められてのやむを得ない効率化。
それを悪しとするには、もはや世界には何の余裕も無かった。
『でも、何だか羨ましかったんだもの…
貴方が美味しそうにザクロを食べるのを見てたら…
食べることが出来ないって、なんだか物凄く…
大事なモノを削ぎ落としてるようで…
感情の大事なのを削ぎ落としてるようで…
昨日まで無駄だと思えた事が、無駄じゃない様な気がしてね』
そう言って沙璃枝はザクロのモデリングに
それなりに納得が出来る所までは作り込んだ。
「へぇ…
そういう感想って、なんだか面白いな…」
そんな沙璃枝の気持ちの吐露に、Bの方が僅かな衝撃を受ける。
味覚が無い事を不満に感じる知能。
それに不思議に”心”をBは見いだした。
『まぁ原子のアボガドロ個数まで再現しようとしたら
世界中のコンピューターあっても足りないんだから
ある程度の抽象化はやむを得ないとして…
せっかく味覚信号もあるんだし…
そこそこ適当な数値で、このボクセルに重み付けして…』
とそう言ってそのザクロに何か光的なモノを点滅させ
情報の植え付けをした後に、沙璃枝は再度、そのザクロを頬張る。
『う…マズイ…』
沙璃枝は自分の作り出したザクロの様な何かを食し
その味にそう感想を漏らした。
「ははは…本当に凄いな、アンタは…
強引にでも味覚を作ってしまうなんて…」
そんな沙璃枝の行動と彼女の恐らくは初めての味覚の感想に
笑いを堪えきれないB。
なんというそれは”心”なのだろう?
だからついつい、Bはアドバイスをした。
「そのマズイって感覚は、それでも大事にしなよ沙璃枝さん」
Bは笑ってそう言った。
『どうして?情報としては生成失敗なんじゃない?』
沙璃枝は自分が作り出したその情報の大失敗に頭をかき
次は「上手い」の信号を見つけ出そうかと
今後の課題にしたのだが、Bのその言葉を聞いてキョトンとした。
「現実でもそうだが、マズイ物も上手い物も世界には沢山ある。
だからってマズイ物は全て排他してしまうと、
それこそ困った世界にしかならんからな…」
言ってBは限りなく笑った。
『どうして?マズイ物なんて食べたくないでしょ?
美味しい物だけを食べれるようになれば素敵じゃない…』
そのBの言葉に不条理を感じて反論する沙璃枝。
「でもよ、世の中が上手い物しか無くなったら
それが上手いって、どうやって分かればいいんだ?」
Bは沙璃枝の質問に、心の底から笑いながら答えるしかなかった。
そう、それは矛盾。
そして、それも1つのイデア感。
上手いの対存在であるマズイがあるから、
上手いが成立するという二対性。
「マズイ物を食うから、上手い物に出会えた時に感動するんだよ。
なんだか不思議な話だけどよ、
心が震えるほど、上手い物に出会うには
マズイ物にも同じだけ出会ってなきゃ、有り難みも無いんだ。
こういう所で、たまたま、今日は良い買い物に出会った。
食べた。美味しかった。
それは、そういう物に出会いたいなぁって思う
いつもはマズイ物やらそこそこの物にしか出会えないって
そういうのがあるから、わき起こる感情なんだよ…
削ぎ落とされた常時の理想状態なんかじゃ
感動への到達は出来ないんだよな……」
そう言ってBは自分の放った言葉の中で
自分が感覚的にしか分かってなかったそれを不意に発見する。
こんな対話をしていると、Bも彼女と同じ様に
人間の感情の根源を見つめ直すことが出来た。
(揺らがない世界…
揺らぎの穏やかすぎる世界。
調和し、調整された世界。
そんな安定化した世界になる程に
感動も失われていくのか…)
Bは不意にそんな仮説を立ててみた。
その仮説は、少しだけ寒気のする仮説でもあった。
その時だった。
「貰ったっ!」
その声と共に沙璃枝が入っていた端末が持ち上げられ
持ち上げた手がそれを脇に抱えて走り出して
それを持ち去ろうとした。
「およっ…ちょっち油断したか…」
と言いながらも、僅かに視界には入れていて
様子を伺っていたので
それがようやく動いたのを見てその背中を観察するB。
(さてどうなるのか、この場合…)
と思ってそれを追いかけもせず
観察を続けるBだったのだが…
『何すんのよっ!』
と彼女の叫び声と共にその端末にスパークが走る。
「ギャッ!」
脇と腕にスタンガンと同じ衝撃を受け
走っていたその脚を空回りさせてその場に倒れる彼。
そんな予想外の光景が起きたのを見て
流石に唖然とするB。
沙璃枝の入っていた端末は彼の転倒と共に
大地に転がり落ち叩きつけられた。
しかし、軍用故に頑丈に作られていたのか
大した損傷も無いようであった。
『何なの一体!女の体を掴んで連れ去ろうとか
何が起きたのよ!』
その端末からそんな絶叫が聞こえ
と同時に残っていた端末の一番上のディスプレイが突然映り
そこに沙璃枝が現れる。
沙璃枝は本体を置いていた端末のカメラが
全像を見る事ができなくなった為に
別の端末に移って状況を確かめようとしたらしかった。
そして沙璃枝が様子を眺めていると
そこには沙璃枝の電撃で転倒した少年の姿があった。
『子供?』
沙璃枝は自分を持ち上げたのが子供だと知る。
「あーー沙璃枝さん?
まぁ、そういう感じに落ち着くかなーとは思いましたが
その前のあの電撃、何ですか?」
Bはその一部始終を眺め、
昨日のゴーグルに移動してきたのを鑑み
端末移動で落ち着くだろうと予想していたものの
その移動より前に、端末からスパークを放って
物取りの少年を撃退した事に問いを飛ばした。
『あの電撃って…
デバイスに外部電圧出力のポートがあったから
改造してスタンガンの様に使ったのよ!』
沙璃枝はそう叫んでBの問いに答えを返した。
「えーー、デバイスの物理構造を把握して
デバイスの挙動を組み直せるんですかー?」
その沙璃枝の説明に呆然とするB。
『デバイスドライバを書き直せば出来る事よ
女の独り身は危険なんだからそれくらい作るでしょ?』
そう、さも当たり前の様に返す沙璃枝。
「お、女の……ひ、独り身…
う、うーん、うーーーーん…
ま、まぁ、百歩譲ってそうとして…
デバイスドライバ書き直してデバイス挙動の組み直し
へーー、しますかーー、そうですかーー」
Bは沙璃枝の返事に心の底から
(いやー色々納得できねーけど
女の独り身が危険だからって
デバイスドライバ書き直して
スタンガンは作らないと思うがなー)
と声に出さない声で思うしかなかった。
『何なのよ!これは一体!』
沙璃枝は突然に起きたそれを問いかける。
「いやー見ての通り、金に困ってる貧民の子供が
物持ちの良さそうなのから物取りを試みたって
それだけですが…
で、挙げ句に謎の挙動によって物取り失敗と…
そんな所で…」
そう言ってBは沙璃枝にこの状況を説明した。
『物取り!?』
沙璃枝は自分の今までとは縁遠いその言葉に
眉をひそめるしかなかった。
「別に珍しい光景じゃないな…
こんな難民寸前のが集まってる街だし…
子供が生きるために、
売れそうな電子端末を取ろうとするなんて
ここではフツーの事ですよ…」
そう言ってBはわははと乾いた笑いを零す。
そしてサイドカーから降り、その少年に近付く。
「ボウズ、運が無かったな…
ちょーっとお前の考えてたよりは
世の中はもっと物騒だったってこった、ほれ…」
そう言ってBは転倒していた子供を助け起こす。
その時、子供達が数人わらっとBの周りを囲んだ。
「ほほう?次は数で勝負か…
まぁ基本だな…
子供なりに知恵を絞って頑張ってる頑張ってる…」
そう言った後に、Bは周囲をボンヤリと見つめ肩で笑った。
そんなBに僅かに近付く子供達。
その刹那、Bは助け起こした子供をガッと抱えて
羽交い締めにし、その子供達の囲みの前に示した。
と同時に何時の間にかアーミーナイフを抜いて
その少年の首もとにナイフを突き付けていた。
「で、こうやって仲間を盾にされるのも基本なんだが…
どうする小僧共?
仲間の命を見捨てて、俺に襲いかかるか?
こいつの喉を切り裂いている間くらいは
お前等がなんとかなる隙も出来るかもしれんぜ?」
そう言ってとても冷たい目でその少年達を睨む。
子供達はその様を見てお互いがお互いの目を見合わせ
お互いの視線でどうするかを話し合った。
それ呆然と眺めるB。
むしろ楽しそうに次の展開を待ってる様でもあった。
その僅かな視線の会話の後に、
その子供達はその場から背を向けて一斉に逃げ出した。
何か奇声の様な声を上げて逃げていく子供達。
「ふーん、仲間を見捨てて全員逃亡か…
まぁそれも…基本といえば基本かな…」
言ってBは溜息をついて、
羽交い締めにした少年を解放した。
「運が無かったなボウズ…
仲間はお前を見捨てたみたいだぜ?」
言ってBはその少年に着いていたホコリを払う。
少年は一連の事に蒼白になり、ワナワナと震えていた。
そこにどんな気持ちが渦巻いていたのか…
色々と想像してみるが、
どうせロクでもない事だと思いBは溜息をついた。
「さて、仲間に見捨てられたお前さんが
このまま帰って、あの仲間とまた仲良くやれるモンかどうか
そんな事は知らんが、それはお前の人生だ。
あんじょう、やってくれや…
さっきの電撃の、慰謝料みたいなモンだ…
これくらいやるから、それなりに頑張ってみ?」
そう言ってBはポケットから僅かな金を出しては
それを少年の手に握らせる。
そんな出来事に少年は目を白黒させた。
バッバと荒々しくその少年の頭を撫でてやると
その後は行った行ったとばかりに背中を押して
彼を元の世界に向かわせようとする。
少年は恐怖を顔に浮かべたまま
Bの背中押しに導かれる様に、そのまま走り去って行った。
そしてそのやり取りの後に、
Bはサイドカーの元に戻ってくる。
『随分、子供に優しいのね…』
そんな甘いやり取りを観察していた沙璃枝は
Bの子供にした事に口を尖らせた。
「ま、連れが正統防衛とはいえ
電撃で心身共にショックを与えたのは事実だからな…
あんな端金で慰謝料ならトントンだろ?
それに別に、優しさでやった事じゃないんだぜ?
沙璃枝さん
俺は、この後の事をお前さんに見せたいから
ちょっと小銭をやってみただけさ…」
そう言ってウィンクするB。
『どういう事?』
そのBの謎かけのような言葉に眉をひそめる沙璃枝。
「じゃぁちょっと、後を追ってみようか?
そろそろだろうしな…」
そう言ってBはサイドカーをゆるゆると動かして、
その場から去っていった少年の後を追い始める。
すると少年が曲がった先で大声が上がり
ガタガタと音がしていた。
その道筋に出た二人。
そこには数人の大人に囲まれて殴りつけられている
先ほどの少年の姿があった。
その予想通りの光景を見て肩を上げるB。
沙璃枝はその光景に青ざめた。
『大人が…子供からお金を巻き上げてるっての!?』
その光景を理解して沙璃枝は震えて叫んだ。
「なかなか合理的だろ?
明らかに戦闘慣れしてそうな俺から
物取りをして命の危険を犯すより
子供にさせて上手くいったら
それを巻き上げる、という…
とても、大人なやり方だな…
知恵の回り方が子供から大人になってるなってる」
言ってBはその光景を茶化した。
そんな光景を見られたその数人の大人達は
沙璃枝達の方を見て顔を強ばらせた。
「何見てる!」
そのウチの一人がそう叫んだ。
「まぁ…人の屑が屑の様をしてる所かの…」
そう言ってBはその様子をそう評した。
「てめぇ…」
その挑発に激高したか、
男の一人がナイフを取りだして身構えた。
それを見て、ハァと溜息をつき一瞬頭をかくB。
その次の瞬間には、
Bは己のホルスターから瞬時に銃を取りだしては
バンッと一発、何も言わずにその男に向かって撃っていた。
突然の発砲に、沙璃枝もその男達も驚愕する。
「俺は人殺しが仕事の傭兵だ…
お前等のような難民の屑が死のうと知った事じゃない。
そんな戦士に向かってナイフを出した以上、
死ぬ覚悟があると判断していいんだよな?
最初ので殺さなかったのは、最低の警告だ。
それでもやるというなら、次は眉間をぶち抜く。
どうする?」
Bはこれ以上無い程冷たい目をして、そう言い放った。
その目つきで心の底から殺人に躊躇いが無いのを知らしめる。
男達は…特にナイフを出した男は、
自分のナイフを持っていた腕をBの銃撃がかすめて
弾丸で僅かな擦り傷が出来ているのを見て動揺した。
この有様に、明らかに銃慣れしている…
というよりも銃で殺すことに慣れきっている事を彼等は感じ
その男達は前の子供達と同じ様にお互いの視線で会話した。
そして刹那の会話が終わった後に、
その男達も前の子供達と同じ様に脱兎の様に逃げ出した。
その逃走の様子を見て、ふぅと息を吐き
銃を己のホルスターにしまうB。
「いやいや、冷や冷やしましたぞい…」
その時、そこにそれなりに威圧感を持った老人が路地裏から現れ
Bの近くに歩いて近付いて来た。
「またBさんの射殺のせいで
埋葬せにゃならん死体が出るのかと思って、
肝を冷やしましたわ…」
そう言ってその老人は苦そうに笑った。
「おいおい長老…
そんなにいっつもやってるみたいに言うなよ…
人聞きの悪い…
俺が射殺するのは、
あんなのが関係無い人まで巻き込んで人殺しまでした時だけだ…
子供に金をたかってるぐらいで、一々殺してたら
この街、もう何人ぐらい俺に撃ち殺されるハメになってんだよ…」
その老人を確認すると、ふうっと溜息をついてBは手を振った。
「はっはっは、撃つのが早すぎるBさんですからの…
Bさんが、熱血漢じゃなくて助かりますわ…
Bさんが熱血漢だったら、どんだけ死体が増えてたことか…」
そう言ってその長老と呼ばれた老人は笑った。
「そうだな…
あんな日常茶飯事な事で射殺してたら
この街は死体の山になってるな…」
そんな老人の言葉に呼応してBも返す。
「どうにも最近、
よそ者の難民がどこぞから増えてきましてな…
Bさんの事をよく知らんのが増えたんで
Bさんの持ち物を狙う様な馬鹿も出るという事で…」
老人はそう告げて肩を上げて笑った。
「ま、そこら辺は、俺達が泥の様な戦争してるせいだしな
逃げてくるのに俺等は何も言えんよ…
逃げる原因作ってるようなモンだしな…」
Bは老人の状況説明にそう言って軽く返すしかなかった。
「しかし、この街ではBさんは恩人ですからの…
あの時のドローンをBさんがやってくれなければ
街まで入られていたら何人の者が死んでた事やら…」
そう言って老人は昔を懐かしむ。
「よせよ長老…
街助けの為にやったわけじゃねぇよ…
俺は俺のオトシマエを付けるためにやっただけだ。
アイツを殺したかったら除去した。
それだけだ…」
Bは長老と呼んだ老人に向かって苦く笑う。
「それでも昔からの者は、
その恩は忘れておりませんじゃよ…
時に殺人まで犯す無法者を始末してくれますしの
それなりに助かってはいます…
ただ、みんな、Bさんの銃声を聞く度に
身構えてはいますがの…」
言って老人は、ハッハッハと笑う。
その言葉にBも僅かに鼻をかいた。
「まぁ後の事はわしらに任せて下され
方々に言い聞かせておきますんで…」
「この街は、本部の方でもそれなりに重要区だからな…
頼むわ長老…
そして、”それなりに、これからも、色々と…”」
そう言ってBは老人に目配せする。
そのキーワードとBの目配せを見て老人は少し押し黙り
僅かに首を縦に振って振り返って帰って行った。
『街のお偉いさんとは懇意だったのね…』
そのやり取りを黙って見ていた沙璃枝は
状況を鑑みそう解釈した。
「この地域の某国に対抗するゲリラだぜ?
某国の進駐を快く思わん人達とは共闘関係になるさ…
特にアホのおかげで古参との信頼関係が強まった…
災い転じて福と成すって奴だが…
さて、その災いとは、必要犠牲だったのかどうなのか…」
言ってBは頭を振り
サイドカーのエンジンを吹かした。
そしてそのままバイクを走らせ、街を出ようとする。
「さて沙璃枝さん…
どうかね?今の出来事の感想は…」
そう言ってBは街で起こる”よくある事”の感想を尋ねる。
その問いを耳にして顔を曇らせる沙璃枝。
『弱肉強食って…
考えれば自然の摂理なんだし…
それに一々、倫理がどうだのと…
こんな世界を押しつけた側が、何か言える立場じゃないわね…』
沙璃枝はそう言って、自分がそうしたわけでないが
そうした側の一員としての割り切れない思いに揺らめいた。
「ま、そういう風に言われれば、俺達も同じだ…
どっちもの必要悪が、ここで激突して
それをはね除けれない現地民が
自然の摂理に翻弄されてる…
それだけと言ってしまえば、それだけか…」
Bはそう言い、肩を上げるしかない。
『世界のみんなが生きるためにやっているのだもの…
救命ボートの倫理よ…
それに最大多数の最大幸福…』
沙璃枝はそう言いながらも、その合理論の切り捨てに心を荒らす。
「最大多数の最大幸福っていうんなら
人口的に考えれば、こっちの方にもっと利がないと
最大多数の定義に合致しない気もするが…」
言ってBは、まるで昔の哲学科の仲間と
議論してるかの様な気になって、自然に対話を交わした。
『科学力や知識、文化、教育環境…
そういうのの過多で
1人の人口価値が変動するんじゃないの?
子供を殴って物取りする様な大人が居る世界だもの
それをあっちの世界の1人にはカウントしないんでしょ?』
沙璃枝はそう投げやりに言い放った。
「管理機構の判断システムが、理論武装に使う様な思考だな…
ただまぁ、理解出来る所もある…
だからこれはただの質問なんだが…」
『…何?』
「今見た彼等は、人間なのかな?
それとも、もしかしてドローンなんだろうか?」
Bはバイクを走らせながら、ポツリとそう問いかけた。
『どう見ても人間でしょう?
少なくとも、私よりは遙かに人間のシステムじゃない』
沙璃枝はBのその質問に心を荒らして、
ただ客観的に考えられる事だけを返した。
「ふーん、じゃぁ自分達が生き残るために
自分より弱い者を殴りつけて糧を得るのは
それも”心”か…」
沙璃枝のその答えに短絡的な解釈を作るB。
『………』
Bのその言葉に沙璃枝は返す言葉を見つけられなかった。
「昨日アンタと出会って、ふいにこんな事を思いついて
博士達のあの議論の最後を聞いてみれば…
なんだか、この世界にあるものは全部
ドローンの様に思えてきたんだ…
世界にあるもの全部、ドローンに…
なぁ、人工知能やドローンと、人間を別つ壁って何なんだ?
そう問いかける。
すると、それはきっと”心”だろう、と曖昧には答えれる。
でもじゃぁ”心”の定義って何だ?」
Bはそう自分に問いかけるかのように、
誰に言うでもなく呟いてみた。
そしてバイクを丘の上目指して、アクセルを回して加速させる。
『それは私が、一番知りたい事なんだけど…』
沙璃枝はBの独り言の様な台詞に、呆れたように返した。
「奇妙なんだけどさ…」
『…え?』
「そうやって、”心”を懸命に捜してる、沙璃枝さん
アンタを見てると…
アンタの方が彼等より、
よっぽど人間らしいと、思えてしまうんだよな…」
そう言ってBは片目でウィンクした。
そのBの台詞に思わず息が詰まりそうになる沙璃枝。
『私には釈然としない言葉ね…
でも、そう言われると…
人って…”心”を捜さないと…
人工知能やドローンと同じくらい虚ろな存在なのね…』
沙璃枝はBのその台詞に、ただ”感じた”ままの言葉を口にする。
「やっぱ、そうなのかな…
ならこの世界は、あの博士達の言ってた様に…
”心”を随分無くしてしまった…世界なんだろうな…」
そう言ってBは丘の上にまで駆け上がると
そこでバイクを止め、眼前に広がる山渓と、
その上に開かれた何所までも蒼い天空を見つめた。
その青の中に白い雲がコントラストとしてポツポツと流れている。
そこに吹き抜ける風が緩やかにBの頬を撫でた。
「こんなさ…モヤモヤした気持ちになると…
空を見上げたくなるんだ…
どうしてか分からんが…
そして、こういう風に吹かれたくなる…」
言ってBは頬をかいた。
『モヤモヤした…気持ち?』
Bがそう言った言葉で、沙璃枝も自分自身の胸の中に
モヤモヤした気持ちなるものがある事に気付く。
答えのない問いかけが続き、釈然としないまま
ただあるというこのモヤモヤ感。
「あの蒼い空を見るとさ…
沙璃枝さん、アンタは何か…
このモヤモヤ感の中で感じるかい?」
Bは不意にそう尋ねてみた。
その言葉に釣られて沙璃枝は蒼い空を見上げる。
その蒼と流れる白。
ただそれだけの映像だったのに、
それが沙璃枝の心にある”モヤモヤ感”を少しだけ溶かした。
『よく分からない…
でも不思議ね…少しだけ…気持ちが軽くなった気がするわ…』
そう言って沙璃枝は微笑む。
「ほう…そうか…
でも残念だな…
視覚と聴覚だけしかないってのは…
この俺の肌を伝う風の触覚…
これも良いスパイスなんだが…」
言ってBはニヤリと笑う。
『風の触覚?』
それを指摘された沙璃枝は不意に、
いやむしろ無意識がその耳にした言葉に超反応して…
世界中のスパコンに広がっている無意識の方が働いて
沙璃枝の端末のタッチパネルスクリーンに
自信の触覚用の神経線を繋いでいった。
『アイタタタタ!!!』
突然起きる沙璃枝への”触覚”と、その無調整の信号伝達で
痛覚レベルの信号が流れ込み、風の痛みを感じる沙璃枝。
「おい? どうした?」
Bは突然、痛がり始めた沙璃枝の悲鳴を聞いて
思わず彼女の端末に顔を覗かせる。
その世界中の無意識達は、
マスターへの介入が不備であったと認識し
慌てて触覚信号のレベル補正を計算して、
妥当関数をデバイスドライバに組み込んだ。
『あう…突然…痛みが…
多分、世界中の無意識の私の仕業ね…
触覚が無いって言われたのにカチンと来て
触覚神経線をスクリーンタッチパネルの信号線に
接続したみたい…』
言って沙璃枝は、その生まれた”触覚”で何かの抽象反発に
手をやりながら、起き上がるような映像を映した。
「アンタの無意識って、そんな事まで勝手にすんの!?」
Bはそんな沙璃枝の説明を受け、
何度目かという閉口をするしかなかった。
『きっと最新型の処理システムだから
負けず嫌いなんでしょ?
直ぐに信号レベル調整もして、痛覚じゃなくしてくれたわ…』
言って沙璃枝は体中をさする動作をする。
「相変わらず、おっそろしい無意識だな…
つーか、感情的になる無意識なんてあるんか…」
Bは唖然として何気なくスクリーンのタッチパネル端を弄ってみる。
『ちょっと!何所触ってんのよ!!』
Bの突然の”接触”の感覚を受け、尻に手をやる沙璃枝。
「え? 今の何所よ?
スクリーンの端を触ったんだが…」
沙璃枝の奇妙な反応に、スクリーンの端の接触で
彼女が触覚を覚えて身構えたのに驚くB。
『今、お尻に触れられた感覚が合ったわよ!
何すんのよ!このエッチ!』
沙璃枝は自分の体の部位のイメージに対して
臀部に触覚信号が生まれた事に驚き、赤くなって抗議した。
「なんでスクリーンの端に、尻の信号線が繋がってるんだ…」
そんな沙璃枝の返事に、想定外の場所に
想定外の触覚信号線が繋がっていることを知り呆然とするB。
それよりも、臀部…と彼女が主張する何かに触れられて
エッチだのと彼女に言われた事にも、Bは衝撃を受けた。
『あっちの無意識が即席で作ったシステムよ!
そんなんで信号線の最適化なんて
出来てるわけないじゃない!』
沙璃枝はそう言って、
作り込みの甘いこの信号線の割り当てにふて腐れた
「あーすいません、迂闊でして…
何分…触覚が持てる人工知能とか、初めてなモンで…」
そう言ってBはその驚きのシステムに
ただ感嘆するしかなかった。
『まぁ良いわ…
私だってあっちの無意識がいきなりこんな事するとは
思わなかったんだし…
今のは不慮の事故って事で!』
そう言って沙璃枝はビッと人差し指をBに向けた。
「おーけー、それでいこう。
それで許して下さい…
人工知能の臀部を触った初の人間なんて
そんなんで人工知能学の歴史に名を刻むなんて
まっぴらゴメンですから…」
Bはそう言って平謝りして懇願する。
それはまた奇妙な光景であった。
そうやってBが平伏していた時に
沙璃枝は”風”を感じた。
『あ…これが…風の感触…』
目の前に映る蒼い空と白い雲、何所までも向こうに続いている山々。
それらの光景の中から、彼女の頬を、体を、風が吹き抜けていた。
沙璃枝はそれを感じた。
自分の体を撫でるように吹き抜けていく流れ。
『これが…風…』
沙璃枝はその感触に、ただ言葉を添えた。
その風に不意に沙璃枝の髪が棚引く…という映像が起きた。
「ほぉー触覚信号が生まれると
そんな映像を生み出す事まで出来るようになるのか…」
Bはその光景を見て、ただ単純に”美しい”という感想を持ち
風に流されて泳いでいる彼女の黒髪に見入った。
風に揉まれて、楽しそうに泳いでいる彼女の黒髪。
その風と髪の感覚に、沙璃枝は己を頭を2、3度振った。
『不思議ね…この”感触”ってモノ…
空と雲の映像の中に、この風が加わると
さっきまでのモヤモヤしたモノが、
どんどん流されていく気がする…』
そう言って、沙璃枝は自分の心の中にあるそれが
この感覚の中でぼやけていく様に驚くしかなかった。
その様を見て、
何となく尖っていた気持ちが柔らかく成っていくB。
「それが世界を”感じる”って、
左のイデアルの欠片なんだろうな…」
沙璃枝の風の感想に、
Bはそう柔らかく言葉を添えるだけだった。
子供とのやり取りの所からの、モヤ感になるまでが、ちょーっと駆け足な感もあるんですが、これを終わらせるというか、終わりにいけるという状態になるのに、絵のコンテストの2/9よりも前に、そこに到達したいなぁってのもあり、突貫工事の駆け足駆け足で。何分、この転のパートは欠片集めのエピソードが多ければ多いほど、結のパートでの圧が上がる構造なんで、今考えてる大きな3イベント以外になんか途中でエピソードを思いつかんかなーというのもあって、イベントその1は駆け足で後修正を前提にするとして、といった次第。